2050に向けた国産メーカーの発表内容
2020年10月日本政府は菅政権下において、2050年のカーボンニュートラル(脱炭素)を宣言しました。グリーン成長戦略において、もっとも身近な自動車の改革はこのグリーン成長戦略の中でも注目されるものとなっていて、各自動車メーカーがどのような対応を取るかに注目が集まっていました。
以降、国内の自動車メーカーにより様々な発表が行われていますので、2022年5月末までに発表されている脱炭素に向けた内容をまとめてみました。
トヨタ(TOYOTA)
トヨタ自動車は2030年までに電動化に向けて350億米ドル(およそ4.8兆円)を投入し、2030年までに350万台のBEVの販売を行い、レクサスと高級ブランドで30種類のBEVをリリースすると発表しました。
トヨタはBEVに消極的だと言われてきた中、2021年12月に行われた発表会において、どのメーカーにも先駆けて16車種に及ぶ実車を公開し、その取り組みの現実性をアピールしました。2022年から販売はしないまでもリース契約やカーシェアで実用化された「bZ4X」を皮切りに、レクサスブランドの全てのラインナップをBEVにしていくなど、積極的な姿勢を示しています。
また、その一方で、CMなどでもおなじみのように社長自らトヨタとして自動車は全ての分野において本気であるとして、BEVだけでなく脱炭素への新しい選択をし提供できる唯一無二の会社として挑戦を続けていくとしています。
日産(Nissan)
日産は長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表し、自動車の電動化を中心とした移動と社会の可能性を広げるワクワクする車と技術を提供していくとしています。具体的に今後5年間でおよそ2兆円の投資を行って電動化を加速し、2030年までに23車種の新型電動車(内完全電気自動車は15車種)を市場に投入し、新車販売の50%以上を電動車にするとしています。
すでに発売を開始した日産アリアの内装を見ても新しいモビリティへの挑戦の片鱗を見せるデザインになっています。日産は既に自動車に「家庭用蓄電池」という新しい役割を与えています。更なるモビリティの可能性を追求したコンセプトカーなどのイメージも公開し、今後リリースされるモビリティへの期待を沸かせています。
更に企業として、2050年までに自動車のライフサイクル全過程を通じて完全な脱炭素を達成する事も発表しており、今後建設される新しい生産工場やバッテリー工場、またそれら取引先についてもすべてのサイクルでの脱炭素を目標に掲げています。
ホンダ(HONDA)
ホンダは政府の脱炭素への発表直後、2040年までにBEVとFCEVの割合をすべての市場で100%にするとし、具体的には2030年までにグローバルで30車種のEVを展開し、その年間生産量を200万台以上にするとしています。投資額は今後10年でおよそ8兆円とし、電動車の要でもあるバッテリーについては全個体電池を2024年春に430億円を投資して実証ラインを用意することで実用化に向けてスタートするとしています。
2024年前半には商用の軽EVを100万円台で投入し、その後個人向け軽EV、SUVのEVなどのリリースも予定されていて、EVのハードウェアとソフトウェアを組み合わせた新型EVプラットフォーム「Honda e:アーキテクチャ」を採用した車種を2026年から投入予定です。
ホンダは、2022年3月にソニーとの協業による新しいモビリティの共同開発を視野に入れた取り組みも発表しており、この合弁会社は2022年6月に設立されました。
スバル(SUBARU)
スバルの中長期的な目標は2018年に発表された「STEP」という計画をベースに勧められていて、2030年までにBEVあるいはHEVが世界市場における販売台数の40%を占めるとし、2030年代後半には100%EV化を行うとしています。
CO2排出量削減目標としては、2050年までにWell to Wheel(油田から自動車の完成・走行まで)のトータルで90%以上削減することでカーボンニュートラルへ寄与することを目標とし、電動化時代の中でもSUBARUらしさを強化しながらこの目標を加速させていくという事です。
すでにトヨタと共同開発を行ってリリースしたBEV「SOLTERRA」を皮切りに、自然を大切にし、実用性の高いAWDモデル1台で何でもこなす自動車の開発を目指すとしています。独自の安全運転支援機能である「アイサイト」なども搭載され安全で長く乗れる車の開発により他社との違いを追い求めていくとしています。
三菱(MITSUBISHI)
三菱自動車は、2050年のCO2排出ネットゼロ社会の実現に貢献するため、まずは2030年までにBEVあるいはHEVが世界市場における販売台数の40%を占めることを目標とし、PHEV(プラグインハイブリッド)やICE(内燃機関車)の燃費開発などにも注力していくという事です。
既に軽EVとしてi-MEVや商用ワゴンなどもリリースし、直近で発売されたekクロスEVなど、日本人に人気の軽自動車カテゴリにおいて、実績をもつ三菱は、ルノー・日産・三菱のアライアンスで電動化に向け230億ユーロ(3.2兆円)の投資を行い、アライアンス全体で35の新型EVモデル展開を行う事に寄与していくとしています。
マツダ(MAZDA)
マツダも早々とEVをリリースした国産メーカーの1つで、人気のSUVシリーズで特徴的なドアを持つMX-30Eを販売しています。これに加え2025年までにBEVを更に3車種リリースし、PHEVを5車種、HEVを5車種開発することを発表しています。ハイブリッド車を含め、EVは25%を占める割合で2030年までに100%電動化するとしています。
スズキ(SUZUKI)
スズキも政府のグリーン成長戦略の発表に反応し、「スズキ環境ビジョン2050」を発表。今後の会社の在り方や取り組みとして具体的な「マイルストーン2030」を策定し、2030年までにWell to Wheelで40%のCO2を削減し、2050年までに2010年比で90%削減を目指すとしています。
その中で、2025年までにHEV、PHEVの小型乗用車を開発し電動自動車市場に参入するとしています。
世界中で進む電動化
世界では、Tesla、Lucid やXpeng、NIOのようなEVスタートアップが市場を席巻し、従来の自動車メーカーを差し置いて、上位に君臨しています。日本はハイブリッド車が販売の中心となっていて、販売する車種も少ないことから現状ではEV化はまだまだ進んでいないといえます。
しかしながら、先日、日産と三菱が発表したサクラ、ekクロスEVのように、日本で人気カテゴリとなっている軽自動車がEV化していく事によって、いよいよ日本国内でもEVの認知度が上がり、また車以外の付加価値などに消費者が気付いていく事で、国内での普及も加速していくと予想されます。
今後、国産自動車メーカーがどのように電動化が進む海外自動車メーカーと渡り合っていくか、脱炭素に向けた動向と共に注目の産業であることには間違いありません。