金曜日 , 10月 3 2025

テスラが発表した次世代産業用蓄電システム「メガブロック (Mega Blok)」の全貌:電力危機を救う革新技術

ロサンゼルスで開催された「Las Megas」

テスラは2025年9月18日、The Boring Companyのトンネル内で、最新の製品発表イベント「Las Megas | Tesla Megablock Event」を開催しました。このイベントは、Mega PackとCybertruckによって電力が供給されるという、テスラらしい方法で行われました。

テスラは、持続可能なエネルギーによって支えられる「持続可能な豊かさ」に満ちた世界の構築を目指しています。電気自動車(EV)、充電、蓄電、ソーラー、そしてオートノミー(自動運転)は、別々のツールではなく、シームレスな単一のソリューションセットの一部であると信じており、エンジニアリング主導の企業として、製造の専門知識を活用し、手頃な価格で製品を大量生産することで、クリーンエネルギーと輸送の信頼性を高めています。

テスラは、ハードウェア、ソフトウェア、制御システム、サービスをすべて一箇所で提供しており、製品開発、エネルギープロジェクト、製造の全領域にわたるエンジニアを擁していることが、迅速な革新と反復を可能にしています。

迫りくるエネルギー需要の課題

テスラは2023年に「Master Plan Part 3」を発表し、現在利用可能な技術を用いて地球全体を持続可能なエネルギーで運営する方法を概説しました。化石燃料を排除し、完全に持続可能な経済を達成するためには、世界中で46テラワット時(46,000ギガワット時)の蓄電容量が必要であると試算しています。

現在、世界の電力需要は、電化、製造、そしてAIデータセンターの増加により、毎年3%増加すると予測されています。特にAIデータセンターは、2030年までに米国のエネルギー需要の最大10%を占めると見られており、これは2000年代初頭以来見られなかった負荷増加率です。

しかし、負荷が急速に増加しているのに対し、送電網(グリッド)の成長は追いついていません。米国のグリッドは伝統的に最大の需要時に対応するように構築されていますが、年間を通じてその容量をはるかに下回って稼働しており、米国内でのグリッドの利用率は約50%にとどまっているという推定もあります。つまり、グリッドインフラの50%がアイドル状態にあります。

バッテリーがグリッドを救う

バッテリーは、既存のグリッドインフラの利用率を高め、効率を向上させる理想的なソリューションです。例えば、データセンターのような新しい負荷により一時的にグリッド容量を超えるピークが発生した場合、従来であれば新しい発電所や変電所を設置する必要がありましたが、バッテリーを導入することで、そのピーク需要をサポートし、既存のインフラをより効率的に使用できます。

蓄電の必要性は現実のものであり、テスラはこの課題解決に向けて急ピッチで取り組んでいます。

これまでの実績: テスラは、これまで60カ国、2,100以上のプロジェクトで36ギガワット時(GWh)以上のMega Packを設置しています。

製造能力: 年間80 GWhを超える製造能力を持つまでに製造施設を拡大しました。

長期的な目標: 持続可能なエネルギー経済を支えるためには、世界は年間2.3 TWhの容量を必要としており、テスラはまだ始まりに過ぎないと考えています。

次世代製品「MegaBlock」の発表

増大するエネルギー需要と逼迫したグリッドインフラの課題に対応するため、テスラは、セキュアでスケーラブル、かつ回復力があり、プロジェクトの全範囲とライフタイムを考慮した完全統合型のソリューションが必要だと認識しました。

Mega Packの最新世代の開発にあたり、以下の3つの指針が重視されました。

1. シンプルさとスピード(Simplicity and Speed): 複雑さはリスクを生み、遅延を招くため、プロジェクトの初期段階で導入を容易にすること。

2. 柔軟なプラットフォーム(Flexible Platform): サプライチェーンの複雑さ、政策変更、進化する技術に対応できること。

3. 垂直統合(Vertical Integration)の活用: これまでのMega Pacの経験から学び、垂直統合の強みをさらに強化すること。

これらの指針のもと、テスラは次世代の産業用蓄電システム「MegaBlock (メガブロック)」を発表しました。これは単なる新しいコンテナではなく、ハードウェア、ソフトウェア、サービスがすべてテスラから提供されるプラグアンドプレイのプラットフォームとして設計されています。

Mega Blockの主な仕様と特徴

Mega Blockは、プレエンジニアリングされた中電圧ブロックであり、次世代の「Mega Pack 3」を統合しています。

特徴詳細
容量20 MWhのAC利用可能エネルギー(Mega Pac 3単体は5 MWh)
寿命25年
サイクル数10,000サイクル
往復効率業界トップの91%
アプリケーション最大8時間のアプリケーションに最適化
製造2026年後半にヒューストンで製造開始(年間50 GWhの製造能力)
動作温度範囲-40°Cから60°Cまで(アラスカからチリのアタカマ砂漠まで対応)

技術革新:Mega Pack 3と設置の効率化

1. プラグアンドプレイ設計 Mega Blockでは、変圧器とMega Packs間の地上ケーブル配線が、新しい柔軟なバスバーアセンブリを使用することで排除されました。これにより、プロジェクトのこの部分が「プラグアンドプレイ」になりました。

