昔からのプランが30%、最近のプランは5%程度の値上げ
東京電力エナジーパートナー(東電EP)は、現在世界中で起こっている資源価格の高騰により、2023年1月23日に、2023年6月1日から規制料金の値上げを発表しました。
ニュース報道では、まるで「全員が3割の値上げ!」のように聞こえてきますが、そうではありませんので、今回の値上げを正しく理解し、対策を考えていく必要があります。
既に昨年から比較して電気料金全体は30%程度上がっていますが、いわゆる「電気を使った量」の電力量料金は値上げされておらず、別項目となっている「燃料調整費」という発電に使う燃料価格部分が毎月のように値上げされてきています。この燃料調整費というものは、時期や資源国の燃料価格などにより左右されて変動するものです。
今回の値上げは、電力使用量部分が値上げされるという事です。
東電EPの電気料金には規制料金と自由化料金がある
東電EPが主に一般家庭向けに提供している電力料金(低圧電力)には、規制料金と自由化料金があり、簡単に言ってしまえば東京電力時代の古い契約のままか、それとも2016年から始まった電力小売自由化に対応して東京電力エナジーパートナー(東電EP)社が用意した自由化後の新プランかという事になります。
今まで一択だった電力会社が、日本電力卸売市場から購入した電力を消費者に自由な値付けで販売することで、価格やサービスでの競争が発生し、電気料金が安くなるため、消費者にとってメリットがあります。東電EPも1つの電力小売事業者として市場から購入して新プランをスタートしました。
これにより、東電EPでは、旧プランは廃止して新プランに移行してもらおうとしたわけですが、旧プランから変更しない人も多くいたため、旧プランが残った状態で今日まで来ています。
規制料金の場合、一般的に、多くのユーザーが「従量電灯B」という契約であり、自由化後のプラントしては、スタンダードSがその後継にあたります。切り替えないユーザーが多くいたのは、この料金が全く同じだったからで、切り替えるメリットを感じなかったところにあります。
規制料金と自由化料金では燃料調整費が大きく変わってくる
元々関東圏で電気契約をできるのが東京電力しかなかったため、一社独占状態になってしまっています。生活インフラとなっている電気代を競合が居ない中、勝手に値上げされてしまっては困るため、法律で価格の縛りを設けています。これが「規制料金」です。価格を変更するためには国に申請して許可を得なければならない事になっています。
自由化料金については、この規制が撤廃されているため、企業が自由に料金を設定できます。そのため価格競争により、東電より安いプランが多く出てきました。しかし、資源価格が上昇し、燃料調整費が高騰してくると話は変わってきます。
規制料金については燃料調整費に上限が設けられていて、5円13銭となっています。一方で自由化料金については燃料調整費に上限が無い状態です。
電気代と燃料調整費の両方で東電の経営が圧迫
2023年1月の燃料調整費は12.99円でした。下の表は1月23日に発表された、東電EPの見直し料金ですが、最初の表はスタンダードSで、電力量料金1kWhあたりの料金(120kWhまで)を見ると32円87銭となっています。一方で従量電灯Bの価格を見ると25円01銭となっています。2022年8月までは、燃料調整費が5円10銭でしたので、どちらのプランでも料金は変わらなかったのですが、9月には5.91円となり、スタンダードSの方が価格が高くなったため、逆転現象が起こり、従量電灯Bへプラン変更したいという声も上がるようになってきました。
日本電力卸売り市場の価格も高騰する中、燃料調整費の差額およそ7円についても、東電EPが負担しなければならなくなったため、今後も事業を安定的に継続させるために、2023年6月1日からの値上げに踏み切った形になります。
つまり、ニュースで報道されている3割程度値上げされるのは「規制料金」のプランを利用している人という事になり、自由化後の料金に乗り換えている人については、全体で5%程度の値上げとなっています。
2023年1月の燃料調整費が基本の電気量料金に含まれる形になります。
先の表の一番右側の列が値上げ後の料金設定となっていますが、こちらは燃料調整費を含まない料金である事に注意してください。従量電灯Bの料金については、25円01銭(燃料調整費含む)から34円84銭(燃料調整費含まない)となり、ここから燃料調整費が別途かかってきます。
つまり、今回の値上げで注意してほしいのは電気代が規制料金で30%値上がりし、自由料金で5%前後値上がりするという事であり、電気量料金だけで考えたら、従量電灯BもスタンダードSプランもどちらも43%の値上げという事になります。ただし、電気量料金と燃料調整費を合わせて「電気代」になりますので、これで言えば30%と5%程度の値上げになるという事です。
現在最も安い東電EPの「電化上手」プランですら、電気代ベースで考えて深夜料金28円11銭(15円12銭+12円99銭)から31円80銭+燃料調整費になるということです。
燃料調整費はマイナスになることもある
