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FUSOが電気小型トラック「eCanter」の新型を発表

電気小型トラックのパイオニアが新型モデルを発売

2023年3月9日、三菱ふそうトラック・バス株式会社は、新型の電気小型トラック「eCanter」を発表しました。環境に優しい電気トラックとして、都市部での物流ニーズに対応するべく開発されたこの新型車両は、高い実用性と省エネ性能が魅力の商用車です。

FUSO eCanter 電気小型トラック 三菱ふそう ELECTRICLIFE エレクトリックライフ

日本市場ではリース契約のみでの販売だったeCanterですが、新型車両からは通常の車両同様に普通の販売も行っていくようです。

フルモデルチェンジで普及モデルへ

今回はフルモデルチェンジという事で、シャシーラインナップも様々な物流ニーズに対応した28種類の豊富なラインナップとなっています。小型の商用車トラックの架装ニーズは多岐に及びます。ダンプ、高所作業、キャリアカー、脱着車、リアクレーン、ゴミ収集車などあらゆる商用用途に対応できるように、ePTO(動力取り出し装置)も搭載しています。

EVとしての性能も高次元に!

最大の特徴は、モーターとインバーター、リダクションギア、アクスルなどが一体型となった新開発の「eアクスル」を搭載していることで、モーター一体型のドライブトレインでコンパクト設計で、かつ高効率になったことです。これによりプロペラシャフトなどが無くなり、シャシーに大きな余裕が生まれています。

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新型eCanterには、無駄を省いたドライブトレイン「eアクスル」が採用されています。

高い安全性能

三菱ふそうトラック・バス株式会社(MFTBC)は2019年に日本で初めて大型トラックにSAEレベル2相当の高度運転支援技術を搭載した自動車メーカーでもあります。そのため、新型eCanterにも、様々運転支援技術が搭載されていて、ドライバーの安全性を高めています。巻き込み事故を防ぐ「アクティブサイドガードアシスト」や「アクティブブレーキアシスト」による歩行者や前方車両との衝突回避のための警告や自動ブレーキシステム、またドライバの顔認識カメラなどにより、運転中の注意力低下をカメラ映像と車速や蛇行率の変化などから察知し、警告を行います。

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トラックコネクトによる走行管理

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トラックコネクトは、車両に搭載したスマートフォンやタブレットなどを活用して、車両の位置情報や運行状況、電費、ドライバーの運行状況などをリアルタイムで把握し、効率的な運航計画の策定に役立てることができます。これにより、ドライバーのトレーニングや危険運転の予防、トラブル対応などを効果的に行う事ができます。

大容量リチウムイオンバッテリ

これにより、電池容量も増やすことができ、航続距離の増加に貢献しています。大きく分けると3つのサイズに分かれた設計になっていて、カタログ値での満充電での航続距離は、標準キャビンサイズのSサイズで116km、Mサイズで236kmを実現しています。これは実用使いで、エアコンや重量物の積載を考慮に入れれば、Sで約80km、Mで約180km程度が予想されます。

商用小型トラックの80%以上が1日の平均走行距離が50㎞未満になっている(※三菱ふそう調べ)ことから、最も小さいSサイズのパッケージでも、このニーズを十分に満たすものになっています。

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ワイドキャビンのLサイズでは124kWhの大容量バッテリを搭載し、324kmを実現しています。eアクスルはモーター最高出力が129kWを実現していて、最高速度は89km/hとなっています。長距離の高速道路利用は現実的でないものの、一般道を走る商用車両としては十分なスペックとなっています。

V2H対応は超高付加価値!

外部給電対応で、非常時は事業所の蓄電池に!

商用車両としてさらに大きな付加価値となっているのが、搭載されている大容量バッテリからの電力の利用です。これは、現在多くの企業が取り組む災害時の事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)において大変重要な役割を果たします。

今回発表の新型eCanterはバッテリサイズが41kWh、83kWh、124kWhの3種類が用意されています。一般的な4人家族の戸建てで使われる電力量を1年間で平均すると、1日16kWh~20kWhと言われています。つまりSサイズバッテリでも一般家庭丸々2日分の電力を搭載しています。

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営業所に設置する充電設備を、「放電」機能も搭載した充放電設備にすることで車両(Vehicle)から事業所(HOME)へと電力を戻すことが可能になります。(VtoHをV2Hと略します。)

電気自動車は毎日継ぎ足し充電をして、毎朝満タンにして運用します。これはエネルギーの補給に時間がかかるためで、なるべく余力を持ってエネルギーを持っていたいからです。トラックが営業所に戻り1日の仕事を終えたら充電設備に接続し、時間になったらタイマーで充電が始まります。翌朝には満タンになっていて、お昼にもどったら、また営業所で充電しておきます。こうしてなるべくエネルギーを車両にためておくことで、いざという時には車両に搭載されているバッテリから事業所に電力を戻して利用することができます。法人の契約などでは、市場と連動した電気料金の設定も可能であるため、電力が安い時間に充電を行い、電力が高い時間で車両を使っていないのであれば、その時間は放電するという使い方も可能です。

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春や秋などは電気代がほぼゼロ円になる時間帯もある。(環境市場システムプライスより)

多くの実績を残してきた「eCanter」

三菱ふそうは、これまで電気トラックの開発に力を入れてきた企業であり、2010年に「キャンターE-CELL」を発表して以来、量産に向けて様々な実証実験を繰り返してきました。それは日本国内にとどまらず、アジア、ヨーロッパの各国で実証実験を繰り返し、2016年には、アジアエリアで戦略的に協業を行っているダイムラー・インディア・コマーシャル・ビークルズ(DICV)が出資する企業ダイムラー・トラック・アジア(DTA)により、FUSOのeCanterが世界で初めて発表されました。

2017年には、いよいよ電気トラック「eCanter」が量産モデルとして、米国、欧州、日本市場に納入されるようになり、当時で既に航続距離100km以上を達成していました。

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米国のUPS社に納入されたFUSOのeCanter

そのため、搭載バッテリから、eアクスルなどの新しいドライブトレインなど、商用車EVのフロンティア的な存在となっています。

2039年までに全車両をEV化

現在、三菱ふそうトラック・バス株式会社(MFTBC)についてはダイムラートラック社が89.29%出資し、三菱グループが10.71%の株式を保有しています。そのため「FUSO」はダイムラートラックのブランドの1つとして、世界170以上の市場において、小型から大型までのトラック・バスといった商用車分野でシェアを持っています。

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特に小型トラックエリアの「キャンター」は世界の多くのマーケットでトップシェアを獲得している車両だけに、トラック分野でのEVのパイオニアとして、EVによる市中からの温室効果ガスや有害物質を含む排気ガスの削減には、このシリーズの車両のリプレイスがカギを握ることになります。

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