木曜日 , 9月 18 2025

「電気自動車(EV)のせいで整備士はいらない…」は誤解。国土交通省のデータが示す、これからの整備士に”昇給”と”需要”が集まる理由

2025年最新データ】「電気自動車(EV)で整備士はいらない」は本当か?需要が高まる3つの根拠と必須資格

「このままガソリン車の整備を続けていて、将来はあるのだろうか…」 「電気自動車(EV)が普及したら、自分たち整備士の仕事はなくなるのではないか…」

日々、技術の進化を肌で感じている整備士の方々だからこそ、このような不安を抱えているのではないでしょうか。

結論から申し上げます。その不安は、半分は的を射ていますが、半分は大きな誤解です。

たしかに、従来の仕事の一部は減少します。しかし、新しい専門知識を身につけた整備士の需要は、データを見ても確実に高まっています。 仕事は「なくなる」のではなく「変化」するのです。

この記事では、業界アナリストの視点から、感情論を一切排除し、国土交通省などが公表している客観的なデータを基に、「なぜEV時代に整備士の需要が高まるのか」「具体的に何を学ぶべきか」を冷静に解説します。

この記事を最後まで読めば、漠然とした不安が「未来への確信」に変わるはずです。

「電気自動車で整備士はいらない」説が広まる2つの背景

まず、なぜ「整備士不要論」がこれほど広まっているのか。その背景には、EVが持つ2つの大きな特徴があります。これは事実として認識しておく必要があります。

背景1:部品点数の大幅な削減

ご存知の通り、EVはエンジンやトランスミッション、燃料供給系といった複雑な機構を持ちません。ガソリン車が約3万点の部品で構成されるのに対し、EVは約1万5千〜2万点と、部品点数が30%以上も少ないと言われています。

部品が減れば、それに付随する交換や修理の仕事が減るのは当然の流れです。これが「仕事がなくなる」と言われる最大の理由でしょう。

背景2:「オイル交換」など従来の主要業務の消滅

整備工場での売上の柱の一つであった、エンジンオイルやオイルフィルターの交換。EVにはそもそもエンジンがないため、これらの業務は完全に消滅します。定期的な収益源が一つ失われることは、多くの整備工場にとって大きな変化です。

「では、やはり仕事は減る一方ではないか?」 そう思われるかもしれません。しかし、データは別の未来を示しています。

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それでもEV時代に整備士の需要が高まる決定的理由

失われる業務がある一方で、それを上回る新たな専門領域が生まれています。そして、その領域は誰にでもできる仕事ではありません。だからこそ、価値が生まれるのです。

理由1:高電圧システムの専門的な保守・点検業務

EVの心臓部は、数百ボルトの高電圧バッテリーとモーターです。これを安全に取り扱うには、ガソリン車とは全く異なる電気の専門知識と技術が不可欠です。

  • バッテリーの状態診断
  • 絶縁抵抗の測定
  • 高電圧回路の点検・修理

これらの業務は、一つ間違えれば感電など命に関わる重大事故に繋がります。そのため、専門教育を受けた「低圧電気取扱業務特別教育」修了者など、有資格者でなければ従事できません。これは、知識とスキルを持つ者だけが参入できる、新しい専門分野なのです。

理由2:先進運転支援システム(ADAS)の複雑化

EVとセットで進化しているのが、カメラやセンサー、ECU(電子制御ユニット)が複雑に連携するADAS(先進運転支援システム)です。

  • 自動ブレーキのセンサー校正(エーミング作業)
  • 車線逸脱警報システムの診断
  • ソフトウェアのアップデート対応

これらの電子制御システムの整備は、従来の「機械いじり」の技術だけでは対応不可能です。電子機器とソフトウェアに関する深い理解が求められ、整備士の仕事はより高度で知的なものへと変化しています。

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理由3:各種データが示すEV整備の将来性

ここで、実際のデータを見てみましょう。

【日本のEV・PHV販売台数の推移】

  • 2020年:約2.9万台
  • 2022年:約8.9万台
  • 2024年:約15.0万台(予測)

(出典:自動車販売協会連合会などのデータを基に作成)

このように、EVの販売台数は着実に増加しており、今後もこの流れは加速します。これは、数年後にはこれらのEVが車検や整備の対象として、整備工場に大量に入庫してくることを意味します。

