電気最終保障供給価格の値上げで今後さらに苦しくなる
電力自由化に伴い、携帯電話会社、ケーブルテレビ、ガソリンスタンドなど様々な企業が電力小売りをスタートしました。
電力の自由化は2000年ごろ特別高圧契約の法人から始まり、2004年には法人向け高圧の契約が自由化になり、2016年には一般個人向けにも自由化が始まりました。本来であれば小売業者での価格競争などにより我々消費者にはメリットがあるはずでした。
しかしながら、昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大によるサプライチェーンの乱れは、電力を作る元である石炭や原油・天然ガス安定供給も乱れ、資源国の社会情勢の変化なども重なり、電力市場での電気の買取価格が高騰し、その恩恵も感じ取ることができないほど電気代・燃料調整費が高騰する結果となっていまいました。
個人については、電気代自体は契約で守られているため、急激な変動は受けていないまでも、変動する燃料調整費の部分が高騰しているため、その部分が値上げの影響を受けているはずです。
倒産・撤退する電力小売り業者
以前から当サイトで何度も取り上げている電力小売業者の撤退はかなり問題になっています。個人の場合は、万が一自分が契約している電力小売業者が撤退や倒産したとしても、まだ新規に契約できるところがありますので、一定期間従来からある電力会社の「最終保障供給価格」へと移行し、その間にあたらしい小売業者と契約すれば、電力の供給を受けられます。
電気の最終保障供給価格とは?
問題なのは特に中小零細企業で、高圧受電設備を持っている工場などはとても深刻です。旧来の電力会社から電力会社を変更し、その新しく契約した電力小売業者が廃業などに追い込まれると、一旦は最終保障供給を受けることになります。これは現代では電力の供給が途絶えると経済活動が停止してしまうため、割高(2割程度)ではあっても、電力の供給が止まらないようにするための救済処置となっています。その間に新しい電力会社を見つけなければなりません。しかし、新規で受け付けてくれる業者がほとんどない状態となっているのです。つまりずっと最終保障供給価格での契約になるということです。
電力小売業者の廃業などにより、最終保障供給契約の数は2022年7月期は前年に比べ65倍となっています。
最終保障供給価格の方が安くなってしまうという逆転現象
しかし、昨今の電力卸売市場の価格高騰はとどまることを知らず、非常に高値が続いていて、現在設定されている最終保障価格では、市場価格と比べて安くなってしまうという逆転現象が起きてしまう場合があります。
今回値上げを行うと発表したのは、一般送配電事業者9社です。電気料金は、小売業者が発電料金と送配電料金をそれぞれ業者に支払い、その金額に小売りの利益を乗せて利用者に請求するものですが、この送配電部分を担っている沖縄を除く9エリアの事業者から変更届が提出されました。
今後は卸売市場価格と連動する
発電や送配電を行う業者までも倒産してしまっては、そもそも日本経済が根底からおかしくなってしまうため、今回のような変更届が出され、供給が途絶えないようにする処置が取られるわけですが、利用者にとっては大幅な値上げが予想されます。それは、どの業者も「最終保障供給料金は、一般社団法人日本卸電力取引所における翌日取引市場の市場価格を参照した補正項を適用し算定することと整理がなされたことから、当該内容を料金その他の供給条件に反映する」としているのです。
これは何を意味しているとかというと、卸売市場の日々変化する価格と連動することを意味します。
企業、特に中小零細の高圧受電設備事業者に大打撃
これは、企業運営に大打撃となります。特に内部留保の少ない中小零細企業にとっては、事業継続が困難になる場合があります。すでに6月末には、1kWhあたり200円などと、通常の10倍以上の電気料金などの数値が記録されているのを見ると、新規の電力会社との契約が進まない場合、今までの数倍〜10倍程度の電気料金を支払う可能性が出てきたわけです。
様々なところにしわ寄せがやってくると、日常的に我々が受けていたサービスも、1つ、また1つと消えていくことになります。それは雇用の縮小も意味しています。もちろん中小が廃業に追い込まれれば大手企業にも大きな影響が出てきます。
何が起こっていくか、電力をたどっていくと、近い日本の未来が見えてきます。
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