防災対策やキャンプ、車中泊のブームで、一家に一台「ポータブル電源」を検討する方が増えています。しかし、多くの製品が並ぶ中で、何を基準に選べばよいか分からず、購入後に「使いたい家電が動かなかった」「思ったよりすぐにバッテリーが切れた」と後悔するケースが後を絶ちません。

その最大の原因は、「W(ワット)」と「Wh(ワットアワー)」という2つの電力に係わる単位を正しく理解していないことにあります。これらを知るために、家庭用の電源は100V(ボルト)で動作し、自宅の電気の流れは最大で15A(アンペア)であるという基本知識も必要です。
少し頭が痛くなってきましたか?(笑)でも大丈夫すごく簡単です。
結論から申し上げます。ELECTRICLIFEが防災・日常使いの両方で快適な利用を推奨するスペックは、定格出力1500W以上です。
なぜなら「1500W」は、日本の家庭用コンセント(1カ所)で使える電力の上限とほぼ同じだからです。電力(P)の計算はとても簡単で、使う電圧(V)と電流(A)を掛け算するだけです。つまり一般家庭ではP=100(V) × 15(A)なので1500Wという事です。
この記事では、なぜ1500Wが必要なのか、そしてそのスペックのポータブル電源が実際にどのくらい使えるのか、具体的な計算例を交えて徹底解説します。
なぜ「定格出力1500W」が最低ラインなのか?
ポータブル電源選びで最も重要なスペック、それが「定格出力(W)」です。これは「どれだけパワーの強い家電を動かせるか」を示す数値です。
1. 「1500W」は自宅のコンセントと同じ安心感
日本の家庭用コンセントは、一般的に「100V / 15A」という規格です。これは、100V × 15A = 1500W まで使えることを意味します。
皆さんが普段、電子レンジ、電気ケトル、ドライヤーなどを使う時、無意識にこの1500Wの範囲内でやりくりしています。
もしあなたが500Wや1000Wのポータブル電源を選んだ場合、どうなるでしょうか?
- 1000Wの電気ケトル → × 動かせない
- 1200Wのドライヤー → × 動かせない
- 1300Wの電子レンジ → × 動かせない
「停電時に、せめてお湯だけでも沸かしたい」と思っても、低出力のモデルではそれが叶いません。これが「買って後悔した」の最大の理由です。

2. 「大は小を兼ねる」が、逆は絶対にない
電力において「大は小を兼ね」ます。
- 1500Wモデル:300Wの扇風機も、1200Wのストーブも動かせます。
- 500Wモデル:300Wの扇風機は動かせますが、1200Wのストーブは絶対に動かせません。
家電が動くか動かないか。この決定的な差が、1500Wというラインにあるのです。
豆知識:「定格出力」と「瞬間最大出力」 スペック表には「瞬間最大出力」も書かれていますが、これは数秒間だけ耐えられる数値(モーターが動き出す時など)。常に注目すべきは、安定して出し続けられる**「定格出力」**です。
必須知識:「W(出力)」と「Wh(容量)」の違い
次に初心者が混乱するのが「Wh(ワットアワー)」です。「W」との違いを明確にしましょう。
- W (ワット) = 使える家電の「強さ(出力)」
- 例:1500Wのストーブを動かす「パワー」があるか。
- (例えるなら蛇口の太さ。太いほど一度に多くの水を出せる)
- Wh (ワットアワー) = 使える「時間(バッテリー容量)」
- 例:そのストーブを「何時間」動かし続けられるか。
- (例えるなら水タンクの大きさ。大きいほど長く水を出せる)
この例で考えると、1500Wのストーブを1時間動作されることができる電池容量が、1500Whというになります。
いくら「W(出力)」が大きくても、「Wh(容量)」が小さければすぐに使えなくなります。逆に「Wh(容量)」が大きくても、「W(出力)」が小さければ強力な家電は動かせません。
「1500Wのパワー(W)」で、「できるだけ長時間(Wh)」使えるもの。これが理想です。
Ahとの関係は?
さて、バッテリーの容量の単位にはもう一つAhというのがありますね。モバイルバッテリなどはこの「Ah」であらわされています。
カンのよい方は分かったかもしれません。これもW(ワット)とA(アンペア)の関係と一緒です。1500Whとは、100Vの電圧で15Aの電流を1時間流した場合の容量です。100Vで動作させるという事を考えると、Ahでは、15Ahという事になります。モバイルバッテリの場合は、スマートフォンを充電するためだけに使う場合が多いため電圧は5Vになります。1500Whを5Vで動かす場合は300Ahとなります。
ちなみにモバイルバッテリの場合、Ahが単位ですが、補助単位としてm(1/1000)がついている場合が多く、300Ahは、300000mAh(ミリアンペアアワーと読む)、つまり30万アンペアアワーになります。
このあたりの単位を知っておくと、表示に騙されず、自分の欲しい容量のバッテリを購入できますね。
【リアル計算例】1500Wの家電は、実際何分使えるのか?
では話を戻しまして、ここで具体的なモデルと家電を使って、現実的な稼働時間を計算してみましょう。人気のALLPOWERSのR1500は、バッテリ―容量が1152Whとなっています。

