日産リーフが採用してきたワンペダルドライブ
日産がどこよりも先駆けて2017年にリーフに導入し、多くのEVファンに支持されていた「完全停止までできるワンペダルドライブ(e-Pedal)」が、新型車(アリアやノートe-POWERのマイナーチェンジ後など)から「e-Pedal Step(完全停止はせず、クリープ走行が残る仕様)」へと変更されたことは、自動車業界でも大きな議論となりました。

現在発売されている国産メーカーの電気自動車において「アクセルペダルだけで完全停止・保持まで行う」機能は無くなりました。海外勢でもBYDなどはワンペダルを採用していません。
なぜこのような変化が起きたのか、主な理由は「安全性の確保」と「操作の違和感解消」の2点に集約されます。
1. 安全上の懸念(ペダル踏み間違い事故の防止)
これが最大の理由と言われています。
- 「とっさの時」の足の位置: ワンペダル走行中は、減速・停止しようとする時も右足は「アクセルペダルの上」にあります(踏む力を緩めている状態)。
- パニック時の誤操作: もし急な飛び出しなどでパニックになった際、人間は本能的に「足を突っ張る(強く踏み込む)」動作をしがちです。通常の運転なら足はブレーキペダルにあるため問題ありませんが、ワンペダル走行中はアクセルを強く踏み込んでしまい、急発進事故につながるリスクが指摘されました。
日本のメーカーは安全思想に対して非常に保守的であり、「停止には必ずブレーキペダルを踏み替えさせる」ことで、誤発進リスクを物理的に遮断する方向へ舵を切りました。
2. 駐車時・低速時の操作性(クリープ現象の必要性)
完全なワンペダルドライブには、極低速域(車庫入れや縦列駐車など)でのコントロールが難しいという課題がありました。
- ギクシャクする動き: アクセルのみで微調整しようとすると、ON/OFFの挙動が敏感になりすぎて、カクカクとした動きになりがちです。
- クリープの利点: ガソリン車のオートマチック車のように、ブレーキを緩めるだけでゆっくり進む「クリープ現象」がある方が、数センチ単位の微調整がスムーズに行えます。
日産の新しい「e-Pedal Step」がクリープを残したのは、この「車庫入れのしやすさ」を優先したためです。これは確かにユーザーから声が上がっていたようです。
3. 同乗者の「車酔い」防止
ワンペダルドライブは、ドライバーが慣れていないと「加速→急減速」を繰り返す運転になりやすく、同乗者の頭が前後に揺さぶられ、車酔いを誘発するという声が多くありました。 減速G(重力加速度)をマイルドにし、最後はブレーキで滑らかに止まる仕様にすることで、快適性を向上させる狙いがあります。
4. ガソリン車からの乗り換え障壁を下げる
EVやe-POWER車を普及させる段階において、「今までの車と操作感が違いすぎる」ことはデメリットになります。 多くのドライバーが慣れ親しんだ「アクセルで進み、ブレーキで止まる」という基本操作に近づけることで、EVへの移行をスムーズにするというマーケティング的な判断も働いています。
実際はどうなのか?
上記1~4を順番に見ていきましょう。まず1の踏み間違いは、正直関係ないと言えます。そもそも、ふみ間違いの事故は高齢者の多く発生していますが、ワンペダル関係なく発生しています。むしろワンペダルはアクセルを離すと直ぐに車が止まってしまいます。坂道の交差点などでもブレーキを踏まずに待つことができます。踏みかえが無い分長距離運転でも疲れ方が全然違ってきます。
ワンペダルだからといってブレーキがついていないわけではありません。前の車が急ブレーキなどを踏んだ時には、ブレーキペダルに踏みかえて急ブレーキを行います。普段は殆どブレーキを踏みません。
2のクリープ現象についてですが、これこそふみ間違いが起こる最大の原因です。自分が操作をしていないのに勝手に車が動いているというのは感性に反するものです。踏んだら踏んだだけしっかり進み、アクセルを離せば止まる。低速ならそれこそすぐ停車します。

3については、これもワンペダル関係ありません。クリープが発生しているからと言って滑らかに運転できるわけではありません。ドライバーの能力差によるものです。それこそ「加速→急減速」が発生する人は、ドライバーとしての資格すら疑われます。
4について、一理ありますが、これはテスラのように切り替えで選べるようにしても良いのではないでしょうか。
ワンペダルドライブに初めて乗って数分経過すると、「クリープ現象に長い時間かけて教習所などで慣れてきただけだと」と気づくはずです。正直、勝手にすすむ怖さすら感じます。
ネガティブなマーケティングによる良い機能の終焉
日本のマーケティングはこのようにクレームなどネガティブな意見への対応が多いため、人をワクワクさせるような機能が生まれにくい傾向にあります。
これは、ポジティブな情報収集が非常に欠落している事にあります。基本的に満足している人や機能を上手に使いこなしている人は、あまり情報を出さない傾向にあり、良い情報は集まりにくいという傾向にあります。(サイレントマジョリティは普遍的な現象)
このネガティブなマーケティングのおかげでせっかくの「ワンペダルドライブ」は消えようとしています。
自社の安全性能を自ら否定した日産
本来であれば、ワンペダルの性能そのままで、安全性を強化するというのが本筋です。
しかし、日産は自社が開発したプロパイロットなどの運転支援機能でも快適なワンペダルドライブを守れないという「ワンペダルは危険」「自社のプロパイロットも未熟」という結果をさらけ出したことになります。
「危険ならリコールなんじゃないか?」
ならないのは、賛否があるという事。是非本筋を通して、日産にはさらなる進化を見せてほしいものです。残念ながら新型リーフは「e-Pedal Step」ワンペダルではありません。