令和4年度補正予算は昨年比2倍以上の大幅増額!
令和4年度の補正予算案が令和4年11月8日に閣議決定され、「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」(通称CEV補助金)、「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」が補正予算に盛り込まれることになりました。
まだ、正式な決定では無いものの、国会で補正予算案の可決・成立されることにより、令和3年度補正予算と比較して2倍近くとなる大幅な予算枠として約700億円がCEV導入として用意されました。しかも下図の令和3年度補正ではインフラ導入も含まれての予算だったものの、今回はなんと充電・充てんインフラ導入促進補助としては別途約200億円という補助金が用意されていることから、実際には昨年と比較する場合には700億円+200億円のおよそ900億円もの補助金が用意されるという事になります。
車両購入に対する補助を隙間なく支援
これだけ大幅な増額があったのは、本年度実施中の令和3年度補正予算、令和4年度予算による電気自動車(EV)の受注状況が好調であることと、政府として具体的に分かりやすく数値化できる2050年カーボンニュートラルへ向けた取り組みであることがあげられます。
特に受注においては、コロナ禍における物流やサプライチェーンの乱れによる部品調達や生産ラインの遅れにより、EV生産が思うように進まず、納車が遅れていて、バックオーダーばかりが増えている状態になっています。
日産が2022年5月に発表した本格的な量産軽EV「サクラ」などは発売後2か月であっという間にバックオーダー2万台越えを記録し、10月の段階で2023年6月納車と言われ、11月に入ると受注停止という状態です。
補助金適用は”車両登録時”
車両購入の補助金が適用されるのは、車両を注文した段階ではなくて「車両登録時」という事で、具体的には車検証が発行されナンバーがついた段階で申請が可能になります。現在進行中の令和3年度補正予算、令和4年度予算は、当初2022年10月中旬あたりで補助金が枯渇すると思われていたため、このあたりに納車を控えていたオーナーは補助金が適用されないのではないかと肝を冷やしていたに違いありません。その影響もあってか、次年度予算に期待する声も上がり、国産車両では登録を先延ばしにするケースなどもあったため、現在進行中の補助金の消費スピードが鈍化し、どうやら2022年11月末あたりまで補助金が使えるような状況になっていました。
令和4年度補正では、令和4年11月8日まで遡れる!
このような状況を鑑み、令和4年度補正予算は、令和4年11月8日以降に新車新規登録、軽自動車であれば新規検査届出された車両が補助対象になるため、2022年11月現在であれば、補助金が途切れることなく利用できることになります。令和2年補正から令和3年度補正の際には2週間程度空白の時期が生まれてしまい、ちょうどこの時期の納車を迎えた場合は補助金額が大幅に減額されるという事態がありました。(当サイトが保有する日産リーフがまさにその状況となりました。)
電力自給率が低い日本には欠かせないV2H
今回の更なる朗報として「充電・充てんインフラ」に対する予算額が別枠になり、その規模もおよそ200億円とかなり大きいものになっていることです。
災害も多く、かつ電力の自給率が極めて低く、発電のためのエネルギーは8割近くを輸入に頼っている我が国日本において、電気自動車(EV)をただ車としての役割にとどめておくのは非常にもったいない話であり、家庭用の蓄電池としての役割を持たせるためにも、電力を自宅から車に充電するだけでなく、その逆に自宅の電力をEVで賄うための「放電機能」をもつV2H(Vechicle to Home:ビークルトゥーホーム)充放電設備は戸建てに住み、V2H対応のEVを導入するのであれば必需品と言えます。
例えば、40kWhの蓄電池を搭載しているEVであれば、4人家族が2~3日間で消費する電力に匹敵します(※戸建て4人家族の1年間を平均した1日の電気使用量はおおよそ13kWh程度)。
これにより、電気自動車は大電力の運搬も可能であることから、車としての機能だけでなく、蓄電池、エネルギー運搬などの役割も持つことになります。それを実現するのがV2H充放電設備であり、今回はこれらを導入するための補助金が別枠で用意されたことにより、より多くの希望者へ届けることが可能になるわけです。
ちなみに、V2H充放電設備は下図のニチコン製「EV Power Station」ですが、本体価格がおよそ80万円、工事費も一般家庭でおおよそ40万円程度かかり、合計で120万円にもなります。令和3年度補正予算では、本体価格が1/2補助され、工事費はほぼ満額(細目に分かれて補助されない工事内容もあるため全てではない)補助されるため、実質負担は40万円程度になります。個人で導入するには非常にありがたい補助金となります。
日産と輸入車向けの補助金となってしまうか?
さて、これだけ潤沢な補助金が用意されていても、依然心配なのが国内メーカーの部品調達や生産状況となります。現在進行中の補助金の期間にまともに完全なEVを販売できているのは、リーフやサクラを持つ日産と、サクラの兄弟車種としてリリースされているeKクロスEVの三菱の2社程度となります。トヨタのbZ4Xは日本国内ではリース契約のみで納車も殆ど行われておらず、その兄弟車のスバルソルテラについてもそもそも月販目標がたったの150台程度、実際には最初に十数台納車が行われただけで、その後の納車は全くない状態です。
写真左の日産アリアについては受注停止と納車延期が続いていて、せっかく多額の補助金が用意されていたとしても、既に発注済みの人ですら来年度中(令和6年3月末)までにすら納車されるかもわからない状態です。軽EVの日産サクラと三菱eKクロスEVについても同様に受注停止と納期延期が続いていて、今後受注が再開されたとしても来年度中の納車が出来るかわからなくなっています。
それでもバックオーダーを大量に抱えている日産にとっては顧客が補助金を利用できる事がほぼ確定になりそうであるために、一安心であるといえますが、EVがまともに生産できていないトヨタをはじめとした他の日本車メーカー勢はこの恩恵を得ることができていない状況となります。
国産車が無いのであれば輸入車
国産車に購入できるEVが無いのであれば、せっかくEVに対する多額の補助金が用意されているわけですから輸入車に流れていくユーザーも多くいるでしょう。EV化を期に国産車離れなども懸念されてしまいます。
今までは輸入車と言えば高級車が中心で、そもそも手が届かないと感じていた人でも、EVとしての性能も非常に高く、補助金と合わせると手が届く範囲になってくるものもあり、また来年度にはEV先進国である「中国」から高性能なEVを低価格にリリースしてくる可能性があります。中でも中国市場でトヨタとEVの共同開発を行っている「BYD」は、すでに日本国内でも車両の展示を行うなど積極的に日本へのPRも進めていて、2023年1月末から受注を開始する予定です。
国産メーカーがEV生産のための部品や電池の調達に苦しむ中、中国勢はそれらサプライチェーンが整っているため、中国で組み立てた完成車両が輸入されてくるという事になります。これは今後国産メーカーですらそのような流れとなる可能性があり、この状況は日本国内で家電製品を作らなくなり、大陸で作ったものを輸入するという流れに非常に似ています。
車両だけでなく充電設備も品不足
そしてそれは車両だけでなく、充電設備にも言える事です。すでにV2H充放電設備は生産が追い付いていない状況となっていて、充放電設備の場合、注文後に交付決定が出るものの、指定期間内に工事が完了しなければ補助対象にならない場合もあるため、現在抱えているバックオーダーへの納品が懸念されています。令和4年度補正で潤沢に枠が用意されたとしても、本体が手に入らないという状態が起こる可能性はあります。
今回発表の令和4年度補正に盛り込まれる内容については、昨年同様な補助内容であるとの事前情報はあるものの、正式な決定前でもあり、具体的な補助内容については一切公表されていないため、今後も注意深く見ていく必要があります。
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