改装中の赤レンガ倉庫に並ぶ中国BYDの日本上陸車種
2022年7月21日に日本の乗用車市場に電気自動車を投入すると発表した中国の大手自動車メーカー「BYD(比亜迪自動車販売株式会社)」が、毎年横浜の赤レンガ倉庫で行われているリゾート感を体験できるイベント「RED BRICK BEACH」のスポンサーとなり、日本で発売を開始するとしたATTO3、DOLPHIN、SEALの3車種の展示を行いました。
まずはイベント会場入り口でこの3車種が待ち構えていて、奥のRED BRICK BEACHに続くようなレイアウトになっています。
RED BRICK BEACH 2022 presented by BYD AUTO JAPAN と呼ばれるこのイベントは、2022年7月30日〜8月28日までのおよそ1ヶ月間、赤レンガ倉庫の海の見えるロケーションに、ビーチ体験が出来るよう白い砂浜が登場し、リゾート感もたのしめるというもので、毎年期間中80万人を超える来場者が集まるイベントになっています。
会場では、世界各国の料理やドリンクなどの飲食店が軒を並べていて、週末には音楽イベントなども開催され、夏の夜を盛り上げています。
BYDの認知度向上につながったのか?
炎天下の中、イベント会場入り口に突如現れた3台の自動車。毎日人数限定で試乗の申し込みができるようになっていましたが、ほぼ午前中でいっぱいになってしまうということです。しかしながら、会場にいて道行く人たちの反応を見ていると、やはり7月21日に発表されたばかりで、テレビなどでもニュースの数秒間の報道が殆どだったこともあり、一般の認識としてはほとんど知られていないといった様子です。「何この車?」「ヨーロッパのじゃないの?」などの声をよく耳にします。
しかし、それだけこのイベントで知ることになった人も多くいたということになります。流石にちょっと日本車っぽくはなく、独特なデザインであること、なによりイベント入り口ということもあり、多くの人が足を止めて車両を一通り見てからイベント会場に向かっていました。
年明けには発売されるATTO3
3車種の中でも、2023年初頭に発売されると言われているATTO3については、展示されている車が右ハンドル対応になっていたことで、「え?日本車?」という声も聞こえてきました。発売が少し先になるDOLPHINとSEALについてはどちらも左ハンドル仕様が展示されていました。どの車両も中央には大型の液晶パネルが設置されていて、インテリアの随所に見られる曲線のデザインがどことなく海洋生物をイメージさせます。BYDの車にはDOLPHINやSEALなど海の生き物にちなんだ名前が多いことからこのビーチイベントでの展示にもフィットしています。
SUVタイプのATTO3については、現在日本市場でも海外勢が多くのSUVタイプのEVをリリースしているため、まさに激戦区に投入される初の中国製EVという事になります。600万〜800万円のレンジに多くの車種がリリースされていることから、このレンジを下回る価格的なパフォーマンスを実現してくるかに注目があつまっています。
次にリリースされるとされている、日産リーフとスケール感もバッテリ搭載容量もほぼ一緒のDOLPHINは、コンパクトに見えるボディと展示車両の色合いが女性からの支持を集めているようでした。一見コンパクトに見えますが、近づけば意外とデカイ印象になるのはまさに日産リーフも一緒です。このDOLPHINもホイールベースは2700mmもあるわけですからかなり大きな車です。
DOLPHINの車内は、ATTOと比べても奇抜なデザインになっていると言えます。BYDのEVはどれもセンターに大型モニタがあり、ドライバに必要な情報はドライバ用に小さめのモニタも必ず用意されています。
フラグシップセダン「SEAL」は漢字!
驚いたのはフラグシップセダン「SEAL」。SEAL(シール)とは海の生物「セイウチ」の意味になりますが、デザインとしては「マンタ」とかのほうがイメージに合うんじゃないかというかっこいいデザイン!
中国市場でも発表になったばかりの車ですが、高度な運転支援技術なども搭載されているため、テスラモデル3などと競り合ってくるのだろうと思います。ATTOやDOLPHINのインテリアはかなり奇抜で独特なものでしたが、それと比べると意外にもまとまったデザインに思えます。名前のような海洋生物のイメージも少し後退しているように思えます。
この車両は後ろから見ると中国メーカーのものであるというのがすぐにわかります。右後方には「海豹」左後方は「比亜迪」とメーカー名も漢字表記です。展示を見ている人たちも、SEALの後方を見て「あ、中国のメーカーなのかな?」と気づく人も多くいました。
日々進むEV=海外メーカーのイメージ
さて、海外市場では電動化はものすごい勢いで進んでいます。日本では日産や三菱が長年電気自動車を発売してきたものの、ここ数年でようやく注目を少しだけ浴びるようになってきていますが、それでもEV化への意識は低く、車両価格などから見てもやはり圧倒的にハイブリット車が人気となっています。そのため、まともにEVをリリースしているのは未だ日産自動車だけという状況です。
今回のBYDや韓国ヒョンデなどもそうですが、今後は日本市場にCEV(クリーンエネルギービークル)しか持ち込まない計画になっていて、これは他の海外勢も同様な動きになっていくでしょう。それくらい自動車の販売台数の多い欧米についてはEV化が進んでいます。
中国にはまだまだEVのスタートアップXpengやNIOなど今後日本へ参入を計画している自動車メーカーもあり、EV(電気自動車)=海外メーカーというイメージ戦略は、ショッピングモールに展示されているテスラモデルYや赤レンガ前の中国BYDなどのように、日々日本人に対して浸透していっているように思えます。
正しい運用方法の啓蒙が大事
日産サクラが市場に放たれ、いよいよ少ない充電スポットの争奪戦が始まる中で、ディーラーによる正しい充電マナーやEVの活用方法、自宅充電の重要性など、予備知識の啓蒙は非常に重要です。補助金等の追い風などもあり、多くのバックオーダーを抱えた軽EVの納車が開始された今、最初の普及段階で国産EVの活用がうまく行かなければ、その後に待ち構えている海外EV勢に一気にその覇権を奪われていくということになりかねません。
次にくる海外勢はどこか?