令和7年度の補正予算が成立
令和7年度の補正予算が成立し、2025年12月16日に経済産業省が発表した令和7年度補正予算案には、日本の脱炭素社会への移行(GX:グリーントランスフォーメーション)を加速させるための具体的な支援策が盛り込まれました。

特に、運輸部門の脱炭素化を担う電気自動車(EV)をはじめとするクリーンエネルギー自動車(CEV)の補助金は、2026年度(令和8年度)以降、外的影響を受け、従来のものと考え方が変更になる見通しです。
本記事では、令和7年度補正予算案で示されたGX支援策の全体像を概観しつつ、電気自動車に関連する補助金が、他の政策と比較してどのように変化していくのか、その詳細と背景にある国の戦略を解説します。
GX支援策の基盤と2026年度のCEV補助金予算
日本政府は、2050年カーボンニュートラル(CN)の実現と経済成長を両立させるため、「GX推進法」に基づき、2023年度からの10年間で官民合わせて150兆円を超えるGX投資を促すことを目指しています。この巨額な投資を先行して支援するため、政府は20兆円規模のGX経済移行債を発行しており、この償還原資として将来的にカーボンプライシング(炭素賦課金や排出量取引制度)が導入される計画です。

今回、経済産業省の令和7年度補正予算案では、GX推進費として約4,000億円が計上されており、この中には、令和8年度分(2026年度)のCEV補助金として、前年と同額の1,100億円が計上されていることが確認されています。この予算措置は、クリーンエネルギー自動車の導入支援が、引き続き国のGX戦略における重要な柱であることを示しています。
電気自動車(EV)補助金運用の転換
2026年度に向けて、CEV補助金の予算規模は維持される見通しですが、その運用方法には見直しが計画されています。この見直しの背景には、日米関税協議の合意があります。
公平性確保のための制度変更の方向性
従来のCEV補助金制度について、米国通商代表部(USTR)は、主に日本企業が生産するFCEV(燃料電池自動車)に対してBEV(バッテリーEV)よりもはるかに高い補助金(FCEV最大255万円に対しBEV最大85万円)が提供されている点などを指摘していました。
この指摘を踏まえ、日米関税協議の合意に基づき、CEV補助金の運用において「車種間の競争条件が公平性を維持できるよう」適切な見直しを行うこととされています。
具体的には、今後の補助上限額は、車種ごとの標準車両価格に一定の割合を乗じた金額とする方向で検討が進んでいます。これにより、特定の車種やメーカーに偏ることなく、公平な競争環境を整備し、市場メカニズムを通じた普及を促進する狙いがあります。
米国の自動車メーカーについてはどうか?
現在進行中の令和6年度補正と令和7年度当初予算でのCEV補助金では国産のEVを優遇する方向にありました。しかしながら、米国を意識した対応となれば、米国自動車メーカーであるテスラに対する補助金や、今後米国のリヴィアンやルシードなどがどのような動きを見せるかなども気になるところです。

「制度・支援一体」とマルチパスウェイ戦略
この補助金の見直しは、日本の自動車産業が掲げる「マルチパスウェイ戦略」を実現するための「制度・支援一体」の原則と強く結びついています。
日本の自動車産業の基本戦略は、EVだけでなく、FCV(燃料電池車)、ハイブリッド車(HEV)、合成燃料など、多様な選択肢(マルチパスウェイ)を通じてCNを目指すことです,。この戦略の下で、CEV補助金の見直しは、単に車両価格を補助するだけでなく、ライフサイクルの観点も踏まえた制度的な措置と一体的に検討されています。

例えば、2025年度からは、CEV補助金において、自動車メーカーが国際的に認められるCFP(カーボンフットプリント)低減に資する鋼材を導入する計画・取り組みを評価し、最大5万円の補助金が加算される措置が新設されています。これは、車両の使用段階だけでなく、製造段階でのGX(グリーントランスフォーメーション)への貢献を評価するものであり、サプライチェーン全体での排出削減を促す方向性を示しています。
さらに、自動車分野のCN実現に向けた取り組みとして、令和8年度の税制改正においては、自動車の取得時における負担軽減や、重量及び環境性能に応じた保有時の公平・中立・簡素な税負担のあり方についても検討され、結論が出される予定です。
クリーンエネルギー自動車関連補助金の概要について
以上のような内容を踏まえて、クリーンエネルギー自動車(CEV)導入促進時補助金は、令和7年度補正予算額としては1,100億円、CEV普及に向けたV2Hや急速充電器など充電・充てん設備導入については500億円となりました。充電・充てん設備導入については、昨年度の補正予算額360億円から大幅に増額された形になります。
他のGX支援策との比較(民生部門の集中投資)
CEV補助金が運輸部門における「成熟領域」への支援である一方で、令和7年度補正予算案では、家庭や建築物などの民生部門においても、大規模なGX先行投資が継続されます。
特に、「みらいエコ住宅2026事業」が国土交通省と環境省の連携により創設され、子育て世帯や若者夫婦世帯を対象とした「GX志向型住宅」や「長期優良住宅・ZEH水準住宅」の新築に対し、総額1,750億円の支援が行われます。
その他にも、家庭部門の省エネ化を加速するため、以下の事業に予算が計上されています。
| 事業名 | 所管省庁 | 予算規模(億円) | 支援対象 |
| 断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業 | 環境省 | 1,125 | 高断熱窓への改修(最大100万円/戸) |
| 高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金 | 経済産業省 | 570 | 高効率給湯器の導入 |
| 既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業 | 経済産業省 | 35 | エコジョーズ/エコフィールへの取替 |
これらの民生部門向けの補助金もまた、高性能な建材や設備の普及を促し、従来の製品との価格差を縮小させることを目指す「先行投資」の位置づけです。将来的には、これらの補助事業の出口(自立化)を見据え、規制・制度的な措置の強化も並行して進められます(例:ZEHの新定義「GX ZEH」の創設や住宅トップランナー制度の拡充など)。

このように、CEV補助金と住宅関連補助金は、いずれもGX経済移行債を財源とする「アメとムチ」戦略の一環であり、初期の需要を喚起し、最終的に市場が自立的にグリーンな製品を選択するよう、規制・制度と一体的に運用される点が共通しています。
2026年以降のエコカー補助金の展望
すでにいくつかのメディアからは、2026年以降のエコカー補助金についての具体的な数値の発表がありましたが、経済産業省では12月17日の時点で、まだ詳細が決定していないとの事でした。
2026年度以降のCEV補助金は、予算規模こそ維持されるものの、日米関税協議の合意を受けた運用見直しにより、公平性を重視した補助設計へと移行します。これは、従来の補助金が車種間で偏っていた点を是正し、日本の基本戦略であるEV、FCV、合成燃料など「マルチパスウェイ戦略」を、国際的な競争条件を考慮しつつ推進するためのものになるといえます。
今後は、車両そのものの電動化性能に加え、車両のライフサイクル全体(製造段階のグリーン鋼材利用など)での環境貢献度(CFP)が、補助金制度や税制の検討にますます深く組み込まれていくでしょう。これは、何年もCEV補助金を出し続けていて、補助金が単なる導入支援ではなく、競争力のあるGX型サプライチェーンの構築を促すための戦略的なツールへと移行していく必要性があると「ようやく」日本が動き出したという事でしょう。
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