ついに日本にやってきたVWのID.4
ヨーロッパ市場で人気の電気自動車(EV)ID.4が2022年11月22日、ついに日本市場にもやってきました。ID.4の発表は2020年に行われ、2021年からヨーロッパと北米市場で納車を開始し、その後EV大国となっている中国市場でも納車が開始されていました。
フォルクスワーゲンと言えば従来ある自動車メーカーの中でもEVへのシフトを積極的に行っているメーカーでもあり、フォルクスワーゲン・グループ傘下にはアウディ、ポルシェ、ベントレー、ブガッティなどのブランドを擁するドイツのグローバル自動車メーカーです。
既に2019年からID.3とよばれるコンパクトEVを販売していて、こちらも2020年にはヨーロッパで人気車種となっていました。日本市場では、人気車種の1つであるGolf(ゴルフ)のEVバージョン「e-Golf」を2018年ごろに販売しており、VWのEVとしては2車種目がリリースされたことになります。
2021年ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した「ID.4」
ID.4は2021年にワールド・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。この賞は、2021年1月1日時点で2つ以上の大陸にまたがる5か国以上で発売されている自動車を対象にして投票が行われるもので、他に「パフォーマンスカー」や「グリーンカー」、「カーデザイン・オブ・ザ・イヤー」などのカテゴリが用意されています。
過去、日本車では、レクサスLS460、マツダ・デミオ、日産リーフ、マツダ・ロードスターなどが受賞しました。
ID.4のスペック
今回日本市場に投入されたID.4は、日本への導入モデルである「ローンチエディション」として、2つのグレードが用意されています。1つは、RWD仕様で細かくオプションなどの設定もあるID.4 Proと廉価版でバッテリー容量も抑えられたID.4 Lite (ライト)の2車種となっています。ローンチエディションは、輸入されてくる量も現段階では非常に少ない状況です。

その仕様は、ID.4 ProがRWD(後輪駆動)で、バッテリー容量が77kWh、満充電での航続距離はWLTCモードで561km程度となっていて、実走行では430~450km程度となります。このモデルはタイヤが20インチと大きめのモノを装着していて、0から100km/hへの到達時間は8.5秒です。
一方で廉価版のID.4 Liteについては同様にRWDで、価格を抑えるためにバッテリー容量は52kWhへと減らし、満充電での航続距離はWLTCモードで388kmとなっていて、タイヤも18インチとなっています。
どのブランドのEVも日本市場へはRWDを先に投入し、後にAWDグレードを投入するという流れになっているようで、同グループ傘下の「アウディ」のQ4 e-tronなどもRWDモデルだけの投入となっています。
EV専用プラットフォームMEB
フォルクスワーゲングループの100%電気自動車に採用されているのが、EV専用プラットフォームである「MEB(Modularer E-Antriebs Baukasten)」です。このプラットフォームは、大容量バッテリーを低重心になるよう敷き詰め、高速走行やコーナーリングでの安定性を高めています。MEBでの充電許容出力については最大135kWとなっていて、バッテリ電圧は400Vとなっています。日本市場では、そのインフラの状況を鑑みてか、94kWまで出力が制限されています。
MEBプラットフォームはID.3、ID.4、ID.5などVWブランドのEVだけでなく、アウディのQ4 e-tronやシュコダ、クプラなどのグループブランドのEVでも共通のプラットフォームとして利用されていて、EV専用の同じ工場にて生産されています。
しかし、このスペックは殆どのメーカーが達成していもので、より高速な充電とバッテリコントロールを実現するために、EVの開発が目まぐるしく進む昨今では、ポルシェ・タイカンなどが採用している800Vへのシフトが必要になってきます。すでにVWグループでは次世代のEVプラットフォームとしてSSP(Scaleable Systems Platform)への移行が示唆されていますが、そのリリースはかなり先になる見通しです。
ドライビングは通常のオートマ同様
EVに多く採用されているような回生ブレーキの調整はD(ドライブ)とB(ブレーキ)の2種類でBにすることで回生ブレーキが強くかかるようになり、より電力を回収します。通常Dでのアクセル感覚は、ペダルを放してもかなり減速が少なく「スー」っと進んでいく感覚を受けます。通常のオートマチック車と同じようですが、信号などでブレーキを踏みこむことで、自動でホールドがかかります。
ワンペダルドライブにはなりませんが、ワンペダルを採用しないメーカーの殆どが言う「ガソリン車からのスムーズなEVへの移行」ということでしょう。
ブレーキも通常のディスクブレーキのため、Audiなどが搭載している回生ブレーキによるブレーキではないため、従来の車のようにパッドも消耗していきます。
インフォテイメントシステムは携帯が必須
さて、EVで気になるのがインフォテイメントシステムです。ID.4の液晶画面は非常に見やすく、ドライバ専用のモニタはステアリングに固定されているため、ステアリングの位置調整をしても常に見やすい位置に表示されています。EVに必要なエネルギー表示や航続距離、ナビゲーションとクルーズコントロールなど必要な情報が一目で分かるようになっています。
一方でエンターテイメント部分はほとんど携帯電話にお任せと言う形になります。つまりはApple CarplayかAndroid Autoを利用することになります。また、このローンチモデルについては携帯電話とのコネクティビティが無いため、アプリでリモートから車をコントロールすることができません。
インテリアは充実!
ID.4はキーを持ったまま車両に乗り込むことで電源がONになり、ブレーキを踏むだけでスタートの準備が整います。シンプルに仕上がったインテリアへのこだわりは感じられ、シートヒーターとマッサージ機能がついているのが特徴的です。アンビエントライトを30色に変更でき、夜の車内をその時のムードで演出可能です。
VWグループが展開する充電ネットワーク
共通のEVプラットフォームだけでなく、VWグループは、テスラが自社で充電ネットワークを広めているように、独自の充電ネットワークであるPCA(プレミアム・チャージング・アライアンス)を展開しています。日本のCHAdeMoが充電カードを用意してチャージを行っている中、PCAは車両に充電コネクタを接続後は、アプリで充電のコントロールが可能となり、アプリに登録したクレジットカードから決済が行われます。
2022年12月上旬の段階で、全国207ヶ所218基の充電ネットワークが構築されています。PCAはVWグループの車両だけが利用でき、現時点では、VW、ポルシェ、Audiの3つのブランドで共有されています。
もちろん日本のCHAdeMo規格に対応しているため、現状では日本の充電ネットワークでも充電可能ですが、PCAが拡充し、インフラが整った段階で、CHAdeMoからは抜けていくことをアナウンスしています。
ID.4は日本でも人気のモデルになるか?
まず、今回のID.4はローンチモデルという言わば”様子見感”が強いモデルです。そう感じるのがLiteの存在です。日本市場での価格帯に無理やり合わせるために、EVの良さの部分をいろいろとはぎ取ってしまったモデルですので、このグレードの購入は無いととすると、Proモデルが他社のものと比べてどうかという点です。
車両の状況がアプリなどから見れないというのはEVではかなりマイナス点になってしまいます。今後AWDのモデルなどが展開される時にはコネクティビティやインフォテイメントの充実は必要になるでしょう。また、搭載バッテリーの割には航続距離が短いことから、電費性能は他社のEVと比較してもけしてよいとは言えません。
しかし、使いやすそうなラゲッジルームの広さやVWらしいインテリアはVWファンにとっては重要な選択肢の1つでしょう。ただ相当なVWファンでない限り、次のエディションを待っても良いのかもしれません。