その時、高電圧システムや電子制御を「分からない」と言って断りますか?それとも、専門家として「任せてください」と言いますか?どちらの未来が明るいかは、言うまでもありません。

Hyudai(ヒョンデ)の事例

韓国の現代自動車「Hyundai(ヒョンデ)」。かつて日本で販売していた時は「ヒュンダイ」と呼んでいましたが、この時日本国内で売られていた車の評判は非常に悪いモノでした。そして2010年に日本を撤退するも、2022年CEV(クリーン・エネルギー・ビークル)のみを販売するとして、日本に再上陸しました。

ヒョンデは、横浜に大きなサービスセンターがあり、主にここでIONIQ5やKONA、INSTERなどの整備を行っていますが、実は直営はここだけ。現在では北海道から沖縄まで整備拠点が広がっていますが、ここは協力指定整備工場で、元々国内で自動車整備工場として稼働していた企業と提携してアフターフォローを強化しています。BYDなど自社のサービス拠点を増やしている企業も多くありますが、ヒョンデのやり方は、日本市場で一度失敗した経験から、地域の整備工場ともつながり、車両への理解を日本人に深めてほしいという狙いもあるようです。

現在海外勢が優勢な電気自動車の世界は、今後このようなサービス拠点の増やし方が予想されます。国内ディーラーがコンピュータで制御し、修理などを自社工場に入庫させている間に、海外勢が地域の整備工場と組み、やがて販売も任せていく事で、日本古来からの商習慣を利用した販路拡大戦略が広がっていく可能性があります。

これからの整備士に必須の「電気の知識」と具体的な一歩

では、未来の需要を掴むために、今から何をすべきか。その最も確実で効果的な第一歩が「電気の知識」を体系的に学ぶことです。そして、その証明となる資格がキャリアを大きく後押しします。

なぜ「第二種電気工事士」が有効な一手になるのか

整備士のキャリアにおいて、今最も注目されている資格の一つが「第二種電気工事士」です。

「なぜ、自動車整備に電気工事士?」と疑問に思うかもしれません。 この資格は、600ボルト以下で受電する設備の工事に従事できる国家資格です。これを学ぶ過程で、以下のEV整備に直結する知識を基礎から体系的に習得できます。

  • 電気理論の基礎
  • 配線図の読解能力
  • 電気機器の構造理解
  • 安全な作業手順

何より、この資格はEV充電設備の設置工事といった、整備の枠を超えた新しい事業領域への扉を開けてくれます。資格を持つことで、あなたの市場価値は飛躍的に高まり、確実な昇給へと繋がるのです。

未来を掴むための一歩:編集部が厳選した最適な参考書

「そうは言っても、何から勉強すればいいか分からない」 そうした声にお応えするために、今回、編集部では数ある参考書の中から、初学者でも無理なく合格を目指せる「第二種電気工事士」のテキストを厳選しました。

この一冊をおすすめする理由は以下の通りです。

  • 図解が豊富で、電気の基礎が直感的に理解できる
  • 専門用語が少なく、整備士の業務に置き換えて考えやすい
  • 過去の試験問題を徹底分析しており、合格への最短ルートが示されている

未来への投資は、今日この一歩から始まります。長年培ってきた整備技術に「電気」という新しい武器を加え、誰にも真似できない専門家を目指しませんか?

技能試験

まとめ

最後に、この記事の要点をまとめます。

  • EV化で部品点数やオイル交換は減るが、それを上回る専門的な新業務が生まれる。
  • 高電圧システムやADASの整備には、高度な「電気の知識」が不可欠。
  • 各種データは、今後のEV整備の需要が確実に高まることを示している。
  • 「第二種電気工事士」の資格は、新しい時代を生き抜く強力な武器となり、昇給やキャリア拡大に直結する。

「電気自動車の時代に、整備士はいらない」のではなく、「新しい知識を学んだ整備士こそが、もっとも必要とされる」。これが、データに基づいた客観的な事実です。

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変化は、傍観者にとっては「脅威」ですが、当事者にとっては「チャンス」でしかありません。ぜひ、そのチャンスを掴んでください。

About Electric Manager

大学時代に電子工学を専攻し、電気自動車やソーラーカーの研究を行う。 電気工事士の資格も持ち、自動車メーカーでの電気自動車関連の仕事や電力会社での電気工事、その後は充電スタンドV2Hの営業など弱電から強電まで広いエリアを専門としています。

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