記録的な成果と未来への投資
テスラチームは2025年第3四半期(Q3-2025)において、自動車部門とエネルギー部門の両方で記録的な成果を達成しました。具体的には、世界全体で過去最高の車両納車台数を記録し、さらに住宅、産業、公益事業の全セクターで過去最高のエネルギー貯蔵装置の配備量を達成しました。

この強力な事業展開の結果、四半期の総売上高は記録的な281億ドルに迫り、フリーキャッシュフローも約40億ドルと過去最高を更新しました。テスラは、これらのコアハードウェア製品が、将来的にはAIを活用したサービスを通じて顧客価値を高めるという戦略に引き続き注力しています。
【売上推移】記録的な増収と利益率への影響
1. 収益実績(YoY比較:Q3-2024 vs Q3-2025)
2025年第3四半期の総売上高は280.95億ドルに達し、前年同期(Q3-2024)比で12%増加しました。特にエネルギー部門の成長が際立っています。
| 部門 | Q3-2024 (百万ドル) | Q3-2025 (百万ドル) | 前年同期比 (YoY) | 増加率 (YoY) |
| Total Revenues (総売上高) | 25,182 | 28,095 | +2,913 | 12% |
| Automotive Revenues (自動車部門) | 20,016 | 21,205 | +1,189 | 6% |
| Energy Generation and Storage (エネルギー部門) | 2,376 | 3,415 | +1,039 | 44% |
| Services and Other (サービス・その他部門) | 2,790 | 3,475 | +685 | 25% |
【納車・生産台数】 車両総納車台数は497,099台となり、前年同期比7%増加しました。Model 3/Yの納車台数は481,166台で、前年同期比9%の伸びを示しています。
2. 利益率とキャッシュの健全性
GAAP営業利益は16.24億ドルでしたが、前年同期比で40%減少しました。営業利益率も5.8%となり、前年同期(10.8%)から501ベーシスポイントの減少となりました。
※「GAAP」とは、財務情報報告に使用される、一般に公正妥当と認められた会計原則(Generally Accepted Accounting Principles)を指します。
【評価コメント:利益率低下の背景】 営業利益の減少は、主にAIおよびその他のR&Dプロジェクトへの投資を伴うSG&A(販売費および一般管理費)を含む営業費用の増加、ならびに一部モデルにおける固定費吸収率の低下、関税の増加、販売構成の変化による車両平均コストの上昇が主な要因です。テスラは、これらの短期的な逆風下でも、長期的な成長のために必要な投資を継続しています。
一方、キャッシュポジションは非常に強固です。四半期末の現金および投資は416億ドルに増加し、フリーキャッシュフローは39.90億ドルを記録し、前年同期比で46%増加しました。
Q3 2025 重点取り組み:自動車、AI、エネルギーの進化
テスラはQ3において、製品ポートフォリオの拡大とAI技術の具体的な実世界への展開に焦点を当てました。
1. 自動車製品・市場戦略 (Automotive Initiatives)

• 価格競争力強化と新モデル発売:
- 米国では、EV税額控除失効を受け、より手頃な価格帯のModel 3およびModel Y Standardを発売しました。これらのモデルはそれぞれ36,990と39,990から始まり、300マイル以上の航続距離を提供します。
- 中国市場向けには、ホイールベースを延長し、3列6人乗り仕様のModel YLを投入し、製品ラインナップを拡大しました。
- 高性能モデルとしてModel Y Performance(0-60mph加速3.3秒)も発売されました。
• グローバル展開:
- 韓国での納車台数が記録を更新し、同国が米国、中国に次ぐテスラにとって第3位の市場となりました。
- インドでのModel Yの納車が始まりました。
- 認定中古のModel 3およびModel Yに対するリース提供が開始されました。
2. AIとオートノミーの革新 (AI & Autonomy)
テスラは、納車されたすべての車両が自律走行のために設計されており、AIを実世界に導入するフリートを構成するという方針を追求しています。

