現在EVに最も多く搭載されている中国「CATL」のバッテリー
CATL(寧徳時代新能源科技:Contemporary Amperex Technology)は中国の企業で、電気自動車(EV)用のリチウムイオンバッテリーやエネルギー貯蔵システムなどを手掛ける企業です。
この分野では、日本のパナソニックが世界をリードしていたものの、2017年にはパナソニックを追い越し、2021年のデータでも電動車用バッテリーの製造企業として全体シェアの32.6%を占め世界NO.1の地位に君臨しています。ちなみに世界2位はシェア20.3%を占める韓国のLGエナジーソリューションで、3位がパナソニックで、そのシェアは12.2%となっています。
急速な電動化シフトにより、リチウムイオンバッテリーのニーズの高まりとともに急成長を遂げていて、バッテリーの搭載容量ベースで考えると2020年には36.2GWhを提供していましたが、2021年は96.7GWhと165%以上の成長を達成しています。2022年以降、更に急激に成長していくと予想されています。
多くの自動車メーカーが採用
CATLとの提携は殆どの自動車メーカーが行っているといっても過言ではありません。日本ではトヨタ、ホンダ、日産の大手3社が提携しており、海外勢でもPSA、韓国ヒョンデ、BMW、フォルクスワーゲン、ダイムラー、メルセデスベンツと聞き覚えのある有名メーカーは全てと言ってよいでしょう。
CATLとはどのような歴史を持った企業か?
CATLは2011年に設立された中国の企業です。企業のプロフィールページによれば、設立した年に河北省張北県で行われた大規模プロジェクト張北エネルギー貯蔵プロジェクトに参加したとあります。当時、太陽光や風力発電による再生可能エネルギーの貯蔵プロジェクトとして100MW級の蓄電は世界最大級のプロジェクトであったため、この事業がきっかけで設立された企業とも言えます。
以降、2012年にはBMWとパートナーシップを結び電気自動車へのバッテリー供給などを開始、ここから多くのメーカーとの提携が始まっていきました。
CATLの前身ATLは日本にルーツあり
CATLの歴史は1999年に設立された民生用のリチウムイオンバッテリーメーカーであるATL(アンプレックステクノロジー)から始まりました。CATLを立ち上げはATLの出身者によって行われました。このATLは日本企業TDKの中国支社に上釜健宏元会長が駐在していた時の部下たちが立ち上げたベンチャー企業で、2005年にはTDKにより107億円で買収され子会社化されました。TDKといえば、磁気テープやフロッピーディスクなどの記録メディアの大手メーカーでしたが、リチウムイオン二次電池の開発も行っていました。
2001年に世界で爆発的な人気となった音楽プレイヤーiPodですが、この電池の供給を行っていたのもTDKの子会社となった香港ATLです。さらに2007年に米国で発表されたiPhoneは現在のスマートフォン化の始まりであり、2008年からは日本でも発売が開始されましたが、このバッテリーも香港ATLのものも採用され、iPhoneの世界的な販売台数の拡大によりATLも成長を遂げていきました。
その後、2011年にATLの車載電池部門が独立し、そこからおよそ6年後には、当時車載電池のトップ企業だったパナソニックを追い抜いて世界1位の車載電池供給企業となりました。
ATLはその後もバッテリー部門での売り上げを伸ばしTDKの稼ぎ頭となっています。
今後の車載電池のシェアはどのようになっていくか?
世界中の自動車メーカーがバッテリーEVへのシフトを表明した現在、その電池獲得戦争は2022年以降激化していく事は間違いありません。各自動車メーカーは車両本体だけでなく、車載電池への投資も行うとしています。これは原材料であるリチウムの確保などを含め様々な分野に波及していきます。
カーボンニュートラルを実現しつつ、多くのバッテリーニーズへの対応はとても1社ではかなわず、2位のLGエナジーソリューションズや3位のパナソニックが自動車メーカーとの協業によりシェアを伸ばしてくることは間違いありません。
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