自動車業界が「100年に一度」の変革期に揺れる中、本田技研工業(ホンダ)が静か、かつ大胆な「軌道修正」と「攻勢」を見せています。 2025年、世界のEV市場は踊り場を迎えましたが、ホンダはその荒波の中で、ハイブリッドで足場を固めつつ、次世代EVとバッテリー生産体制を着実に構築してきました。
本記事では、2026年1月時点でのホンダの電動化戦略の現在地、注目のソニー協業(AFEELA)、そして北米電池工場の最新動向までを網羅的に解説します。
戦略の「軌道修正」と「ハイブリッド回帰」の真意
2025年5月、ホンダは「2025 ビジネスアップデート」において、電動化戦略の現実的な修正を発表しました。 かつて掲げた「2040年に脱エンジン」という最終ゴールは堅持しつつも、そこに至るプロセスにおいて、ハイブリッド車(e:HEV)を「収益と技術の架け橋」として再定義したのです 。
なぜ今、ハイブリッドなのか?
北米や欧州でのEV需要の鈍化を受け、ホンダは2030年までのEV普及スピードの見通しを修正しました。無理なEV一本足打法ではなく、現在圧倒的な競争力を持つハイブリッド車で確実に利益(キャッシュ)を生み出し、それを将来のEV開発やソフトウェア投資(7兆円規模)に回すという「筋肉質な戦略」へと転換しました 。

特筆すべきは、ホンダが開発中の「次世代ADAS(先進運転支援システム)」です。これをEVだけでなくハイブリッド車にも広く搭載することで、ハイブリッド車の付加価値を高め、他社との差別化を図る狙いがあります 。
ホンダの真打ち、「Honda 0 Series」の革新性
ハイブリッドで体力を温存しつつ、ホンダが満を持して2026年に投入するのが、次世代EV「Honda 0 Series(ゼロシリーズ)」です。

「薄く、軽く、賢く」への挑戦
現在のEVトレンドである「大容量バッテリーで重厚長大」なクルマ作りに対し、ホンダは「Thin, Light, and Wise(薄く、軽く、賢く)」というアンチテーゼを掲げました 。
- Thin(薄く): 低全高なスタイリングと、それを実現する薄型バッテリーパック。
- Light(軽く): 独自の車体技術と小型「e-Axle」による軽量化。
- Wise(賢く): 独自のOS「ASIMO OS」を搭載し、クルマがユーザーを理解して進化する 。
ラスベガスで開催されるCES 2026(2026年1月)では、このHonda 0 Seriesの量産に向けたプロトタイプが披露され、世界初の「アイズオフ(視線離脱)」自動運転の全状況対応を目指す技術などが公開される予定です 。
ソニーとの協業「AFEELA」はどこへ向かうのか?
ホンダ独自の「Honda 0」に対し、異業種であるソニーと組んだ「ソニー・ホンダモビリティ(SHM)」の「AFEELA(アフィーラ)」は、全く異なるアプローチをとっています。

「移動するエンタメ空間」の具現化
AFEELAの最大の特徴は、徹底したソフトウェア体験の重視です。
- 圧倒的な知能: 車内外に40個以上のセンサーを搭載し、800 TOPS(毎秒800兆回演算)という驚異的な処理能力を持ちます 。
- PS Remote Play: 世界で初めて「プレイステーション リモートプレイ」を車載実装し、車内をゲーム空間に変えます 。
- CES 2026での新展開: まさに今、CES 2026にて「量産直前モデル(Pre-production model)」と、新たなコンセプトモデルが公開されます 。
「走りのホンダ(Honda 0)」と「体験のAFEELA」。この二刀流こそが、他メーカーにはないホンダグループの強みと言えるでしょう。
電池工場の「地政学」:オハイオ工場の劇的変化
EVの競争力を左右するバッテリー。ホンダの北米戦略において、2025年末に大きな動きがありました。

LGとの合弁工場を「完全子会社化」へ
当初、韓国LGエナジーソリューション(LGES)との合弁(JV)で建設が進められていたオハイオ州のバッテリー工場(L-H Battery Company)。 2025年12月、ホンダはこの工場資産を約29億ドル(約4300億円)で買い取り、完全子会社化(ホンダ主導)する方針を固めました。
これは、LG側の投資戦略の見直しと、ホンダ側の「バッテリー生産を自社でコントロールしたい」という思惑が一致した結果と見られています。2026年の稼働開始に向け、ホンダは自社の運命を握るバッテリー供給網を、より強固にグリップすることになります 。
カナダ工場の「戦略的延期」
一方で、カナダ・オンタリオ州に計画していた巨額のEVバリューチェーン構築(約1.7兆円規模)については、EV市場の減速を受けて約2年間の延期が決定されました 。 これは撤退ではなく、市場回復を見極めるための冷静な判断です。ホンダは既存のアリストン工場をフル稼働させつつ、タイミングを計っています。
日本市場の電動化:N-VAN e: と N-ONE e: の快進撃
視点を日本国内に移すと、ホンダは「生活の足」である軽自動車から電動化を推し進めています。
- N-VAN e:(2024年発売): 商用ニーズに応える実用性と、給電機能(V2H)などの付加価値で、配送業者だけでなく一般ユーザーからも注目を集めています。
- N-ONE e:(2025年9月発売): 「e:Daily Partner」をコンセプトに、都市部での日常使いに特化。発売直後の2025年9月には、国内EV販売シェアでホンダをトップに押し上げる原動力となりました。
また、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」を活用したエネルギーサービスも拡大しており、二輪車や小型モビリティを含めた「面」での電動化を展開しています 。
ホンダが見据える「2030年の景色」
2026年、ホンダは「Honda 0 Series」と「AFEELA」という2つの矢を放ち、オハイオの電池工場を稼働させます。 一時の「EV一辺倒」から、ハイブリッドで収益を支えつつ、勝負どころで巨額投資を行う「柔よく剛を制す」戦略へとシフトしたホンダ。
ソニーのデジタル技術、LGの電池技術(の資産)、そしてホンダのクルマ作り。これらが融合した時、私たちが体験する「移動の未来」は想像以上にエキサイティングなものになるはずです。
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