燃料調整費については、1年以上前はマイナスになることも多々ありました。しかし昨今の資源高では、2023年1月の燃料調整費12円99銭以下にするのは難しいと考え電気量料金に盛り込んだ形になります。そのため、電気の需要が減ってくる春や秋などは、明細表に燃料調整費マイナスで乗ってくる事になります。ただし大幅な値上げ後の値引きですから、以前から見れば大きな値上げ状態です。
4月からはレベニューキャップ制度により託送料金が更に上乗せ
さて、追い打ちをかけるように2023年4月からはレベニューキャップ制度といういわゆる「送電線の利用料金」が発生します。これは、予定では0.2円とされていますが、これが別途さらに上乗せされてきます。
どのように対策していくべきか
いよいよ大幅値上げがやってくるため、自宅でのエネルギー消費方法についていろいろと検討していかなければなりません。電気料金が資源高により上がり、当面下がることが無いという見通しが立ったと言う事ですからガス料金も当面値下げされないと見てよいでしょう。
ピークを避けた電力利用を考えていく
今、日本の電力事情で最も重要なのは節電と共にオフピークでの電力利用です。正直「節電」と言われても中々今までの習慣を変えていくというのは難しいものです。ただし当然従来通りの電力使用量であれば高額な電気料金を払い続ける事になります。こうなると自宅の設備の見直しなどもかなり重要になってきます。
オール電化へのシフト
電気代が上がったのにオール電化?と思う人も多いと思いますが、電気の他に一般家庭で使っているエネルギーとしては、ガスや灯油です。これらは電気を作る元となる資源です。今これらが値上がりしています。そして今後もこの資源料金が高止まり、値上がりしていく可能性が懸念されています。
オール電化にすることで自宅のエネルギーを「電気」に一本化することで、一目で自宅で使っている全てのエネルギーの状況を「見える化」することができるため、いつ節電をすべきか、どのようにエネルギーを使っていくかを理解することができます。
更に、自宅のエネルギーが「電気」になることで蓄電池との併用により、ピーク時の電力を電力会社から買わずに、深夜などの電力使用量の低い時間の電力を蓄えて利用することが可能です。
オール電化へのシフトはリフォームに費用が掛かりますが、それをしてでも自らが使っているエネルギーをしっかりと把握する必要があります。特にこれから家を購入しようと思っている人はエネルギーの「見える化」と「ピークシフト」は非常に重要です。
節電するにも自宅のエネルギーの使用状況が分からなければ効率よく取り組むことはできません。日本の電気は殆どが化石燃料です。だからこそ電気に変えてエネルギー量を電化することで「見える化」して化石燃料自体を有効活用するという事です。
自家消費のための太陽光発電の導入
従来はFIT制度による「売電」により電気代の負担を軽減して居ましたが、自家消費のための太陽光発電の導入は有効です。昼間に自宅に人がいる場合などは日中の高い電気代を太陽光からのエネルギーで賄う事ができます。もし、日中人がいない場合は、帰宅後に利用する電力を蓄えておくための蓄電池の導入なども必要になってきます。
太陽光発電や蓄電池の導入については今後も地方自治体から補助金などが継続的に出されていくようです。
>>太陽光発電の無料一括見積もりなら【グリエネ】
>>蓄電池の無料一括比較サイト【タイナビ蓄電池】
電気自動車はそれでもガソリン車より維持費割安
「電気代が上がったら電気自動車に乗っている人たちは大変だ!」という声も聞こえてきますが、そもそもガソリン車と比べて、自宅充電の場合、燃料にかかる費用は1/3~1/5であったため、今後さらに電気料金が上がる事になったとしてもガソリン車と比べて維持費の面には大きなメリットがあります。万が一、更に電気料金が上がるような事があった場合、それは資源高という事になりますので、ガソリン代も上がるという事になります。
電気自動車の充電もオフピークに行われます。その為、電力がひっ迫しているような時間帯での充電で行っておらず、むしろ自宅でエネルギーを調達しているため、その「量」をはっきりと意識することもできます。つまり、1家庭で使う電気量は増えるものの、エネルギーが見える化されていることにより、その有効利用と節約につながります。それは電気の元である「原油」や「石炭」、「天然ガス」の有効利用と節約につながるという事です。
発電所からくる電気、特に再生可能エネルギーによる発電は、必要のないときにも発電し続けているため、そのエネルギーを蓄え必要な時に取り出すという事を考えていく必要があります。
東電以外も値上げ?
東京電力の大幅値上げは、他の電力小売事業者もそれにならって値上げをしてくることになります。東電にならい、2023年1月の燃料調整費を盛り込んだ電気量料金になってくる事でしょう。すでに昨年までに多くの電力小売事業者が淘汰されてきただけに、ここまで生き残った電力会社にとっては東電より安く、また他のサービスを連動した付加価値などを提供することによりユーザー獲得のチャンスが来たとも言えます。消費者である私たちも冷静に電力小売事業者を判断していく必要があります。
以下の一括見積サイトなどで料金比較などを行い、一度色々な業者から見積もりを取ってみるのも良いでしょう。