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値下げのように見える7月からの電力料金

6月1日より電力各社の値上げがスタート

2022年11月28日、大手電力各社は経済産業大臣に対して電力規制料金についての値上げ申請を行いました。しかしながら、大幅な値上げ計画となっていることから修正指示があり、値上げ幅を抑えた形で申請を行い、2023年5月19日、その認可が下りて6月1日から北海道・東北・北陸・東京・中国・四国・沖縄など大手電力7社が電気料金の値上げを発表しています。

大手電力料金値上げ エレクトリックライフ ELECTRICLIFE

これにより、7月から改定後料金の支払いが始まります。(※東電は低圧自由料金について7月1日より値上げ)

2023年4月から導入が開始された「レベニューキャップ制度」により、電力を送電するための送配電設備の利用料金も値上げされており、ジリジリと電力を利用するためにかかる費用が高くなっています。

値上げをしない中部・関西・九州電力

一方で値上げに対して慎重な大手電力会社もあり、中部・関西・九州電力については値上げを行っていません。昨年に比べて停止していた発電所が稼働を再開していることや、液化天然ガス(LNG)などの資源が下がり始めていることもあり、価格競争で優位に立つために、少し先を見た対応をしているようです。

今年は比較的落ち着いている電気料金

実は昨年(2022年)6月末ごろの電気代は大変な価格になっていました。日々発表されている電力卸売り市場での電力価格を見てみましょう。まずは、今年2023年6月30日の東京エリアの価格です。全時間帯の平均単価は1kWhあたり14.51円で、最高単価でも16.98円です。

電力卸売り価格 大手電力料金値上げ エレクトリックライフ ELECTRICLIFE

一方で、2022年6月30日の電力卸売り市場での1日の価格は、1kWhあたり、なんと64.18円です。最高価格は1kWhあたり200円というとてつもない金額でした。

電力卸売り価格 大手電力料金値上げ エレクトリックライフ ELECTRICLIFE

燃料調整費を比較してみると、2022年6月の東電管内の低圧では2.97円/kWhで、2023年6月は-1.78円/kWhとなっているため、燃料調整費がマイナスに転じています。(実際にはここに国の価格激変緩和補助金が7円適用されているため、-8.78円/kWhとなります。)

この原因として考えられているのが、昨年の6月末は非常に暑い日が続き、8月並みの気温を記録していました。大陸で始まった軍事侵攻から3か月程度しかたっておらず、戦闘は激しさを増し、エネルギー資源の確保の先行きが非常に不透明な状況でした。

更に悪いことに、国内ではいくつかの火力発電所が稼働を停止しており、また今ほど原発も稼働していませんでした。その影響もあり電力がひっ迫していたわけです。

今年はこれら発電所の稼働再開や、長引く戦争の中、エネルギーの供給経路も見えてきたため、先の見通しが見えてきているとも言えます。

7月の電気代は安く見えるも・・・

これから夏になり、クーラーなどの利用による電力消費が進む時期でもあります。しかしこのような時期でも、2022年の7月は4.15円だった燃料調整費は、7月もマイナスになっており、-2.95円/kWh、これに国の補助金7円が乗りますので、-9.95円/kWhとなるため、電気代は安くなったように感じるかもしれません。

電力卸売り価格 大手電力料金値上げ エレクトリックライフ ELECTRICLIFE

電気・ガス価格激変緩和対策は9月使用分まで

この燃料調整費に対する価格は9月使用分までですから、10月の支払い分までは適用されます。11月になればまた寒い時期がやってきて燃料調整費が高騰してくるわけですが、補助金は今のところその手前で終了してしまいます。

昨年と比較して原子力発電所や火力発電所が稼働しており、すでに補助金がなくても燃料調整費がマイナスに転じていることから、安心はできないものの比較的料金は安定してきています。

こうなると、中部・関西・九州電力の判断は非常に先を見た良い判断だったのではないでしょうか。

しかしながら、再生化のエネルギーの比率も徐々に増えているとは言え、まだまだエネルギーの殆どを輸入に頼っている日本では、エネルギー資源の有効活用を真剣に考えていかなければなりません。

現在ガソリンと電力・ガスに対して補助金が適用されていますが、これらは税金を使っているわけで、将来何らかの形で国に回収されなければならないお金です。大手7社の値上げは本当に必要だったのか?激変緩和対策は必要だったのか?すべてに疑問がのこります。

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