「ハチマル」と呼ばれた時代、日本のスポーツカーシーンを牽引し、今なお多くのファンを魅了してやまない日産スカイラインGT-R。その中でも、最強の称号をほしいままにしたR32型が、最新の電動技術を身にまとい、新たな時代へと足を踏み出そうとしています。日産自動車が公開したR32型スカイラインGT-RのEVコンバージョンモデルに関する取り組みは、単なる懐古主義ではなく、未来の電動車開発を見据えた革新的なプロジェクトとして注目を集めています。
あの頃の興奮を再び。R32型スカイラインGT-Rの基本スペック
EVモデルの魅力に迫る前に、改めてR32型スカイラインGT-R(以下、R32 GT-R)がどのような車だったのか振り返ってみましょう。1989年に登場したR32 GT-Rは、当時グループAレースでの勝利を至上命題として開発されました。そのために搭載された数々の先進技術は、多くのファンを魅了しました。
- エンジン: RB26DETT型 2.6L 直列6気筒DOHCツインターボ
- 自主規制値ながら280馬力、36.0kgmの強大なトルクを誇りました。そのポテンシャルは計り知れず、チューニングベースとしても絶大な人気を博しました。
- 駆動方式: アテーサE-TS(電子制御トルクスプリット4WDシステム)
- 路面状況や走行状態に応じて最適なトルク配分を行うこのシステムは、圧倒的なトラクション性能と安定性を実現し、「GT-Rは別格」と言わしめる所以となりました。
- サスペンション: 前後マルチリンクサスペンション
- 優れたロードホールディング性能と快適性を両立し、サーキット走行からストリートまで幅広いシーンで高いパフォーマンスを発揮しました。
- その他: 軽量かつ高剛性なボディ、強力なブレーキシステムなど、当時の最先端技術が惜しみなく投入されました。
これらの基本スペックが織りなすR32 GT-Rのドライビングフィールは、まさに「意のままに操る」という言葉がぴったりでした。鋭い加速、吸い付くようなコーナリング、そして安定した制動性能は、多くのドライバーを虜にしたのです。
伝説のドライビング体験をEVで再現する挑戦
日産が今回取り組むEVコンバージョンモデルの開発で最も重視しているのは、R32 GT-Rが持っていた「ワクワクするドライビング体験」の再現です。単にエンジンをモーターに置き換えるだけでなく、オリジナルモデルの持つ独特のフィーリングをどのようにEVで表現するのか。それは非常に困難な挑戦と言えるでしょう。
日産はこの目標を達成するために、R32 GT-Rの魅力を徹底的に分析し、その要素をEVの技術でどのように実現できるのか、様々な検討を重ねています。例えば、
- 加速感: RB26DETTエンジンのターボラグを感じさせない鋭い加速を、モーターの瞬発的なトルクでどのように再現するのか。
- ハンドリング: アテーサE-TSがもたらした卓越したトラクション性能と、前後マルチリンクサスペンションによるしなやかな動きを、最新の電動化技術と車両制御によってどのように実現するのか。
- サウンド: RB26DETT独特のエキゾーストノートは、多くのファンにとって忘れられない魅力の一つです。EVでは全く異なるサウンドになりますが、それに代わる、あるいは新たなドライビングプレジャーを演出する要素をどのように作り出すのか。
これらの課題に対し、日産は長年培ってきた電動化技術と、R32 GT-Rに対する深い理解をもって取り組んでいます。その10個のポイントをまとめると以下膿瘍になります。
- R32EVは車に情熱を持った日産の勇士たちによって始めたプロジェクト
- 160kWの出力と340Nmのトルクを生み出す電動モーターが前後に2基搭載
- LEAF NISMO RC02と同じ構成のバッテリーがR32EVに搭載される
- 1989年の16インチアルミホイールをオマージュした18インチホイールを装着
- R32 GT-Rオリジナルのメーターとディスプレイデザインを液晶メーターで再現
- パドルでシフトチェンジした時、マニュアルシフトのようなフィーリング
- 充電ポートは給油口の中に設置
- R35 GT-Rの大径ローターと高性能キャリパーが高いストッピングパワーを発揮
- NISMOスポーツサスペンションキットによって優れたハンドリングを実現
- R32 GT-R開発担当レジェンドテストドライバー加藤氏によるアドバイスを反映
未来の電動車開発への投資
このR32 GT-RのEVコンバージョンモデルの開発は、単に過去の名車を蘇らせるというロマンに留まりません。日産はこのプロジェクトを通じて得られる知見や技術を、今後の電動車開発に活かすことを明確に示しています。
例えば、R32 GT-Rの運動性能をEVで再現するための車両制御技術や、ドライバーが「楽しい」と感じる電動フィールの創出方法などは、今後の日産の電動車ラインナップにフィードバックされる可能性があります。また、往年の名車の魅力を再解釈し、新たな価値を与えるこのような取り組みは、自動車業界における新たな潮流を生み出すかもしれません。
より快適なドライビング体験の実現
プロジェクトでは、快適性を向上させるためのアイテムもアップグレードされていることに触れられています。これは、単に速さやスポーティネスを追求するだけでなく、現代のニーズに合わせた快適性もEVモデルには求められていることを示唆しています。具体的な内容は明らかにされていませんが、例えば、静かで振動の少ないEVならではの快適性や、最新のインフォテインメントシステムの搭載などが考えられます。
日産の過去から未来に貢献するプロジェクト
日産自動車によるR32型スカイラインGT-RのEVコンバージョンモデルの開発は、過去のレジェンドに敬意を払いながら、未来の自動車産業を見据えた革新的な試みと言えるでしょう。R32 GT-Rが持つユニークな魅力と、最新の電動化技術がどのように融合するのか。そして、このプロジェクトが今後の日産の電動車開発にどのような影響を与えるのか。今後の展開から目が離せません。
ここのところ経営の問題であまり芳しく無い話題で注目を浴びてしまった日産自動車にとって、この取り組みは、往年のGT-Rファンだけでなく、最新の電動車技術に興味を持つ人々にとっても、技術力の高さによるイメージ回復として非常に魅力的なニュースと言えるでしょう。
現時点ではR32EVコンバージョンモデルやコンバージョンキットを販売する計画は在りませんが、今後の日産の開発に大きな影響を与えそうです。
※より詳しくは以下のリンク、日産の公式サイトでご覧ください。