• Robotaxi技術の展開:
- Robotaxi技術を活用したライドヘイリングサービスをベイエリア(サンフランシスコ湾岸地域)で開始しました。Austinでもサービスエリアと車両台数を拡大しています。
- このサービスは、普遍的なモデル(universal model)を通じて将来的に他の都市へ迅速に拡大するための貴重な実世界データを提供します。
- RobotaxiのiOSアプリが、米国およびカナダの全てのユーザーにダウンロード可能となり、待機リストへの参加が可能になりました。
• FSD (Supervised) の進化:
FSD (Supervised) v14の展開を開始しました。これにより、ロードデブリの回避、緊急車両への優先、FSDが駐車すべき場所を示す到着オプションの追加など、複雑なシナリオへの対応が改善されました。
• AIインフラの強化:
- AI推論およびトレーニング用の先進的な半導体をSamsungと共同で米国で製造する契約を発表しました。
- AIトレーニング計算能力(Cortex)を拡張し、合計81k H100 GPU相当に達しました。
• 車載ソフトウェア:
北米の車両向けにGrok(AIコンパニオン)を展開したほか、エネルギーを節約するローパワーモード、音楽と同期するライトシンクなどの機能がOTA(Over-The-Air)アップデートで提供されました。
3. エネルギー部門の飛躍と充電ネットワーク (Energy & Charging)
• 記録的な配備と利益:
- エネルギー貯蔵装置の配備量が四半期最高を達成しました(12.5 GWh)。これは主に、上海メガファクトリーの継続的な増産とPowerwallの記録的な配備に支えられています。
- エネルギーおよびサービス・その他部門の粗利益は、四半期および前年同期比で増加し、11億ドルの記録的な利益を達成しました。

• 次世代産業用ストレージ Megablock:
- 次世代産業用貯蔵製品Megablockを発表しました。これは、Megapack 3を4基統合した中電圧バッテリーであり、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを単一パッケージに統合することで、公益事業規模の配備を迅速化し、顧客の複雑性を軽減します。
- Megapack 3は、2026年にヒューストン・メガファクトリーで生産が開始される予定で、年間最大50 GWhの製造能力が計画されています。

• 充電ネットワーク:
- Q3中に3,500以上の新しいスーパーチャージャースタンドを追加し、ネットワークを前年同期比で18%成長させました。
- V4スーパーチャージャーキャビネットを発売。V3に比べて電力密度が3倍、キャビネットあたりのストール数が2倍となり、効率性、低コスト、迅速な展開が可能になりました。V4は乗用車向け500kW、Tesla Semi向け1,200kWの充電速度を実現します。

【今後の展望】長期的な価値創造と2026年ロードマップ
テスラは、グローバルな貿易や財政政策の変動による短期的な不確実性に直面しているものの、長期的な成長と価値創造に焦点を当てています。
1. 収益構造の変化の期待
テスラは今後、ハードウェア関連の利益に加えて、AI、ソフトウェア、およびフリートベースの利益が加速することを期待しています。すべてのテスラ製品(車両、エネルギー貯蔵)はAIソフトウェアによって収益化される機会を持っています。
2. 生産能力の最適化
テスラは、新しい工場や生産ラインを建設する前に、既存の生産能力を活用し最適化することを目指し、差別化された効率的な製品ポートフォリオを通じて販売量を拡大することに引き続き注力します。
3. 2026年量産開始予定の主要プロジェクト
以下の主要な次世代製品は、2026年の量産開始に向けて順調に進行しています。
- Cybercab (テキサスで建設中)
- Tesla Semi (ネバダで建設中)
- Megapack 3 (2026年にヒューストンで生産開始)
さらに、人型ロボットOptimusの第1世代生産ラインの設置も進められており、量産開始が待たれます。

2025Q3決算のまとめ
テスラQ3 2025決算は、過去最高の車両納車台数とエネルギー貯蔵配備量を達成し、総収益は281億ドル、フリーキャッシュフローは約40億ドルと記録的な成果を示しました。
しかし、GAAP営業利益は40%減の16.2億ドル(営業利益率5.8%)に留まりました。これは、ベイエリアでのRobotaxi技術の活用開始を含むAIおよびR&Dプロジェクトへの大規模な戦略的投資により、営業費用が増加したことが主因です。
全体的な評価として、テスラは短期的な市場の不確実性に直面しつつも、Model YLやMegablockといった新製品を投入し、長期的な成長とAIを活用した将来的な収益化 に焦点を当てた積極的な投資フェーズにあることが明確に示されています。
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