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EVに不可欠なリチウムの採掘を行うシグマ・リチウム

2023年にテスラが買収しようとしたリチウム採掘・生産

シグマ・リチウム社はカナダのバンクーバーに本社があるリチウム金属を生産している企業です。採掘は主に子会社であるシグマ・ミネラソン社を通じて、リチウムの生産量で世界5位のブラジルで行われています。第5位といっても2022年のデータではブラジルの生産量は全体のおよそ2%程度の割合しかなく、1位は世界の半分近くを占めるオーストラリアとなっています。

シグマ・リチウム sigma lithium Electriclife エレクトリックライフ

リチウムは電気自動車(EV)のバッテリー生産に欠かせない物質で、その資源の獲得合戦は各地でヒートアップしています。

EV生産で世界をリードするテスラ社は、EV用バッテリーについてはCATLやLGエナジーソリューション、パナソニックなどから調達していますが、自社でのバッテリー量産化に向けてリチウムの調達を検討しているようで、2023年2月ごろのニュースでは、シグマリ・チウムの株式買収の話題も持ち上がっていました。

リチウムの生産量・埋蔵量はオーストラリアが1位

リチウムの埋蔵量でみると、こちらもオーストラリアが全体のおよそ7割を占めていて、2位チリ、3位アルゼンチンと南アメリカが多く、ブラジルは下のグラフで「赤」の部分で、全体の0.5%で埋蔵量としては世界第7位となっています。ちなみにシグマ・リチウム社のあるカナダのリチウム埋蔵量は世界第6位で全体の1.2%となっています。

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ブラジルのミナスジェライス州のリチウム鉱床

ブラジルの南東部にあるミナスジェライス州は、かつてゴールドラッシュの時代には金鉱床が発見され、金採掘のために多くの人たちが集まる地域となった場所です。このミナスジェライス州の北東部にあるバレ・ド・ジェキチニョニャ地域は「リチウム・バレー・ブラジル」と呼ばれ、リチウムの採掘から生産までに多くの投資が集まっているエリアです。

他の国や地域にはより多くの埋蔵量があるにもかかわらず、その絶対数が少ないブラジルのこのエリアに投資があつまる理由として、リチウムの品質が良く、採掘にコストがかかりにくいという点があるようです。通常リチウムの採掘には大量の薬品や水が必要になるのですがここではそれらを必要としないため、採掘による環境負荷も少ないという事です。

更にブラジル政府がこの地域での採掘に対して税制のインセンティブや資金提供などの支援を行うプログラムを行っていることで更に投資を集めています。

グロタ・ド・シリロ・プロジェクト

シグマ・リチウム社は、このエリアでアラスアとイチンガという町にある4か所のリチウム鉱床で採掘していて、リチウム採掘の複合施設「グロタ・ド・シリロ・プロジェクト」では、グリーンテックを活用し環境負荷を少なくする新しい採掘方法を開発しています。利用する水は100%リサイクルされ、採掘時の廃棄物は100%水分を取り除き、水分の有効利用や所蔵場所の効率向上に役立て、利用する電力は100%再生可能エネルギーとなっています。

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サステナブルなリチウム生産に投資が集まる

このように新しい採掘方法をスタンダードにしていく事で、地球環境を守りながら、脱炭素に必要な鉱物を活用していく動きには、更に投資が集まり、現在シグマリチウム社の生産能力は27万tとなっていますが、これが2024年には、年間76万tを超える生産能力まで引きあがるとしています。

EVなどの需要により、2023年はリチウムの生産が世界的に進み、供給過多によりリチウムの価格が下落するという状況に陥りました。このような状況により資金繰りが悪化しても持続可能な生産性を保つために、グロタ・ド・シリロ・プロジェクトのような取り組みによって資金調達を安定化したいとの目論見もあるようです。

ブラジルでは、EVのバッテリー生産工場への投資も進んでいるため、2050年カーボンニュートラルのためには更にリチウムの需要は急速に拡大していくことでしょう。

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