水曜日 , 4月 24 2024

トヨタが行ったBEV戦略に関する発表のまとめ

EVはカーボンニュートラルに向けた有力な選択肢

冒頭、豊田章男社長が真っ先に語ったのが「カーボンニュートラル実現に向けたトヨタの戦略、その中で有力な選択肢となるバッテリーEV(BEV)についてお話させていただきます」という事でした。

そして、多様化した世界の中で、何が正解かわからない時代を生きているため、様々な選択肢を用意したいと考えているとのことでした。トヨタではすべての電動車は使うエネルギーによって大きく次の2つに分けています。

  • Carbon-Reducing Vehicles:CO2排出を減らす自動車で、ハイブリット(HV)やプラグインハイブリット(PHV)などガソリンを使っているものでCO2排出量を削減していくものです。
  • Carbon-Neutral Vehicles:クリーンなエネルギーを使ってCO2排出をゼロにする自動車でバッテリー電気自動車(EBV)や燃料電池車(FCV)などがこれにあたります。

そして、今回はBEV戦略を語るという事で、2021年4月に発表したbZ4Xに続く、シリーズ車種が発表されました。

TOYOTA bZとは

bZはbeyond ZEROを略した文字で、「ゼロを超えたその先へ」という未来のカーボンニュートラルの更にその先へというメッセージが込められています。2021年4月にbZ 4X は本格SUVとしてスバルと共同開発を行ったBEVで、専用プラットフォームとしてe-TNGAを開発、グローバルで戦えるシャーシが完成しました。

e-TNGA ELECTRICLIFE.jp

そして、待望だったbZシリーズの他の車種が発表されました。本格SUVに続いてリリースされるのがミディアムサイズのコンパクトSUVです。リアに流れる美しいフォルムが従来のトヨタと未来のトヨタを予感させるデザインです。街乗りSUVとして人気を集めるモデルになりそうです。

TOYOTA BEV戦略 ELECTRICLIFE.JP

bZシリーズには4種類のSUVが用意されているようで、コンパクトなスモールSUVは電池の積載量に限りがあるため、電費を意識したエネルギー効率の高いSUVを目指しています。トヨタが最も得意とするエネルギー効率の高いBEVとして125Wh/kmの実現を目指したEVとなるようです。テスラモデル3のエネルギー効率がEPAサイクルで149Wh/km程度ですので、実用使いに近い電費の計測方法であるEPAサイクルで125Whだとしたら、驚異的な数値です。

TOYOTA BEV戦略 ELECTRICLIFE.JP

ファーストカーとしてのミディアムセダンはプリウスやカムリなどを想定した位置づけでしょうか。

TOYOTA BEV戦略 ELECTRICLIFE.JP

更に、ラージクラスのSUVとして3列目シートの設置も可能なBEVもラインナップ。この辺り、bZ4Xの上を行くクラスならばランドクルーザーのEV版と言った位置づけでしょうか。

TOYOTA BEV戦略 ELECTRICLIFE.JP

TOYOTAの2030年ビジョンが明らかに!

現在トヨタの自動車は170か国以上で100車種以上がリリースされています。

それらグローバルのマーケットにおいてトヨタ・レクサスを合わせ、2030年までに30車種のバッテリーEVを展開し、乗用・商用など各セグメントでフルラインナップが用意されます。

LEXUS RZ BEVは走りの味の追求

レクサスが目指す電動化をLEXUS ELECTRIFIED(レクサスエレクトリファイド)と呼びます。「走りの味」を追求し、スポーツタイプのEVもラインナップされるレクサスブランドがトヨタのEVをリードしていくようです。LEXUSは現在のUX300eから2代目となるRZのEV化を北米で発表しました。RZにもe-TNGAプラットフォームが使われるのではないかと言われています。

レクサスは2030年までに全カテゴリーにBEVをフルラインナップさせ、ヨーロッパ、北米、中国でバッテリーEV100%、グローバルで100万台の販売を目指します。

更に2035年にはグローバルでバッテリーEV100%のレクサスを目指すとのことです。

EV for Everyone

トヨタのbZシリーズ、LEXUSブランドのEV中心のブランド化の戦略に加え、トヨタが「EV for Everyone」として多様化したライフスタイルに合わせたEVを一般消費者向けにリリースしていくようです。

トヨタのオフロードの伝統を生かしたレクリエーション体験を与えるようなピックアップタイプのEVや、現在売れているヤリスやアクアなどのコンパクトカー、日本で人気の軽自動車、ビジネスに特化したEVなど様々なEV構想を提唱しました。

TOYOTA BEV戦略 ELECTRICLIFE.JP

このEV for Everyone構想では2030年グローバルでのEVの販売台数を350万台を目標としています。

トヨタがEV戦略を加速できる裏付け

トヨタは1997年に世界初の量産ハイブリットカーであるプリウスを発売しました。この電動化を市場にもたらすまでには多くの研究の成果があったといいます。実はプリウス発売の前、1996年にはRAV4のEVモデルを発売しています。

