経済産業省が来年度予算編成に向けCEV補助金も準備を進める
令和5年度の予算編成時期になり、各省庁から来年度予算の概算要求額が発表される中、注目のCEV補助金についてもその要求額が発表され、その要求額は令和4年度の概算要求334.9億円と比較して95.4億円増額の430.3億円の要求を行っています。
あくまで「概算要求」で実際は大幅に少なくなる
現段階での補助金の要求はあくまで各省庁からの要求であり、CEV補助金については毎年このような額になっていないという現状があります。下の表を見てもらえばわかる通り、令和5年度要求額430.3億円の横にはカッコ付で昨年の予算額が表示されています。令和4年度の要求額は334.9億円に対してCEV補助金に対しては155億円、インフラ導入に対しては90億円で決定となったためその合計金額245億円となっています。経産省からは増額で要求が出ていても、最終的にはふるいにかけられることになり、令和5年度当初予算も昨年同額程度となるのではないでしょうか。
令和5年度とは別の令和4年度補正予算も重要
来年度当初予算とは別に令和4年度の補正予算がどれだけ組まれるかも重要になってきます。令和5年度当初予算とは別に、この時期に再編成される補正予算も重要です。昨年の例でいえば、令和2年度補正予算が組まれていて、その補助金は2021年11月8日に終了してしまいました。その後2021年11月25日に令和3年度補正予算が閣議決定され、11月26日以降に登録された車両については、令和3年度補正予算を利用できることが決定したのです。つまり、この2週間程度の期間が空白の時となっていて、この間に新車登録されてしまった車両については「補正予算は受けられない」という事になったのです。
しかしながら、昨年度は令和3年度当初予算の補助金も同時に走っており、別途半額程度になってしまいましたが、この2週間の間に新車登録された場合には、令和3年度CEV補助金を利用することができました。これについては、まさに事務局のリーフがこのパターンにはまってしまったため、本記事末にある「【悲報】CEV補助金間に合いませんでした・・・」の記事をご覧ください。
今年度はすでに2022年10月末ごろで補助金が終了するという予想が発表されていますが、令和4年度の補正予算は今のところ不明です。ちなみに昨年の令和3年度補正については、375億円という非常に多くの補助金が設定されていました。令和5年度の概算要求額が増加されていることで、今後発表されるであろう補正予算については、昨年同様かもしくはそれ以上も期待できます。
V2H補助金も設定される可能性大
昨年度、車両に対する補助金の方に用意されていたのが、充電だけでなく自宅に電力を戻せる機能を搭載した充放電設備「V2H:Vechicle to Home」です。この充放電設備は、設置費用に係る費用が100万円を超えてくるため、個人では中々導入の敷居が高いものになっています。しかしながら、EVでも国産のものを購入する場合、V2H機能を搭載しているものが多く、昨今の日本の電力事情を考えれば、自宅で電気を利用する際に、オフピーク時に車両に充電をしておき、電気料金が高い時間や大量に利用されているピーク時間には車両からの電力を利用することで、電気代の削減だけでなく、電力ひっ迫を防ぐことができます。これはEVの新しい役割の1つであることから当サイトでもV2H対応の車両であるなら、必須の装備として強くお勧めしているところです。
このV2Hに対しては、今年度補助金では個人、法人の両方で補助金が利用できるようになっていましたが、工事業者や販売業者などから、個人への補助はなくなり、法人や公共団体への補助だけになってしまうのではないかと言う噂もたっていました。しかしながら、本年度の補助事業がスタートしてみれば、車両導入に対する補助金同様に、個人からの受注状況が非常に多く、個人宅設置が普及していく兆候が見られています。電気自動車は災害時などに電気を運び、インフラが機能しなくなった被災地へ電気を運ぶことが可能です。この時、一般家庭でもV2Hが設置されていれば、これら車両から直接電気を受け取ることができます。すでに地方自治体でも、これら車両を大量保有し災害時に備えているところもあり、今後、電気を運搬するという役割もEVが持てることになります。この補助金については、概算値になりますが、本体と設置工事合わせて120万円程度の設置費用に対して、70万円程度の補助を受けられ、また地方自治体からもV2Hに対して補助が受けられる場合もあります。(※工事内容により、設置費用やその補助率は変動しますのであくまで目安と考えてください。)
>>【V2H】補助金を使って電気自動車の充電設備をお得に設置
軽EVの登場で受注が増えたEV
CEV補助金は1車両に対して出される補助金額が最大で95万円と高額であり、かつ受益者が直接利益を感じることから人気を集めています。令和5年度の要求額が増額されている事を見ても、国民からの要求の声が多いことが分かります。実際多くのバックオーダーを抱えている電気自動車(EV)は殆どのメーカーが来年(2023年)以降の納車になってしまっている現状もあり、人気のEVについては2023年4月以降の納車や、もはや受注停止で全く未定となっているものもあります。また国産のEVについてはV2H対応のモノが殆どであるため、V2Hのバックオーダーも多くなり、設置工事は来年以降の見通しになっています。
これら大量受注のきっかけとなったのも、このCEV補助金によるところが大きく、最大95万円、軽自動車EVでも55万円という高額な補助が受けられることを考えると、それをあてにしたくなるのは分かります。今回の発表により、10月末で枯渇すると言われた補助金が補正予算や来年度予算としても設定されるような期待に繋がり、補助金終了後の納車の人にとっては朗報となっているに違いありません。
補正予算発表までの11月納車の方はご注意!
