火曜日 , 11月 11 2025

新型ハイラックス BEV徹底解説:59.2kWhバッテリーとマルチパスウェイ戦略の真価

新型ハイラックス、BEVモデルを世界初披露:マルチパスウェイ戦略を加速

2025年11月10日、トヨタ自動車はタイ・バンコクで開催された新車発表イベントにて、新型「ハイラックス」を世界初披露しました。特に注目を集めているのが、新たにラインアップに加わったBEV(バッテリー式電気自動車)モデルです。

このBEVモデルの導入は、トヨタがカーボンニュートラル社会の実現に向けて推進する「マルチパスウェイ」の取り組みを一層加速させるものです。この戦略は、各国・各地域のエネルギー事情や顧客ニーズに応じて、電動車の選択肢を用意するという考え方に基づいています。

新型ハイラックスでは、今回発表されたディーゼルモデル、BEVモデルに加え、将来的にFCEV(燃料電池車)モデルの開発も進められており、FCEVモデルは欧州やオセアニアに2028年以降の投入が予定されています。BEVモデルは、アジア地域で2026年以降順次発売される予定です。

BEVモデルの主要スペック:ビジネスユースを支える力強い性能

今回公開されたハイラックスBEVモデル(プロトタイプ、タイ仕様)は、伝統的なハイラックスの品質、耐久性、信頼性(QDR)を引き継ぎながら、電動化による新たな価値を提供します。

主要諸元(BEVモデル・プロトタイプ)詳細
バッテリー容量 (総電力量)59.2 kWh
航続距離300 km以上 (NEDCモード値、開発目標値)
駆動方式4WD
システム最高出力144 kW (トヨタ自動車算定値)

【注目のポイント】59.2 kWhバッテリーはビジネスユースに十分か?

新型ハイラックス BEVモデルが採用するリチウムイオンバッテリーの総電力量は59.2 kWhです。一般的な乗用BEVの中には、さらに大容量のバッテリーを搭載するモデルも存在するため、この数値に物足りなさを感じるユーザーもいるかもしれません。

しかし、この容量設定は、ハイラックスが活躍するビジネスユースを中心に見据えた設計であると評価できます。

1. 実用的な航続距離の確保: 59.2 kWhのバッテリー容量とeAxleの高効率化により、航続距離は300 km以上(開発目標値)を実現しています。業務利用、特に建設現場や農場、地域内の配送といったデイリーユースを想定した場合、300 kmという走行可能距離は一日の移動を十分にカバーできる現実的な数値です。

2. 車両コストと重量の最適化: 業務用の車両として導入される場合、不必要に大容量のバッテリーを搭載することは、コスト増や車両重量の増加につながり、積載量や電費効率に影響を及ぼします。59.2 kWhという設定は、航続距離と実用性のバランスを最適化した結果と言えるでしょう。

つまり、新型ハイラックス BEVは、長距離ドライブよりも、タフで信頼できる日々の仕事のパートナーとしての役割を果たす上で、最適なパワーユニット構成を採用していると言えます。

高い走破性を実現する電動パワートレーン

新型ハイラックス BEVは、単に電動化しただけでなく、ハイラックスの伝統である優れた悪路走破性も進化させています。

高出力eAxleの採用: 前後に高出力タイプのeAxleが採用されており、システム最高出力は144 kWを発揮します。

進化した制御システム: この高出力と、進化を遂げた制御システムを組み合わせることにより、BEVならではの強力なトルクコントロールを活かし、優れた悪路走破性を実現しています。

バッテリーの配置: バッテリーパックは、フレーム幅を最大限に生かしつつ、車両の床下に収まるように搭載されています。これにより、車体剛性や低重心化に寄与しつつ、頑丈な構造を維持しています。

新型ハイラックスは、世界中の人々が探求し、働き、つながるための手段を提供し、暮らしを豊かにするという理念のもと、タフさとテクノロジーの融合を果たした一台となっています。

着実に公約を実現していくトヨタ

日本は2050年にカーボンニュートラルを達成する事を2020年10月に発表しています。その1年後の2021年12月にトヨタはバッテリーEV戦略についての発表を行い、当時の豊田章男社長が16台の車両の前で2030年までにグローバルで30種類のバッテリーEV(BEV)をリリースし、年間350万台のBEVを販売すると発表しました。そして、LEXUSは2030年までにフルラインナップでBEVを用意し、2035年までには100%EVにするとの事です。

この時に展示されたモック車両は、1つずつEVとして市場に着実にリリースされ、ハイラックスであろう車両もこの時、展示されていました。

2030年まであと5年。トヨタは予告通りBEVを1つの選択肢として世に広げていくか注目が集まります。2021年の段階でラインナップされていた車両で、クラウン、RAV4、FJクルーザー、カローラなどトヨタがもつ車両ラインナップでEV化されていないものがまだまだ多数あります。これらがどのタイミングでEV化されていくのか、楽しみです。

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About Electric Manager

大学時代に電子工学を専攻し、電気自動車やソーラーカーの研究を行う。 電気工事士の資格も持ち、自動車メーカーでの電気自動車関連の仕事や電力会社での電気工事、その後は充電スタンドV2Hの営業など弱電から強電まで広いエリアを専門としています。

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