モデル3に対して不満の声が上がる
ルーマニアのデータ処理やホスティングなどのインターネットサービスを行う企業「Softnews Net SRL」がリリースしている世界の自動車情報サイト”autoevolution”で「買った事をものすごく後悔し、2か月で売却した不幸な2022モデル3オーナー」という記事が公開され、これに賛否の声が集まっていましたが、結論から言えば「間違った買い物をしてしまった人」か「使いこなせなかった人」という事です。
かわいそうに・・・少し同情するところもありますので、このような失敗をしないようにテスラ車についてはもう一度しっかり理解を深めてもらった方がよさそうです。
ただの「電気自動車」だけでないテスラ
このブログでは何度も紹介していますが、私個人的には2013年ごろからテスラを追い始め、テスラのファンでもあったわけですからモデル3を購入したことにまったくもって後悔はありません。ただし、人に勧めるかと言えば、新し物好きの人には勧めるかもしれませんが、車としてだけとらえてしまうような場合は絶対にお勧めしません。
自動車の質やサービスを求めるなら、メルセデスベンツ、BMW、レクサス、Audi、ボルボ、日産など電気自動車(EV)を日本国内でリリースし、素晴らしいサポートを展開している自動車メーカーは沢山あります。VolvoのC40 Rechargeなどは電気自動車の良さを引き出し、電費性能と充電性能が高く、コネクティビティも意識されていてすばらしいEVのSUVになっていています。加速性も良く、ディーラーのサポートもしっかり受けられます。こちらは試乗レポートでもご紹介していますので、本記事末尾の関連リンクから是非ご覧ください。
ここで紹介したメーカの電気自動車は正確にはエレクトリックカー(ELECTRIC CAR)ECと表現した方がよいのかもしれません。
テスラのEVとしての凄さ
では、テスラはどういったものかと言えば、「新しいモビリティ」と言えます。姿かたちが自動車であるため、車と比較しがちですが、「電気」であることを最大限に表現するためいろいろとチャレンジングなモビリティになっています。
テスラが他のEVと明らかに違う点をまとめてみました。
- 購入はネット。ディーラーは無く購入後軽微な修理は自宅まで来てくれる。
- 自動運転を目指しているモビリティである。
- 電源をON・OFFするという概念が無く常に起動している。
- ほぼすべての車両の設定・制御をソフトウェア(液晶パネル)で行う。
- テスラ内でのエンターテイメントの充実・素晴らしい音響。
- 乗り降りに新しい体験(ドア・自動シート・アプリ制御)。
- EVとしてモーターの加速性能を最大限まで引き出している。
- 独自の高速充電「スーパーチャージャー」を用意している
- ソフトのアップデートにより新しい体験が次々と行われる。
先に挙げた特徴をざっと説明していくと、テスラと言えばやはり自動運転技術です。標準で搭載されているオートパイロットも一歩先を行った運転支援を体験でき、日本ではいまだ解放されていないFSD(フルセルフドライビング)では完全自動運転を実現しようとしています。
テスラは駐車中も周囲の監視やテスラ内の温度コントロール、ネットとの通信など様々な事を行っているため常に電源がONの状態になっています。搭載されたモーターや各種センサなどは全てソフトウェアでコントロールしているため、タッチパネルやスマホアプリなどからテスラをコントロールでき、アップデートにより走行制御などを変えることで航続距離の改善がなされることもあります。大型液晶で楽しめるエンターテイメントはテスラ内にずっと居られるため、ひとつの「部屋」という感覚にもなります。
国産車と比較するべき車はありませんが・・・
ここからはテスラを普通の車として比べてしまった場合の悪いところという事になります。ここを比べられることが非常に多く、個人的には電気自動車が欲しいならテスラ以外を買って、新しいモビリティ体験をしたいならテスラという事で比較してもあまり意味がないと思っています。
車体の作りは日本車の方がしっかりしている
それでも、ここではあえて普通の電気自動車と比較してみます。
日本の車は海外の車に比べて作りが良いと言われますが、それは本当にそう思います。なので、車として見てしまえば正直日産リーフにすら負けています。見た目だけでもがっしりとして細かい作りこみなんかもやっぱり良いと感じます。こうなればレクサスやメルセデスベンツ、BMWなんかは当然もっといい車ですし、シートや車内の作りこみなんかも高級感があってとても良いですね。無理にEVにしなければ、同じ価格でよりラグジュアリな自動車に乗ることができます。
ギシギシきしむような音がするってホント?