一方で、10月末から11月末くらいまでの間に納車される人は、先にも述べたように新車登録について気をつけなければなりません。国産ディーラーや海外勢でも国内に多くの拠点を持つメーカーのEVについてはその車両の登録日についての相談が可能かもしれませんが、テスラなどオンラインで注文する車両などについては、車両登録に対する融通が利かず、問答無用で登録されてしまいます。つまり、今年度予算が終了してから、次の補正予算が発表される11月末~12月初旬にかけての納車の方は、空白の期間に当たり、補助金を受けられない可能性もあります。
補助金をあてにするなら、ディーラーの担当者とよく話し合っておく必要があります。
2050年のカーボンニュートラル達成に向けた政策
これらの背景から、来年度CEV補助金について増額の要求に繋がっているようです。政府としてもこれだけ人気を集めている政策をやめるわけにはいかないでしょう。補助金を受ける上でユーザーが忘れてはいけないのは、国がここまで1人に対して多くの補助金を出しているのには理由があるという事です。EVの普及が進めば、CO2削減だけでなく、市中からVOxやNOxなどの有害排気ガスも大幅に削減することができ、政府が掲げる「グリーン成長戦略」における2050年のカーボンニュートラルに近づくことになります。
海外勢が輸入車として日本で販売を行っている車両などについては、その生産ラインから電池のリサイクルまでの工程で、既にカーボンニュートラルを達成している工場もあり、日本のメーカーも今から10年後、遅くとも2050年までに生産ラインのカーボンニュートラルを目指すとしています。つまりEVが普及していく事により、市中から大幅に削減されるCO2が工場に固定され、その工場ではCO2のネットゼロ化が進むという事になります。
政策の効果が最も期待できるのは「人の意識の変化」
そして、なにより、EVを手にしたユーザーは今まで「燃費」を気にしていたように、今後は「電力」について考える大きなきっかけになります。現在日本国内の電力事情はエネルギーを殆ど輸入に依存しているため、不安定な状況にあると言えます。燃料調整費も高騰し、電気代が高騰しているにも関わらず、自宅の電気代がどのような契約で、1kWあたり何円の契約なのかと聞かれても答えられる人は非常に少ないと感じます。今後EVを手にした人は、EVを上手に運用するためには、自宅の電気料金や電気の使用量を把握しておく必要があります。
このように、補助金によりEVを手にすることにより、温室効果ガス削減はもちろんの事、ユーザーが電力の活用について考え、自身の利益のためにも効率的な利用を考えていくという事が実はこの補助金の最も重要な部分だと思います。ここから先、2050年のカーボンニュートラルに向けては国民一丸となって取り組まないと到底達成できません。電気自動車は電力を大量に消費するから更にひっ迫を招くという考え方は大きな間違えで、V2H対応のEVでは電力をコントロールできるツールを手に入れることにもなります。
何より大事な意識改革ができるCEV補助金は非常に効果的な補助金であるとも言えます。充実した内容によって今後のEV普及の後押しになることに期待したいと思います。
関連リンク
- 令和5年度資源・エネルギー関係概算要求の概要(経産省)
- 令和5年度経済産業政策の重点、概算要求・税制改正要望について(経産省)
- 一社)次世代自動車振興センター
- 【悲報】CEV補助金間に合いませんでした・・・
- 【V2H】ご相談・お見積り・シミュレーション無料