水曜日 , 12月 11 2024

ISUZU小型トラック「エルフEV」を発表

ISUZUが商用小型トラックの量産型「エルフEV」を発表!

いすゞ自動車株式会社は小型トラックのエルフシリーズにEVラインナップを加えることを発表し、本格的に量産バッテリーEVを商用トラックの世界にも普及させていくことで地球温暖化Ýドライバーの労働環境改善につなげていくとしています。

ISUZU ELF いすゞ自動車 エルフ ELECTRICLIFE エレクトリックライフ

EV化を見据えた未来に向けたプラットフォーム

今回エルフのEV化を行うにあたり、ISUZUはその車両設計から見直すことで、EVだけでなく様々なエネルギーによる小型トラックの開発を可能にしています。その新しい開発プラットフォームが「I-MACS(Isuzu Modular Architecture and Component Standard)」と呼ばれるもので、ディーゼル車で搭載していたエンジンや燃料タンクなどのモジュールをEV用にモーターやバッテリに置き換えられるようにし、これら違った動力源を利用して部品などもなるべく共通化することで効率的な生産とコスト削減につなげていけます。

ISUZU ELF いすゞ自動車 エルフ ELECTRICLIFE エレクトリックライフ

バッテリーモジュールを変更可能

小型トラックの用途は幅広く、短距離から中距離程度を想定しているため、その利用用途に合わせてバッテリ搭載量も自由にレイアウトできるようになっています。エルフ用のバッテリパック1個は20kWhで、これをキャビン(キャブ)の大きさによって搭載量を変更していきます。

ISUZU ELF いすゞ自動車 エルフ ELECTRICLIFE エレクトリックライフ

予想航続距離は?

40kWhの標準タイプのバッテリ容量では、満充電あたりの航続距離はWLTCで100km程度となり、実際には80km程度になるのではないかと予想されます。今後実車などが市場に出回らないと実際にはどの程度走行できるか定かではありませんが、日産リーフ40kWh搭載モデルがWLTCで322㎞実際には260㎞程度となっていることから、車両重量や荷物を積載することを想定するとこのような値が予想されます。

この距離では、宅急便などのような一般住宅地を回る最終配達業者などに適したバッテリサイズになります。もう少しロングレンジを走る場合には3パック以上が必要で、今後は、よりバッテリ密度の高い電池の搭載も求められてきます。冬場も想定するとどんなに小さくても3パック以上は必要になってくると予想されます。

急速充電と普通充電に対応

充電は日本国内で主流となっているCHAdeMOに対応しているため、現在乗用車EVが充電しているあちこちの急速充電ネットワークで充電が可能です。車両が動いていない夜の時間帯などは、営業所などに設置されている普通充電器で充電も可能です。また、高効率な充放電を実現するためには、バッテリの温度管理も重要で、エルフEVについては水冷式の温度管理システムに対応しています。

ISUZU ELF いすゞ自動車 エルフ ELECTRICLIFE エレクトリックライフ

V2Xには非対応

エルフEVについては、V2HやV2Lなどの外部給電には対応していないため、車両から事務所や営業所への電力供給はできません。BCP(企業の事業継続計画)などの観点を考えると、この辺りの機能も今後は検討される必要があるかもしれません。

商用利用には充電インフラの設置場所が重要

トラックの主要な目的は荷物の運搬にあります。物流センターなどでEVトラックを導入していく場合は、その充電設備の設置場所についてはしっかりと検討していかなければなりません。特に物流という仕事の中で、仕事を効率的に行うためにいつどこで充電するのかを考えるのは非常に重要です。トラックのEV化は仕事のやり方なども工夫していく必要があるという事です。

休憩時間や荷物の準備中に充電

ドライバーが休憩を取っている時間、トラックが動かない時間などが充電をするチャンスです。現在の内燃機関車のように、エネルギーを得るためにわざわざその場所に行くというのは電気自動車の考え方としては合っていません。なにか他の事をしている間に充電することが重要で、15分、30分などの刻みで考えておくとよいでしょう。

例えば配送センターなどについた場合は、荷物の積み下ろしを行う前に、充電コネクタなどに接続して充電を行っている間に荷物の積み込みや積み下ろしなどが行える必要があります。また、トラックが戻る営業所には、急速充電設備や複数の普通充電設備が必要になるため、今後各営業所にも高圧受電設備(キュービクル)が必要になってくるでしょう。

ISUZU ELF いすゞ自動車 エルフ ELECTRICLIFE エレクトリックライフ
配送センターの荷物の積み下ろし場所などには充電設備が必要になる

そして、先にも述べたように、充電をするためだけにその場所に移動して充電していたのでは、非効率になるため、その充電設備をどこに設置するかは非常に重要になってきます。今後新しい配送センターなどを設計する場合には、これら充電設備の効率的な配置を考慮に入れる必要があるでしょう。

ISUZUはEVisionで電動化をトータルサポートしていく

ISUZUはEVisionにより、ビジネス上でのCO2排出量ゼロに向けた取り組みをトータルでサポートしていくとしています。それは3つの柱「EVisionコンシェルジュ」「EVisionソリューション」「EVisionレビュー」により、EV導入から、課題解決と円滑な利用、そしてそのデータを見える化して、脱炭素を推進していくという事です。

EVを活用した脱炭素に向けた取り組みは、インフラ整備が必要になってきます。駐車場や車庫から始まり、営業所のレイアウト、充電設備の設置場所をどう設計していくかが重要なカギになるため、スタート時点のEVisionコンシェルジュやいすゞ自動車の営業マンの能力が試されます。

法人向けの電力料金の最適化も必要

政府は2050年までのカーボンニュートラルを目指しています。そのため、日中走るトラックからの排気ガスを失くしていく事は非常に重要です。特に市街地にも多く走る商用車両から排出されるCO2やVOx、NOxなどの排出ガスを減らすことは、そこに住む人たちの居住環境の改善にもつながります。

しかし、高効率なEVでの運搬環境を整えるためには、営業所でも設備投資が必要になってきます。ただし自動車のEV化は商用車両だけの問題ではないため、営業所に設置された充電設備を一般へ開放するなど、各地域にある営業所の役割も変わってくる事が予想されます。営業車両が出払っている時間帯は地域の住民に有料で電力を販売するなど、高圧受電設備を設置する拠点が増える事の意義など、広い視点で考えていく事で、地域と企業が新たにつながる仕組みづくりにも繋がり、こういった取り組みに対し、国が補助金などを用意することで、脱炭素への取り組みが加速していくと考えられます。

軽商用EVなども登場する中、小型トラック、中型トラックへとEV化が進むことは間違いありません。その際に日本の自動車メーカーがイニシアチブを取れるかも非常に重要な問題になってきます。

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