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IONIQ5のV2H機能の問題は解決せず返金対応へ

期待通りの性能を発揮できないIONIQ5のV2H機能

2022ワールドカーオブザイヤーを受賞し、日本では2022-23インポートカーオブザイヤーを受賞した韓国ヒョンデ(HYUNDAI)の電気自動車(EV)「IONIQ5(アイオニックファイブ)」のV2H機能に問題があることが判明し、現状販売されている車両や今後についてもその改善の予定がないため、新車購入代金の一部返金を2023年3月2日に公式サイトにて発表しました。

Hyundai house ヒョンデ IONIQ5 エレクトリックライフ
ヒョンデ「IONIQ5」はWLTCで618kmの航続距離 72.6kWhのバッテリを採用

V2H機能は使えるものの満足いく性能を発揮できない

IONIQ5は輸入車には珍しく、自動車側から自宅側へ電力を戻すことができるV2H(Vechicle to Home)機能に対応しています。国産のEVは殆どがV2H機能に対応していて、災害の多い日本では、自動車が自宅に電力を給電できるため、蓄電池としての利用や大量の電力を運べる移動式電源としての利用も期待されています。

しかし、IONIQ5のV2H機能は発売当初から、「他の国産車ほどしっかりと電力を戻せない」など、メーカーに問い合わせを行っても歯切れの悪い曖昧な回答しか返ってきませんでした。そのため自宅で日常的に利用している100V(16Aまで)の家電品などを直接利用できるV2L(Vehicle to Load)の利用を推奨していました。(V2Lについては後述)

この直接家電品を動作させる仕組みは非常に素晴らしく、ヘアドライヤーやコーヒーメーカー、IH器具など、高い電力を必要とする家電も動かせます。更に充電ポートにもアタッチメントを取り付けて給電が可能であるため、キャンプなど車外で電力を使いたい場合に電力を取り出すのにも利用できます。

IONIQ5の高速充電が仇に

IONIQ5の特筆すべき性能として挙げられるのが、外出先などで急速充電器を利用する場合の「高速充電性能」です。現在多くの電気自動車のバッテリーシステムの電圧は400Vのものが主流ですが、IONIQ5は800Vと、更に高電圧のものが利用されています。これにより、出力の高い急速充電器などでは、その能力を最大限に生かして、他社のEVと比較しても圧倒的に速いスピードで充電が可能です。

しかしながら、これが仇となってしまっているようで、日本のV2Hシステムは、多くの国産車に合わせて400Vに対応しているため、充電の際には、V2Hから出てくる400Vを車両側で800Vに引き上げなければなりません。また放電の際には車両側800Vから400Vに降圧しなければなりません。

Hyundai house ヒョンデ IONIQ5 エレクトリックライフ

電圧の返還時にロスが出る

この昇圧・高圧をする回路にて余分な電力消費が、およそ1~2kW程度発生していることが判明し、ヒョンデは2023年2月21日にV2H機能についての説明が不十分だった内容を消費者庁に自主的に報告を行い、自社ウェブサイトにてその旨を発表しました。

充放電するたびに、ヘアドライヤー分程度の電力を余分に消費しているという事になります。

今後OTAなどでは修正できず「返金」へ

ヒョンデに今後の対応を問い合わせてみると、IONIQ5はインターネットに接続して機能をアップデートする「OTA(Over The Air)」に対応しているものの、今回のV2H充放電に関わる変換効率をソフトウェアのアップデートやリコールで対応するものではなく、あくまで他社と比較すると性能が低い部分ということになるようで、今後改善する予定はないという事です。

ヒョンデとしては、不具合があったわけでなく、そもそもそういった仕様であるが、購入前にその性能を十分に説明できていなかったことから、購入者全員に20万円を返金し、すでに自宅にV2H充放電設備を設置した人に対しては30万円を返金するとしています。

既にウェブサイトなどの表記は修正されているため、新車価格については従来通りの価格で据え置きとなっています。

IONIQ5

安全性には問題なし

今回、ヒョンデ側はV2H性能に不具合があったわけではなく、カタログ等で「V2H機能に関する不適切な表示があった」としているため、V2H機能を利用して安全性に関わる問題点などは発生しないとしています。ただし、V2H性能が国産車の場合と比べて十分な性能がはっきされないため、電力の節電効果が必ずしも得られるわけではないという事になります。

IONIQ5はダメなのか?

それでもIONIQ5は性能が高い車両であることには間違いありません。今回は自宅に日本製のV2H充放電設備を設置している場合に消費電力が悪くなるという事で、200Vの普通充電(交流)からの充電であればこのような電力ロスは発生しません。出先での急速充電などは、他メーカーのEVの充電性能を圧倒するスピードを発揮することができます。

Hyundai house ヒョンデ IONIQ5 エレクトリックライフ

また、走りの性能や高い居住性、そして、V2Lなら、出先での電力利用として100V16Aまでのプラグが車内に標準装備されていて、専用アタッチメントをつければ車外でも100Vを利用することが可能です。住宅の壁に直接電力供給は出来なくとも、災害時などでは、V2Lを活用した電力利用は可能です。むしろV2Hなどのような大きな充電設備を設置する事もなく、自宅には普通充電設備を設置する簡単な工事でシンプルな設備での運用が可能です。

今回新車価格に変動はなかったものの、この機能分、新車価格からの割引などがあれば、まだまだおすすめのEVであることには変わり有りません。

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