木曜日 , 11月 21 2024

ざっくり分かる電気自動車の電気系統の仕組み

電気自動車の電源はどうなっているのか?

電気自動車(EV)は完全に電気だけで走るため、クリーンエネルギービークル(CEV:Clean Energy Vehicle)とも呼ばれています。電気というと、ガソリン車などのように、燃料を爆発させ、そのエネルギーで走る内燃機関車と比較するとパワーがなさそうにイメージする人も多いようですが、とんでもございません。もはやガソリン車を凌ぐパワーを生み出し、乗用車でもすさまじい加速力を生み出します。

Tesla supercharger スーパーチャージャー ELECTRICLIFE エレクトリックライフ
Teslaの急速充電ネットワーク「SuperCharger」は最大250kWの出力

その原動力となる「電気」の仕組みがどのようになっているのかを関連するパーツと共に見ていきたいと思います。なるべく難しい説明は無しで、代表的な機能を中心に電気がどのように使われているかを解説します。

電源は電池(バッテリー)

EVの電源は電池(バッテリー)という事になります。最近のEVは20kWh~80kWhと大容量の電池を搭載しています。EVに採用されているバッテリーはリチウムイオン電池(LiB)が主流になっていて、そのリチウムイオン電池についても種類がいくつかります。従来は三元系(LiNiMnCoO2)と呼ばれるニッケル、マンガン、コバルトを正極に使用した主流でしたが、現在ではリン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4)通称LFPバッテリが多く使われるようになってきました。

現在の電気自動車はシステム電圧が400V~800Vのものが主流であり、1つのバッテリセルが3.7Vの乾電池ほどの大きさのものを沢山敷き詰めてこの電圧を作っています。400Vが一般的ですが、ポルシェタイカンなど800VのEVも登場してきていて、これらは充電スピードが非常に速くなるため、より高電圧の電気系統が今後主流になっていくでしょう。

BMS(バッテリマネジメントシステム)

この高電圧のバッテリの充放電や温度管理などを行っているのがBMS(バッテリマネジメントシステム)です。バッテリーの状態を監視し、適切な充電、放電、および保護を行います。これには、バッテリーの電圧、電流、温度、および容量などのパラメータを監視するためのセンサーが含まれます。BMSは、バッテリーの寿命を延ばし、効率を向上させ、安全性を確保するために重要な役割を果たします。

低電圧と高電圧の電気系統があることを理解しよう!

EVは全てを電力によって稼働させていますが、走行用の大電力のバッテリーの他に、従来の内燃機関車同様に小さなバッテリも搭載しています。このバッテリは低電圧バッテリとして、12V ~24Vの電圧で自動車の電気系統に電力を供給していて、内燃機関車などではエンジンを回して発電した電力で充電を行っています。主にはライトやパワーウインド、冷暖房、オーディオやナビなどの電気製品に電力を供給しています。

ELECTRICLIFE 電気自動車の電源系統 エレクトリックライフ
図1 一般的な電気自動車(EV)の電気系統の概略図

一方でEVの場合は、大電力の高電圧な電池を搭載していますので、ここから高電圧なDC(直流)の電気を低電圧のDCに電圧を下げて、電力を供給しています。基本的には、この2つの系統はEVがONになっている時に連携して電力を供給しています。つまり、低電圧部分については従来の内燃機関車と同様になっていて、別の回路で動いています。

普通充電と急速充電

自宅では普通充電を行いますが、自宅に設置したEV用の充電器は殆どが200Vとなっているはずです。ここから流れる電流量によって充電スピードが変わってきます。自宅の電力量の契約に合わせて流す電流量を決めます。例えば電力量3kWのスピードで充電したいなら200V×15A(アンペア:電流量)=3,000W=3kWとなるので、15A を流すように設定しておきます。

しかし、EV側で普通充電に制限がかかっている場合があります。日産リーフなどは、3kWまでと6kWまでの2種類があり、古いリーフでは3kWまでしか充電スピードを許容できなくなっています。電流値が大きくなると充電回路や車両とコネクタとの接点にも大きな負荷がかかります。そのため力率改善回路(PFC:Power Factor Corection)によって力率を高めて高い電流を受けられるようにしています。そして小型化のためにインターリーブPFCとして2並列の回路を作り、電流量を小さくすることで回路に使う部品を小型のものにしています。

自宅の普通充電は電流値をなるべく抑える

車種によって普通充電でも9.6kWまで許容するものもあるため、48Aもの大電流でも許容できるように車両が設計されています。しかしこれだけの電流を家庭で流すのは自宅への負荷も高くなるなることになります。もし50Aの契約だったとしたら、自宅の電力殆どを使ってしまう事になります。夜の時間を使ってゆっくり充電しても良いわけですから、電流値は多くても30A程度までに抑えておくのが適当です。

普通充電は車載充電器でコンバート

普通充電は、自宅のAC(交流)200Vで充電するのですが、車両側は400VのDC(直流)ですから、AC-DCコンバートし、電圧も400Vへ引き上げないといけません。それを車載充電器で行っています。車載ですから車側に搭載されるためこの充電器はあまり大きくできません。通常充電器で200Vから400Vへの昇圧などを行うにはそれなりの大きなコイルが必要になりますが、回路をコンパクトにするために、

ELECTRICLIFE 電気自動車の電源系統 エレクトリックライフ
図2 車載充電器部分の拡大図

急速充電器については、すでに400VのDC(直流)になっているため、そのままDCで大電流を送り込みます。400Vの電圧で100Aの電流を流せば、400V×100A=40,000Wですので、40kWのスピードで充電していることになります。

EVのエアコンの効きが良い理由は高電圧にあり

一方で内燃機関車と違い、エアコンについては、高電圧から電力を供給しているため、夏場にクーラーをつけてもあっという間に冷たい空気が噴出し、冬もあっという間に暖かい空気が出てきます。家庭の電力は100Vですが、居間などの広い場所に設置するエアコンについては200Vのモノを設置している人も多いはずです。それだけパワーが必要だからですが、自宅の居間に比べたら狭い車内ですから一瞬で冷えたり暖かくなるのも想像がつくのではないでしょうか。EVは400Vなどの高電圧ラインからエアコンへの電力を供給しています。

NISSAN LEAF 暖気が早いEV ELECTRICLIFE エレクトリックライフ

低電圧回路だけを動かすとEVでもバッテリがあがる!

このように、電気自動車の電気系統は大きく分けて高電圧と低電圧の回路に分かれているわけですが、車両の電源がONになっている時は、低電圧の小さな容量のバッテリの電圧が落ちてくると、高電圧のバッテリから電力が供給され充電されますが、車両の電源がOFFの場合は独立したものになってしまいます。そのため、電源OFF時にヘッドライトをつけっぱなしにすることができるため、この状態だと低電圧バッテリが上がってしまいます。低電圧バッテリが上がってしまうと、インフォテイメントシステム(ナビやオーディオなど含む)が起動しないため、車両の電源をONにできなくなります。

日産リーフのバッテリがあがってしまった!

テスラなどのように、駐車中も基本的には電源をOFFにしないような車両ではこのような事が起こりません。今後は停車中にも高電圧バッテリと低電圧バッテリの状況はBMSなどにより制御されるものが一般的になってくるでしょう。

※図1中のECUはElectronic Control Unit。ガソリン車などではエンジンが搭載されているため、Engine Control Unitとなっています。

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