土曜日 , 4月 27 2024

2023年、日本国内のエネルギー動向の現状と今後

日本国内のエネルギーの状況

日本のエネルギー政策は2011年3月11日の東日本大震災から大きな転換を迫られています。東京電力福島第一原発の事故から12年が経過した今もまだ、復興の途中です。2050年のカーボンニュートラル実現には、東北地方の復興は不可欠で、特に福島復興なくして、2050年の脱炭素はあり得ません。2023年度までの日本のエネルギー政策の現状をまとめてみました。

福島県 メガソーラー ELECTRICLIFE エレクトリックライフ
福島県に広がるメガソーラー

日本のエネルギー政策は福島の復興なくしてあり得ない

東日本大震災から11年が経過した2022年3月から、ようやく特定復興再生拠点地域として指定されていた地域の避難指示解除により、葛尾(かつらお)村、大熊町、双葉町、浪江町、富岡町、飯館村などの住民の帰還がはじまり、2023年5月1日までにすべての避難指示が解除されています。

その後2023年8月24日から、福島第一原発の建屋内で核物質の冷却などに使われていた放射性物質を含む水を、ALPS(Advanced Liquid Processing System:多核種除去設備)によってトリチウム以外を除去した処理水を希釈したものの海洋放出も始まりました。

政府はALPS処理水の海洋放出はWHOが定める飲料水基準を大幅にクリアしているとしているも、国内外の不安の声は払しょくできているとは言えず、風評被害の拡大も予想されていることから、水産物の需要対策のための基金や漁業者の事業継続のための基金などが用意されています。

使用済み核燃料の取り出しは2031年に完了予定

福島第一原発内の使用済み燃料プール内の燃料取り出しは3・4号機は完了しているものの、すべての使用済み核燃料の取り出しは2031年に完了する予定で、それまでは、冷却や取り出し作業に必要な水が必要で、ALPSによる処理が必要となります。

住民帰還後のケア

避難指示解除から帰還環境の整備が進められているも、風評の払しょく、帰還・定住者の促進、なりわいの再建などへの継続的な支援が必要です。すでに震災後に県外で新しい生活を選択した人も多くいることから、新しい分野への取組による長期的な雇用創出のためにも「福島イノベーションコースト構想」などによって新産業やベンチャー企業の育成に力を入れています。

福島県南相馬市の万葉の里風力発電所 ELECTRICLIFE エレクトリックライフ
福島県南相馬市の万葉の里風力発電所

国内外のエネルギー動向

ロシアによるウクライナ侵略により日本だけでなく世界全体がエネルギー危機にさらされました。日本のエネルギーはほぼ輸入に頼っているため、日本も大きな打撃を受けていますが、それはEUなどロシア産のエネルギーに頼っていた国に比べるとその影響は低いものになっています。

特に天然ガス(LNG)については、すぐに対応できるエネルギー対策であるため、ヨーロッパ諸国がLNGの輸入量を大幅に増加させたため、需給はひっ迫し、価格も高騰、その争奪戦が繰り広げられることになり、LNG価格の高騰と輸入量の低下を余儀なくされたアジア諸国では計画停電を実施した国もありました。

日本のエネルギー価格高騰に対する対応

下のグラフは、ここ数年の天然ガスと電気・ガスの料金の推移であり、日本はヨーロッパなどに比べてエネルギー価格変動の影響は少ないと言えます。それでも、国民生活への負担を軽減するために、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」などにより電気・ガスに対しては補助金を出しています。更にガソリンについても同様に補助金が用意され、こちらは2023年9月末で終了予定でしたが、2023年12月末まで延長することを発表しました。政府としてはこの間に産油国との交渉を進めたいところですが、資源国の思惑と日本政府の思惑がうまくかみ合うかは不明です。

世界的なエネルギー価格の高騰 ELECTRICLIFE エレクトリックライフ
資源エネルギー庁 令和5年6月発表のエネルギー白書より

それでも、この状況は当面続くことが予想されていて、2025年にはLNG需給は更に悪化すると予想されているため、今後もさらなるエネルギー価格の高騰に備えておかなければなりません。補助金を利用すれば、今後増税による負担を先送りしているというだけでなんの解決にもなっていません。

グリーントランスフォーメーション(GX)の現状

世界ではGXに向け、再生可能エネルギーの促進や原子力の活用、電気自動車(EV)導入などにより脱炭素分野への投資を国家を挙げて加速されています。日本もこれに追従する形で、今後10年を見据えたエネルギーの安定供給と脱炭素に向けた「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定しました。

 

GX実現に向けた基本方針 ELECTRICLIFE エレクトリックライフ
GX実現に向けた基本方針 今後10年を見据えたロードマップ

今後10年間で総額150兆円を超える官民での投資を行っていくという計画です。これは1国だけでの実現が難しいカーボンニュートラルにおいて、アジアでの連携にりその活動を活発化させる「アジア・ゼロミッション共同体(AZEC)」構想の実現やGXでの成長分野への労働移動、地域・暮らしの中での脱炭素化を実現するためなど様々なエリアへ投資を行っていくという事です。

脱炭素に向けた動きに新たな課題

2050年のカーボンニュートラルに向けて、先進国を中心に取組が始まる中、ロシアによるウクライナ侵攻を引き金に、世界的なエネルギー需要のひっ迫と燃料価格の高騰などにより、その活動は水を差された形になりました。これにより、より野心的な取り組みが必要になったことがわかります。特に脱炭素社会実現に向けての再生可能エネルギー活用に対しては懐疑的な考え方が多かったものの、もはや夢のように思っていたことも取り組み実現させなければ2050年に間に合わなくなるどころか、日常生活すら立ち行かなくなり、産業や経済の大幅な失速を招きかねません。

もし、身の回りでエネルギーに対しての考え方が2020年から変化していないようであれば、2025年までに自身の生活に大きな影響が出てくるに違いありません。

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