autoevolutionの記事にも書かれていましたが、ギシギシ音がしたり、シートもミシミシ音が聞こえてくるなど、日本車にはありえないような事は起こります。2,3か月乗っているとその辺が顕著に出てきます。軽量化されたアルミボディは何となく信頼性にかけ、ドアを開けた時などに見える作りこみなんかは、どうしても安っぽく見えてしまいます。
カリフォルニアの車は雨の事はあまり意識されていないのか、2019年モデルでは、リアのハッチを雨の日に開ければ、雨水が跳ね上がったハッチから落ちて、ガラスルーフを伝って全てトランク内に流れ落ちてきます。2021年モデルから改善され、ゴムパッキンがついていますが、すべての雨水には耐えきれず、安いつくりのゴムは数年後には経年劣化でダメになりそうです。モデル3やモデルYなど廉価版として車体を安くするための努力がされた車種は、おそらく随所にこういった箇所があります。2,3年で更に色々出てくる事でしょうし、廉価版はリコール懸念は常につきまといます。
サポートは自動車ディーラーと比べると「ありえない」レベル
テスラはディーラーが無くオンラインで購入します。そして軽微なものは全国をテスラ車が回り、自宅まで来てくれる「モバイルサービス」があります。聞くと自宅まで来てくれるという素晴らしいサービスに聞こえますが、予約してから直ぐに来てくれるわけではなく、数日から数週間後になります。
私の場合、以前の記事でもお伝えした通り、助手席側のドアミラー内部から金具が飛び出してきて、モバイルサービスを呼びましたが、この対応にも1ヶ月ほどかかりました。
1年点検やモバイルサービスで対応できない作業はサービスセンターまで持っていきます。埼玉なので、板橋が最も近くなりますが、比較的ディーラー数の少ないボルボですらもっと近くにあります。
また、日本仕様に完璧に対応できていないため、ナビはいまいちちゃんと機能せず、目的地入力も何故か50音で、変換もきちんとできません。その為、目的地も探しにくいので、結局スマホのGoogle Mapで案内。しかも非接触チャージの場所に置いておくと、GPSの感度が悪くなりスマホのナビもちゃんと動かなくなる場合があります。
・・・・と、普通の車と比較すれば未熟な部分は沢山出てきます。
一番の不満はコスパが悪いということですが・・・
先に挙げたテスラの良さは、確かに2か月程度で体験できてしまうため、autoevolutionの記事にあるように2か月で新しい体験が感じられなくなり、売りに出してしまう人もいるでしょう。そしてこの記事の中で指摘されている最も大きな部分はそのコスパの悪さ。同じ金額を出せばもっと良いBMWとかが買えたというのですが、だったらしっかり調べて最初からそれを買えばよかった話しで、いわゆる「購入する車種を間違えちゃった」という事です。
日本市場でもモデル3のロングレンジモデルは200万円以上値上がりし、700万円以上になりました。確かにこの金額だったら「自動車」という観点で考えたらもっといいHV車や輸入車などが沢山あります。
しかしそこには自動車を超える体験はありません。
アップデートされて、今まではあり得なかった「翌朝には新しい機能」が増えていたり、車内でのエンターテイメントの楽しみ、スーパーチャージャー網を頼りに、自動運転で出かける旅行など、新しいライフスタイルへのチャレンジが待っています。
自動車ではなく新しいモビリティとしての価値に気が付かない場合は、テスラを買えば不満ばかりになるでしょう。また自宅に充電器が設置されていなければ、日々の不満が募り、新しい体験も霞んで、やはり2か月で売りたくなるかもしれません。うまく使いこなすためにはブログでも再三訴えているように、適切な環境づくりも必要です。
但し、テスラ好きで、買った事を後悔していない私も、今の価格だったら絶対にモデル3やモデルYは買わないと思います。中古車販売サイトなどに出されているモデルXでも、新しい体験はできるわけですから、、、。
関連記事
- 買った事をものすごく後悔し、2か月で売却した不幸な2022モデル3オーナー(原文)
- TESLA Model3を買った男の購入までの道のり(過去記事)
- テスラのドアミラーからなんか出てきました(過去記事)
- エレクトリックライフ試乗レポート