AppleのWWDCで発表された次世代CarPlay!
Appleが毎年6月上旬に開催しているデベロッパー向けイベント「WWDC(WorldWide Developers Conference)」が今年もオンラインで開催されました。2019年までのWWDCは毎年カリフォルニア州クパチーノにあるApple本社で行われていましたが、2020年からはCOVID-19の影響を受けて、すべてオンラインで開催されるようになりました。これにより世界中の人が参加できるイベントになり、さらなるAppleの成長にもつながっています。
毎年様々な新製品・新技術が発表される中、CarPlayに割かれる時間はあまりありませんでしたが、近年のEVの普及やAppleが取り組む「Apple Car」などへの準備か、今年はいつもより長い時間次世代のCarPlayについて紹介がありました。
多くの車に搭載され始めたApple CarPlay
日本市場でも新しい自動車のカーナビは殆どがApple Carplay とAndroid Autoに対応し、もはやインフォテイメントシステムの中核を担っているものまであります。米国市場の98%の新車自動車にApple CarPlayが搭載されていて、もはや不可欠な機能にもなっています。iPhoneのUI(ユーザーインターフェース)に慣れた人にとってはとても操作がしやすく、普段使っているアプリを車の中で使える事で、移動の楽しみをサポートします。
自動車のすべての計器と連動しコントロール
Appleは既にいくつかの自動車メーカーと協業しながらその可能性を研究しています。今回発表したiOS 16の機能として、より進化したApple CarPlay のイメージが発表されました。
自動車の電動化が進む中、インフォテイメントシステムも進化し、計器類もデジタル表示になるものも増え、オリジナルのモニタサイズのものが増えています。Appleはこれら自動車に搭載された様々な計器やセンサー類と連携し、どんなサイズのモニタにも対応していくとしています。現在では遅延が発生しているGPSでの速度表示も、車両に搭載された機器やバッテリーなどが直接通信されリアルタイムで表示されるようになります。
これは、まるでCarPlayが接続された車が独自で持っているインフォテイメントシステムのように振る舞い、Apple Watchのウォッチフェイスのように、自分好みに全ての表示類をカスタムすることもできます。自動車のインフォテイメントシステムとiOSで利用しているアプリケーションが融合し、車の中で新しいユーザー体験を創出します。
これらに対応した車種については2023年の後半に発表されます。すでに多くの自動車メーカーが新しいApple CarPlayとの連動を待ちわびているという事です。
インフォテイメントシステムをAppleが担う
すでにVolvoが発売したC40 RechargeというEVはGoogleネイティブになっていて、そのインフォテイメントシステムの中核をCarplayでもAndroid Autoでもなく、Googleのシステムに任せています。これと同様に次世代のApple Carplayは、車内のインフォテイメントシステムの全てを担おうとしています。
これにより、自動車メーカーは自社でインフォテイメントシステムの開発を担う必要がなくなり、EVとしての走りの性能や電力の有効活用、バッテリの開発などに注力できるという事になります。
自動車業界の根底を覆す通信の共通化
様々な車種に対応していくという事は、自動車メーカーが独自に用意しているCAN通信などを共通化し通信を行う、いわゆる車両情報の通信プロトコルの標準化が必要になってくるという事です。通常このCAN通信は自動車メーカー毎にかなり独自の方言のように言葉が違ってるため、ある意味この通信を解読するか、メーカーなどから情報開示してもらわないと自動車のコアな情報にたどりつけません。
これは自動車を制御する情報を公開することにもなるため、日本のメーカーは好きではなさそうですが、海外はこのような標準化は進む傾向にあり、この標準化が進むと、自動運転なども、それぞれの車両だけで気を付けるのではなく、お互いの相互間通信でも未然に事故を防ぐなどの先進的な安全機能にもつながっていきます。
CarPlayが自動車版Chromeになるか?
コンピューターを使っている人ならだれでも使っているGoogle Chromeを思い出してください。従来パソコンは主にWindowsかAppleのMacOSのどちらかを使っている人が殆どです。それぞれ異なるアプリケーションなどもあったのですが、クラウド化が進みブラウザ上で動くアプリケーションが多くなると、もはやWindowsやMacOSの使い方などプラットフォームがOSでなくなり、そのうえで動いているGoogle ChromeがOSのようにふるまいます。
自動車が独自に搭載しているインフォテイメントシステムは意味がなくなり、ChromeOSのようにCarPlayが動くという事になりますが、共通仕様はもちろんGoogleのAndroidでも利用できるため、自動車上でこれらOS戦争が勃発するのかもしれません。
EV化と共通化で更に危うくなる日本の自動車メーカー
EV化で後れを取っていると言われている日本メーカーですが、CarPlayのこの発表は更に追い打ちをかけることになる恐れもあります。もしCAN通信などの共通化が行われることになれば、こういうのに乗り遅れるのが日本のメーカーです。なぜか独自でやろうとし、ガラパゴスを目指します。EVでは急速充電ポートのCHAdeMO規格がそろそろ危うくなってきています。EVになればエンジンがなくなるため、走りの性能はモーターとそれを制御するソフトウェアの性能になってきます。
今はインフォテイメントシステム部分だけだとしても、AppleやGoogleが走りの制御まで入ってくれば、もはやメーカーは車体というプラットフォームを提供するだけになってきます。こうなるとパソコンと同じ考え方になってきて、自動車自体は安く生産ができる海外で生産し、ソフトウェアをインストールしてメーカーは販売するのみになります。独自に付加価値をつけるものがなくなってくると、パソコンや携帯電話の世界では日本メーカーは撤退していきました。
こうなるともう一度ガソリン車?
このころには、もう一度エンジン音やその挙動を聞きたくなるかもしれません。自動車メーカーの再編が起こり、クリーンなガソリンを使ったエンジン音のあるレトロな車を作るベンチャー企業が、(昔日本で沢山バイクメーカーが誕生したように)多数立ち上がり、高級車として君臨するかもしれません。
いずれにせよ、今回のApple Carplayの発表はそんな未来までを予感させるような衝撃的な発表だったといえます。Nissanの名前が挙がっていましたが、日本の自動車メーカーの車両が対応車種に上がってくるのかが楽しみです。