国内で買える最高峰の蓄電池テスラパワーウォール
FIT終了後の選択肢としての「蓄電池」
太陽光など再生可能エネルギーを利用している人なら多くの人が利用するFIT(Feed-in-tariff:フィードインタリフ)は固定買取制度で自宅の屋根に設置された太陽光で発電されたエネルギーを電力会社に売電する制度です。この制度は10年間契約時の金額で固定買取を保証していて、FITの前身の制度である「太陽光発電余剰電力買取制度」がスタートしたのが2009年ですから、10年以上が経過した現在、FITが終了した人たちが続々現れています。
太陽光の買取制度が始まった頃は、1kWhあたり48円という高い買取価格でしたが、2021年の一般住宅での買取価格は19円という価格であるため、自宅で買っている電気料金1kWhあたり、およそ17円〜35円で、平均値が27円程度となっていると、発電している電力を売電するよりは自宅の電力が高い時間に利用した方がよっぽどお得ということになります。
こうなるとFIT後の太陽光運用の選択肢として出てくるのが蓄電池です。しかしながら2022年現在でも、国内で販売されている蓄電池の価格はまだ電気料金をカバーできるほど低価格なものはなく、「災害時の備え」という側面が強いというのが正直なところです。
蓄電池界の黒船は1台で13.5kWhの大容量そして最安!
テスラ(Tesla)から発売されているパワーウォール(PowerWall)は日本国内で発売されている蓄電池の中では最高峰の蓄電性能です。その蓄電容量は1台で13.5kWhと、国内メーカーが6kWh〜12kWh程度が主流なのに対して充電容量が圧倒的に多いということです。そしてなにより99万円という価格の安さも魅力です。
テスラ車両にも搭載されているリチウムイオンバッテリーを利用し、最高出力7kW(連続は5kW)で家庭へ電力を供給できます。テスラパワーウォールは形もスリムで夜にはスリットで緑色のLEDが光るため、オブジェとしてのデザイン性にも優れています。データもテスラアプリで確認できるため、車両とパワーウォールの表示を切り替えて現在の充放電状況、電力利用料などを確認できます。
テスラパワーウォールを1年間運用した結果
2021年1月下旬に設置して1年が経過したため、テスラパワーウォールを導入して、家庭での電力利用がどの様な結果になったかがわかってきましたので、情報を共有していきたいと思います。調査した家庭は家族4人のオール電化で比較的24時間稼働している装置などもある比較的電気量の使用が多い家のため、一般家庭には当てはまらないと思いますので、参考程度にしてください。
まずはどの様な状況での実験だったか
家庭の電力事情はそれぞれ大きく違います。そのため今回データはどの様な状況下なのかをまとめてみます。
- 太陽光パネル6kWを搭載(比較的日照のよい埼玉県)
- FIT終了後は積水ハウスの「オーナーでんき(売電11円/kWh)」
- 2021年1月下旬にテスラパワーウォール導入
- パワーウォールは自家消費で設定。日中太陽光で100%充電。
- パワーウォールからの電力供給は夕方から開始。
- パワーウォールの電力は100%使わず災害用に10%は残す。
- 大人2名と高校生、小学生の4人家族で比較的電気使用量は多い
- 電気自動車(テスラモデル3)を所有
- 特に節電などを意識せず、自由に電力を利用した。
- 電気代は東電の旧オール電化プランである「電化上手」
冬場でも優秀なパワーウォール
蓄電池はカタログ値通りの充電容量を発揮するものは少なく、また冬場の寒い時期にその充電性能が低くなる傾向にあります。しかしテスラパワーウォールは冬場でも電池の性能が10%程度しか落ちません。
下のスクリーンショットは日照がある日のデータです。7月25日を見ると太陽光から13.3kWhとほぼカタログ値通りの電力を充電し、12.2kWh放電しているのがわかります。10%は使わずに災害時用に残す様に使っていますので、13.3kWhの90%を消費していることになりますので、消費量もほぼ計算が合います。
また冬場の1月8日のデータでは、12kWh充電し、10.8kWh消費しています。住宅の日の当たらない北側の場所に置いてあるテスラパワーウォールが冷えて多少充電性能が落ちていますが、それでも10%程度の落ち込みです。
年々電力需要は上がっていて、特に冬場の電力需要は年々上昇しています。今回測定した家庭でも昨年比で冬場の電力使用量は全体で10%程度上がっています。
パワーウォールは10年保証、サイクル保証は無制限
テスラパワーウォールは10年間の間に充電容量が70%を下回る場合は保証するとしています。13.5kWhの70%なので、9.45kWh以下になったらということです。またサイクル数(1回の充放電サイクルを何回行えるか)についてはテスラは無制限で保証すると言っています。
パワーウォールの保証期間は他社の電池と比べて短めで、他は15年や20年というものもありますがこれらは保証内容の確認をしっかりしておきましょう。電池容量の保証条件がテスラとはいろいろ違っています。電気自動車の電池なども保証が8年になっているところを見ると、そもそも蓄電池自体10年での交換が一つの目安になっていて、10年後には電力を取り巻く様子も変わっていることでしょうからその時にあったものに変更する必要もあるでしょう。