【条件】
- ポータブル電源:ALLPOWERS R1500
- バッテリー容量: 1152Wh
- 定格出力: 1800W
- 使用する家電:1500Wの電気ストーブ
まず、この組み合わせは使用可能です。定格出力1800Wが、ストーブの消費電力1500Wを上回っているためです。
1. 理論上の最大時間
計算はシンプルです。
稼働時間 (h) = バッテリー容量 (Wh) ÷ 消費電力 (W)
1152Wh ÷ 1500W = 0.768時間
分に換算すると、0.768 × 60 = 46.08分 となります。
2. 現実的な稼働時間(ここが落とし穴)
「なんだ、46分も使えるのか」と思った方、注意してください。上記はあくまで理論値です。
実際には、バッテリーの電力(DC)を家庭用コンセントの電力(AC)に変換する際に、「変換ロス」が発生します。また、電源本体のシステム(液晶表示など)も電力を消費します。
この効率は一般的に85%〜90%程度とされています。控えめに効率85%として計算し直す必要があります。
【現実的な計算】
- 実使用可能電力量: 1152Wh × 0.85 (効率) = 979.2Wh
- 実稼働時間: 979.2Wh ÷ 1500W = 0.6528時間
- 分に換算: 0.6528 × 60 = 約39.2分
結論:1152Whの容量で1500Wの家電を使い続けると、約39分でバッテリーが切れる
理論値の46分に対し、実際は約39分。この約7分間の差は、寒さで凍える状況では非常に大きな差となります。これが「スペック表だけ見て買う」ことの危険性です。
この計算例から分かるように、1500Wの家電を1時間使いたいなら、単純計算で1500Wh、実際には 1500Wh ÷ 0.85 = 約1765Wh以上のバッテリー容量が必要になるということです。
1500W以外に確認すべき!後悔しないためのチェックリスト
定格出力1500Wをクリアしたら、次に以下のスペックを確認しましょう。
1. バッテリーの種類:安全と寿命の「リン酸鉄」を選ぶ
ポータブル電源のバッテリー(リチウムイオン電池)には、主に2種類あります。
- 三元系 (NCM):軽い。エネルギー密度が高い。
- リン酸鉄リチウム (LiFePO4):重い。安全性が非常に高く、寿命が長い(充放電サイクルが3〜6倍)。
数年前までは三元系が主流でしたが、現在は技術が進歩し、安全で長寿命な**「リン酸鉄リチウム(LiFePO4)」**がスタンダードです。価格が少し高くても、安心して長く使えるリン酸鉄モデルを強く推奨します。
2. 充電時間:AC入力(コンセントからの充電)は2時間以内か
大容量になるほど、充電時間が長くなります。「停電に備えていたのに、充電が間に合わなかった」では意味がありません。
- 旧型モデル:0%から100%まで8〜10時間
- 急速充電モデル:1.5〜2時間で満充電
日中のわずかな時間で充電を完了できる「急速充電」に対応したモデルを選びましょう。
3. 機能:パススルーとUPS
- パススルー:ポータブル電源を充電しながら、同時に家電も使える機能。ほぼ必須です。
- UPS(無停電電源装置):停電を検知すると、瞬時(0.02秒など)にバッテリー供給に切り替える機能。デスクトップPCやサーバーのデータを守りたい場合に役立ちます。
4. ソーラー充電(MPPT方式)
長期の停電やアウトドアでは、ソーラーパネルによる充電が命綱になります。その際、効率よく充電できる**「MPPT方式」**に対応しているかを確認しましょう。
ポータブル電源選びは「1500W」をスタートラインに
ポータブル電源を選ぶ際、価格やデザイン、Wh(容量)の大きさだけに目を奪われがちです。しかし、本当に重要なのは「あなたの使いたい家電が、ちゃんと動くか」です。
- まずは「定格出力1500W以上」を基準にする。
- 次に、使いたい時間から「Wh(容量)」を決める。(1500Wを1時間なら1800Wh程度)
- 安全・長寿命な「リン酸鉄リチウム」を選ぶ。
- 「急速充電(2時間以内)」に対応しているか確認する。
この基準で選べば、いざという時や、レジャーで使いたい時に「こんなはずじゃなかった」と後悔する可能性を限りなく減らすことができます。あなたの「ELECTRICLIFE」を豊かにする、最適な一台を見つけてください。
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