プリウスが順調に販売数を伸ばしながらEVの研究は続けていて、2000年代に入ってからは小型コミューターの実証実験や実用化を目指した取り組みとしてe-com、2012年にはCOMS、eQなどへと進化していきます。その後2021年にはC+PodとC+Walkなどの電動モビリティーを実用化し販売を開始しています。

TOYOTA BEV戦略 ELECTRICLIFE.JP TOYOTA BEV戦略 ELECTRICLIFE.JP

 

トヨタ独自の電池戦略

トヨタは電池の研究も独自に行ってきています。1996年からプライムアースEVエナジーを設立し、ニッケル水素電池の研究を行い、2003年からはリチウムイオン電池の研究も行ってきています。2020年にはプライムプラネットエナジー&ソリューションズを設立し、全個体電池や次世代電池の研究も加速させてます。

今年9月に発表した電池分野への投資額は1.5兆円から2兆円へと増額して全個体電池などを含めた先進的な電池開発を行っていくとの事です。

エネルギーインフラも研究

トヨタのグループ会社が30年前から風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーの研究を進めてきていて、来る電動化時代の電気エネルギーの確保について、全方位的に考えたEV戦略を進めていることもPRしました。

製造現場では、効率的な生産工程を確立し、その省エネルギー化の努力などにより、2035年には工場カーボンニュートラル実現を目指しているとしています。

Q&Aセッションはいつものトヨタへ

ここまで豊田章男社長は一貫して「選択肢を増やす」と言い続けています。今回の発表でもそれは変わっていなかったものの、ここまでEVに消極的と言われてきていたトヨタがいよいよ2030年までに30車種のBEVを市場に投入するという、国内では先日日産がアンビション2030で発表した15車種のEVの倍の数字を出してきました。

ここまでの内容にもかかわらず、Q&Aセッションでは記者からトヨタが全方位的にカーボンニュートラルを進めるという立場への懸念の声が聞こえました。つまり、周りとしてはトヨタに「EVを中心に自動車開発を進めます」と言ってほしいような質問の内容が多かったように思えます。

トヨタはグローバルNO.1のフルラインナップを備えた企業であるため、すべてのエリアで一生懸命やっているという発言に対しても、「EVについて本心はどうなのか?」など、はっきりとした方向性を示していないという見方が強いようにみえました。

トヨタの本当の想い

トヨタが重ねて訴えている「選択肢を増やす」という発言が、どうしても答えが欲しい記者たちにとって曇った発言に聞こえてしまうのですが、トヨタの言いたいことはまさに今回豊田章男社長が冒頭で発言していた通り、「多様化した時代に対応する」という事であると私たちは考察しています。

TOYOTA BEV戦略 ELECTRICLIFE.JP

つまり今はEV1本に絞る時期ではなく、多くのニーズ、多様性に対応した開発が求められる時代であるため、モビリティのエリアでは様々な技術研究を行っていく必要性があり、人の移動がどこに収束していくかはこれから多くのテクノロジーの中から最適なものを選ぶというフェーズに進んでいくとみているという事です。

裏を返せば、トヨタはグローバルNO1の自動車メーカーだから、電気自動車、水素自動車、未知のエネルギーを活用したモビリティなど、あらゆる分野の研究に着手できる技術と体力があり、それを続けられる力があるという事でもあります。

これを「選択肢を増やす」という言葉だけで表現しているため、EVから逃げている、EVは見ていないと批判されてしまうのではないでしょうか。

行政の立ち回り方はトヨタにはどうにもできない

会見の中で前田CTOが電動化率の高いノルウェーの例を出していましたが、これは行政が電動化を進めているためで、排気ガスゼロの車両に対しての優遇がものすごい充実しているからであると発言していました。イニシャルコストのサポートだけでなく、駐車場や通行料金が無料になるなどその運用に対しても手厚い優遇があります。この面に関してユーザーが利便性の1つが価格のサポートという評価をするならば、それがユーザーの選択にもなりえる。それはトヨタだけではどうにもならないことであるともしています。

消費者の窓口はディーラースタッフ

いずれにせよ今回の発表については周りで巻き起こるトヨタのEV化への後ろ向きな姿勢を払しょくする目的ではあったものの、記者の反応を見ると依然として理解されていない部分が多いように見受けられました。ただ、記者以前に我々消費者は、そもそも対峙したディーラーの販売員がEVについて何も語らずにガソリン車を大幅な値引きをして売り込んでくれば、「カーボンニュートラルなどどこ吹く風」となってしまいます。

現状売るための電気自動車が無いトヨタディーラーに訪れた人は、ガソリン車やハイブリット車を買っていくしかなく、2022年になってもトヨタからはbZ4Xの発売が始まるだけで、手に入るとは限らないため、ディーラースタッフは引き続きそれらを勧めていくしかなく、「電気自動車は無いのですか?」と聞かれれば、無いと説明した後にEVに対する否定的な理論展開をおこなっていくわけです。

発表はしたものの、トヨタが市場で持っているのは高級イメージの高いレクサスUX300eのみ。来年度はEVに対する補助金が沢山用意されているも、私たちにある国産車の「選択肢」はあまりにも少なすぎるということです。

 

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