月平均223kWh、日平均で7.3kWhを自宅に供給
テスラパワーウォールからこの1年(昨年2月1日から今年1月31日まで)で2,670kWhの電力が自宅に供給されました。計測した家庭の電気使用量は一般家庭の平均を大きく上回る32.2kWhを使用していたため、パワーウォールは平均して自宅の電力の23%程度をフォローしていたということになります。最後の3ヶ月はテスラ車が導入されたこともあり、さらに電力使用量は上がっています。
一般的な電気料金は1kWhあたり27円という単価が平均値ですので、これを掛け算すると、6,021円となり、年間では72,252円の節約になったというところです。(電化上手でのパワーウォール利用時間の単価もほぼ同じ単価)
パワーウォールの導入にかかった費用は本体99万円に工事費が50万円で150万円程度になっているため、現状の使い方で元を取ろうとするならば20年かかってしまう計算になります。
今後はもう少し上手な蓄電池の回し方に切り替えていきますが、この1年間は自家消費の1サイクルだけの利用にし、太陽光で充電した電力を夕方から深夜電力スタートまで使うという使い方で通しました。
月に2,000km走るテスラ車で増える電気使用量
納車から3ヶ月が経過し1ヶ月の平均走行距離が2,000kmと一般的な走行距離よりはかなり多いデータです。テスラの充電は200V、24Aで行なっているため、4.8kWh使用します。1時間で33km分充電できますから、2,000km走るなら1日67kmほどを充電。2時間分で、9.6kWh。これを30日分だと、288kWh。EPAサイクルだと33km分も充電できないことを考えると、多めに2割程度乗せて考えて350kWh程度自宅の電気使用量が増えることになります。
月の走行距離を一般的には1,000km程度と考えても車を使っているほうですから、350kWhの半分で175kWh程度が一般的な電力使用量と考えれば、テスラパワーウォールで電気自動車1台の走行距離は十分まかなえることにもなります。
どうすれば効率的な運用になっていくか?
データが見える化できて基準となる1年が経過したわけですから、ここからは比較しながらうまい電力の活用方法を考えていく必要があります。
系統からなるべく電力を買わない様にする
パワーウォールでは自宅の利用料や系統からの購入量、売電量などのデータが全て取れているため、いろいろな計算が可能です。自宅に太陽光があって、蓄電池も搭載しているなら、やはり太陽光を蓄電しなるべくその電力だけで生活したいものです。
下のスクリーンショットは系統からの購入率ですが、この1年間特に意識して利用していなくても秋に16回ほど100%自家消費を達成した日があり、この日は実質電気代が発生しない日ということになります。
夏はエアコンの使用率も上がり、オール電化(電化上手)では日中の電気料金は非常に高くなりますが、日照もよくなり太陽光とパワーウォールでのカバー率がかなり上がります。残念ながら2021年の夏は天候が悪い日が多く、夏季期間のデータが例年よりも良くなかったわけですが、比較的夏は太陽光とパワーウォールでかなりカバーできていることがわかります。
初夏から秋にかけては、日照の多い日には午前中でパワーウォールの充電が100%になっていることもあり、こうなるとパワーウォールをもう1基つけてより多くの太陽エネルギーを活用したくなります。こうなると日産リーフなどのようなV2Hにより電力を自宅に戻せるものに頼りたくなります。
パワーウォールは導入すべきか?
太陽光発電を搭載しオール電化ならこれからは必須
これからの電力需要の上昇などを考えたら、太陽光発電を搭載している人ならお勧めします。大容量であるだけでなく、コストパフォーマンスが最もいい蓄電池と言えます。
工事業者によっては「電気代1年間無料」などのキャンペーンを行っているところもあるため、1年間無料の間にデータをとって最適な運用を見つけることで、電気代をカバーできる唯一の蓄電池とも言えます。
>>卒FITで太陽光発電の売電単価が下がる方向け「家庭用蓄電池テスラパワーウォ─ル」ご購入キャンペーン開始
パワーウォールと言っても日本の場合壁掛けでの設置が消防法で認められていないため、写真のように土台を作って壁から離して設置します。最大10台まで連結できますので、一般家庭で二台あると更に面白い使い方ができるのだろうと思います。
太陽光がなくても災害時の備えとしては一考の余地あり
太陽光が無い、オール電化の場合は深夜の安い電力を蓄電して日中から夜にかけて利用することで電気代を大幅に削減できますが、コスト面だけ見てしまうと回収には20年どころではなくなってしまいます。しかしながら災害が多い日本において、非常時の備えとしてのパワーウォールは一考の余地ありです。
冬季の電力コントロールが重要
やはり暖房はかなりの電気を消費します。また太陽光の日照も悪くなってきて電池の性能も低下しますからその蓄電量も落ちてきます。冬は夏の電気量の2倍以上の電気量になる日が多くなるため、今後はピークを避けた深夜電力などの安い電気料金の時間帯の有効活用と太陽光で発電した再エネのコントロール、そして節電が課題になります。