AFEELA1は自動車ではなく新しいモビリティ
ソニー・ホンダモビリティ株式会社(SHM)は、2025年1月6日米国で毎年開催されている国際的なエレクトロニクス見本市のプレスカンファレンスで、2025年中に正式発売する先進モビリティ「AFEELA1(アフィーラ・ワン)」の最終的なスペックを発表し、カリフォルニア州にてオンラインでの予約をスタートしたと発表しました。
AFEELA1の販売価格とそのスペック
気になる価格は米ドルでOriginというベーシックモデルが$89,900で、日本円でおよそ1,400万円という高級車市場への投入となりました。AFEELA1のモデルは2種類用意されていて、もう一つのSignatureモデルは102,900ドル、日本円で1,600万円となっています。
どちらも先進的運転支援機能やエンターテイメント機能を含む3年分のサブスクリプション込みの価格になっていて、OTA(ネット接続して機能をアップデートする機能)やメディアを楽しむための5Gでのネット接続、エンターテイメントを楽しむための音響システムなどが標準搭載されています。
OriginとSignatureのスペックの違い
2つのグレードで発売を予定しているAFEELA1ですが、その違いは、Originは車体のカラーがブラック1色なのに対して、Signatureでは3つのカラーバリエーションがある事と、インテリアもSignatureはブラックとグレーから選べるようになっています。
また、Signatureはリアに2つのスクリーンが設置され、リアシートの利用者も車内エンターテイメントを楽しめるようになっています。
更にタイヤサイズがOriginは19インチなのに対して、Signatureモデルは21インチを採用しています。
車両の詳細スペック
まず車体の大きさについては、全長が193.5インチ(491cm)、車幅は74.8インチ(190cm)、車高は57.5インチ(146cm)、ホイールベースは(300㎝)となっていて、大きさはホンダから発売されているセダン「アコード」とほぼ同じ大きさですが、ホイールベースがアコードの283㎝と比べてかなり広く設定されていて、車内の空間をより広くする設計になっています。
EVとしての基本性能
電気自動車(EV)としての性能はびっくりするようなスペックにはなっていないのがちょっと残念なところです。まずAWD仕様のみにしてあり、バッテリー容量は91kWh、満充電での走行距離はEPAサイクルで300マイル(482km)となっていて、このクラスでは最低限の航続距離を確保できているにとどまっています。日本で採用されているWLTCでの航続距離で言えば560kmを越えてくると予想されますが、実際はEPAでの表記が実用に近いため、EV性能としては「普通」、高級車クラスとしては少し見劣りがする航続距離とも言えます。
充電性能は150kW級の充電スピードを許容していて、充電ポートは車両右側にテスラなどが採用しているNACSポートとなっています。これにより、北米ではテスラのSuperchargerを利用できます。
一番の魅力はエンターテイメント性能
この車両の魅力は何といっても車内空間でのエンターテイメント性能であると言えます。近年EV化をすすめるメーカーが口をそろえて言うのが「移動の楽しみ」というモビリティとして移動時間を快適なものにするということです。そのためにソニーが今まで培ってきたエンターテイメント性がふんだんに発揮されています。
まずはテスラも搭載しているオーナーが近づくと開錠されてドアが開くスマートエントリーで車内に入り込むと、フロントシートに広がるパノラミックスクリーンとHonda e にも搭載されているサイドカメラミラーシステムも搭載されていて、このあたりはhondaのEVの特徴とも言える部分となっています。
広いスクリーンに様々なアプリケーションが表示され、エンターテイメントアプリも充実しています。映画や音楽などを最高の状態で楽しむために、Dolby Atomosに対応した立体音響360 Reality Audioを搭載し、立体的な音場を実現しています。また車外のノイズを軽減するヘッドフォンなどでもおなじみの「アクティブノイズキャンセリング」も搭載し、ロードノイズも最小限に抑えています。
AFEELA1の特徴の1つでもある「Media Bar」はドライバーや同乗者だけでなく、車外にいる人々とのコミュニケーションも可能にします。車両の状況を車外で一目で確認する事も可能で、街中にあるインフォメーションボードのように、リアルタイムトレンドや天候、スポーツの結果なども表示します。
先進のAI技術を搭載
そして、40のセンサーと先進的なAI技術を搭載した運転支援とドライバーと会話を重ねることで進化するパーソナルエージェントが問いかけに対して回答し、車両の状況からアドバイスをしてくる場合もあります。
AFEELAブランドを体験できる拠点
今回の発表で、まずは北米のカリフォルニア州から納車を開始し、順次そのエリアを拡大していくようです。まずはこのAFEELAブランドを広めていくために、AFEELA Studio & Delivery Hubと呼ばれる拠点をカリフォルニア州のトーランス市とフリーモント市の2か所に設置し、実車の市場や機能の体験と購入後の納車やメンテナンスを行う拠点とするようです。
北米のライバルとの競争にAFEELAは勝てるか?
すでに先進的なEVメーカーであるテスラやルーシッドなどがある北米市場で果たしてAFEELAの優位性はあるのでしょうか。
TESLA Model S
同じAWDモデルで比較してみると北米でModes Sが$73,490で、EPA航続距離402マイル(646km)となっていて、価格と航続距離では大幅にAFEELAを上回っています。0 – 60mphは3.1秒で、$88,490のPlaidにすると驚異の1.99秒という驚愕の加速力を見せています。
Lucid Air Touring
そして高級EVとして北米で年々納車台数を増やしているルーシッド・エアのAWDモデル「Touring」と比較すると$78,900で、EPA航続距離406マイル(653km)を実現、0-60MPHは3.4秒とこちらもテスラに負けない加速力を持ち、航続距離も更に長距離化を実現しています。
ここに割って入るAFEELAは、0-60mphでの加速力を公式には公表していないが、この加速力という点ではテスラやルーシッドに軍配が上がるも、プレイステーションや音響機器でなじみの深いSONYブランドのエンターテイメント性能で、移動の楽しみを最優先にするという層に向けた前者2車種とは違った切り口のモビリティだと言えます。
ただ、それにしては電費性能にはもう少し期待をしたいところ。長距離の移動がたのしめるという観点では、テスラやルーシッドの航続距離は超えてきて欲しかった気もします。さすがに100マイルも差が開いてしまうと、同じ価格帯のライバルたちも、それなりのエンターテイメント性能は兼ね備えているわけで、完全自動運転までまだ少し時間がかかる事を考えると、ドライバーが運転中にできることは限られてくるため、移動中の楽しみを演出するエンターテイメント性能の差がそれほど出るとは思えななくなってしまいます。
そうなると、パーソナルエージェントがどれだけドライバーアシストにつながるか、またメディアバーがどれほどの価値を持ち、情報を外部に発信するモビリティとして、市街地で新しい価値を生み出すものになるのかが注目されるところです。
いずれにせよ、従来のEVとも違ったモビリティを市場に投入してくるSHMが第1弾としてリリースしたAFFELA1は未来のモビリティとして新しい風を吹き込むことは間違いありません。テスラやルーシッドには無い価値が広がっていくか楽しみな1台です。