2. 質量とエネルギーの最適化 Mega Pack 3は、質量とエネルギーの両方で最適化されています。システムが破綻する主要因である「質量」を考慮し、86,000ポンド(約39トン)の28フィートのエンクロージャに5 MWhのAC利用可能エネルギーを収めることに成功しました。

3. 部品の統合と簡素化

熱管理: 新しい熱ベイは大幅に簡素化され、「テスラ Model Yのヒートポンプを強化したもの」を使用しています。これにより接続点が78%削減され、故障の可能性が最小限に抑えられます。

バッテリーセル: 最新のセル技術を活用した、より大型のバッテリーモジュールとセル(2.8リットルセル)を採用しており、テスラのセルチームと共同設計され、世界中の信頼できるベンダーから調達されています。

サプライチェーンの柔軟性: 米国、東南アジア、中国のメガファクトリーからセルを調達することで、サプライチェーンの混乱や政策変更、技術進化に対応できる柔軟なプラットフォームを実現しています。例えば、5リットルのセルを導入する際にもプラットフォームの全面的な見直しは必要ありません。

4. 現場での労力とコストの劇的な削減 Mega Blockの設計における核心的な原則は「シンプルさ」です。

現場での組立ゼロ (Zero On-site Assembly): Mega Pack 3は、工場でテストされ、現場でグリッドに接続する準備が整った状態で出荷され、現場での組み立てはゼロです。

コスト削減: Mega Blockの設置にかかる労働時間は23%少なくなり、コストは最大30%から40%削減されます。

接続の簡素化: Mega Packと変圧器間のケーブル接続が、最大24本からシンプルな3つのバスバー接続に減少しました。

テスラが重視するのは、コンテナに詰め込める密度ではなく、設置とサービスに必要なクリアランスを含めた「サイトレベルのエネルギー密度」です。このアプローチにより、Mega Blockは業界トップクラスのサイトレベル密度を提供します。

垂直統合が生み出すスピードと価値

1. 驚異的な試運転(コミッショニング)速度 Mega Blokでは、試運転の速度が最大の価値を生み出す要素です。テスラは、1 GWhの容量を20営業日以内に試運転することを目指しています。これは、1ヶ月未満で40万世帯に電力を供給するのに匹敵します。

このスピードを実現するため、テスラはシミュレーションを多用します。Mega Packが現場に納入される数ヶ月前に、顧客やグリッドオペレーターを招き、実際のハードウェアとソフトウェア制御を用いて、グリッドの接続ポイントをシミュレーションし、プロジェクトが計画通りに機能するかどうかを事前に検証します。

2. ソフトウェアエコシステム テスラはバッテリーを製造するだけでなく、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを完全に統合された一つのパッケージとして提供します。

Auto Bidder (オートビダー): テスラが機械学習最適化ソフトウェアエンジニアによって構築した自律型エネルギー取引プラットフォームです。基本的な機能は安く買って高く売ることですが、リアルタイムで発生する数百の決定を管理し、利益を最大化します。Auto Bidderは2017年のローンチ以来、運営するすべての市場で収益のリーダーシップを維持しています。

Grid Forming Software (グリッド形成ソフトウェア): このソフトウェアは、車のショックアブソーバーが振動を減衰させ、乗り心地を滑らかに保つのと同様に、グリッドの安定性に貢献します。再生可能エネルギーのみで稼働する完全に持続可能なグリッドには不可欠であり、伝統的な発電をグリッドから切り離すことを可能にします。テスラは2016年からこのソフトウェアを展開しており、4 GWhにわたる600以上のプロジェクトで稼働中です。例えば、ハワイのオアフ島でのプロジェクトでは、バッテリーが島に残る最後の石炭火力発電所の廃止を可能にし、発電機が停止した際にグリッドを安定させる役割を果たしています。

3. グローバルサービスと高い稼働率 テスラのグローバルサービス組織は、過去1年間で99.3%という高い稼働率を維持しています。車両と同様に、自動化による問題検出、無線(OTA)ファームウェアアップデートによるパフォーマンスとセキュリティの向上を行っています。

さらに、テスラは「認定サービスプロバイダープログラム」を立ち上げ、Southern Companyのような顧客やサードパーティが、テスラの内部チームが長年使用してきたサービスツールにアクセスできるようにしました。将来的には、Optimus(オプティマス)がフィールドサービス技術者としてコスト削減に貢献する可能性も視野に入れています。

Mega Blockは、テスラの10年間のプロジェクト経験に基づいて構築された、シンプルで迅速に設置でき、柔軟性に富んだプラットフォームであり、プロジェクト全体が製品であるというテスラの哲学を体現しています。

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About Electric Manager

大学時代に電子工学を専攻し、電気自動車やソーラーカーの研究を行う。 電気工事士の資格も持ち、自動車メーカーでの電気自動車関連の仕事や電力会社での電気工事、その後は充電スタンドV2Hの営業など弱電から強電まで広いエリアを専門としています。

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