電気料金が決まる仕組みを理解しよう!
日本のエネルギー自給率は非常に低い
日本は今、電力需給について大きな問題を抱えています。私たちの暮らしの中では安定して供給されているように見える「電気」ですが、この電気を作るためのエネルギーの殆どを輸入に頼っています。以下が日本のエネルギー自給率とヨーロッパを中心に経済・貿易などの協力を行うOECD(経済協力開発機構)に加盟する国々の自給率の比較です。
日本はたったの12.1%であることから、加盟38か国中、35位と先進国の中ではとても低い水準にあります。これは、電気を作るためのエネルギーである石炭や石油、液化天然ガス(LNG)などをほとんど輸入に頼っていることになります。
新型コロナウイルスの影響により、これらのサプライチェーンも不安定な状況にある中、ロシアからの天然ガスの輸入が難しくなれば、電気代にさらに影響してきます。電気代が高くなるだけならまだ良い方で、そもそも日本全体で使用する電力量を賄いきれないという事態にもなっています。
原子力発電所や火力発電所の停止
東日本大震災の際、福島にある原子力発電所のメルトダウンは日本の原子力発電所最大の事故として私たちの記憶に残りました。原子力発電所の安全でクリーンな電力を供給するというイメージは一気に「危険なもの」となり、世論は原子力発電所の稼働停止へと動いていきました。少ないエネルギーで多くの電力を作ることができる原子力発電所の停止は、電気代高騰の始まりとなりました。
それだけでなく、電力需給のひっ迫にもつながりっています。再生可能エネルギーなどへのリプレイスが叫ばれる中、これらインフラの設備が進まず、日本の発電の中心は火力発電所となりました。火力発電所はその名の通り「火力」で電力を作るため、多くのCO2を排出することになります。今後世界はCO2削減へと向かう中、日本では火力発電所をフル稼働させなければならない状態となっています。
更に悪いことに、地震の多い日本では大きな揺れの度に火力発電所の安全チェックや機器の故障などにより、その稼働率が落ちています。2022年3月16日に発生した福島県沖を震源とする最大震度6強を記録した地震では、合計14基の火力発電所が停止し、647.9万kWの電力供給が止まり、東京エリアで最大210万戸、東北エリアで16万戸の停電が発生しました。2022年5月の段階で、多くの火力発電所が復旧したものの、まだ復旧できない発電所やその後に停止してしまった発電所などもあり、今後も電力需給に予断を許さない状況です。
電気にも卸売市場がある!
物の値段がその需給によって決まるのと同じように、電力に関しても、電力が余っている時には電気は安く、また電力が沢山使われる時には、電気代が高くなります。電力の自由化により、多くの小売業者が参入するようになり、様々な料金体系やサービスメニューが用意されるようになりましたが、これら小売業者が電力卸売り市場で電気を購入し、その電気料金に利益をのせて販売しています。
日本唯一の電力卸売市場「JPEX」
この電力の売り買いが行われ、電気代が決まっていく市場を運営しているのが、一般社団法人日本卸電力取引所(JPEX)です。ここでは、30分ごとに電気料金の入札を行い、50kWh単位の電気量を取引しています。小売業者は翌日の各時間帯ごとに、「単価が5円だったら1,000kWh分の電力を購入する」のように入札し、発電所などで発電した電力を売る側は「単価が10円だったら800kWh分販売する」のように市場に売り物を出していき、マッチングさせていきます。
入札によって翌日の電気料金が決まり、30分おきの1kWhの単価が決まっていきます。例えば下のグラフは2022年5月9日(月)の東京の電気料金ですが、5月は比較的冷房も暖房も使わずに過ごせますが、少し寒い日でしたので、午前10時の段階の価格を見ると28.05円/kWhと比較的高めになっています。
一方で、下のグラフを見てください。2022年5月8日(日)の電気料金ですが、6時30分~15時30分までの金額はほぼ「0」円。実際は0.01円/kWhという単価になっています。この日は日曜日で企業なども休みが多く、また天気も比較的良かったため、再生可能エネルギーによる発電も多いので、電力は投げ売り状態です。
このシステムプライスは、毎日30分おきに変動していて、季節や電力の利用量により変化していきますが、冬場は特に電力需要が高まるため、卸売市場の価格も高止まりを起こします。2021年1月には、市場価格が一時250円/kWhに達したこともあり、JPEXでは、システムプライスの上限値を定めるという処置を行う事になりました。
>>一社)日本卸電力取引所 JPEX:Japan Electric Power Exchange
一般的な「低圧」は1年間で契約
この価格変動は私たちの生活に直接的にかかわってくるものではなく、電力小売業者がこれら電力需給を勘案して、1年の契約で電気料金を設定します。
例えば1年間どの時間帯でも一律26円/kWhのプランや、昼間は32円/kWhと割高ですが、深夜23時から明け方6時までは18円と割安など、様々な料金プランが用意されたりしています。これら電力小売りに関するより詳しい料金は「エネチェンジ」などで見ることができます。
倒産・撤退する小売業者が出る理由
先ほどの市場価格で見るように、太陽光発電所などの登場により、日中天気のいい日などは、太陽光発電による電力が市場に大量に入ってくるため、システムプライスも低くなる傾向にあります。企業が休みで、晴れ間が続く土日などは、電気代が0円で手に入りますが、同時に買ってくれる人も少ないという事です。
一方で曇りや気温が低くなるとその価格が跳ね上がります。更に日本は火力発電所が発電の殆どを担っているため、昨今の石油や石炭の高騰、そしてロシアからのLNGの輸入停止などにより、発電コストは上がり、これらが卸売市場の値上がりにつながっています。そして更に地震の影響により火力発電所が稼働できないという状況にもなり、さらなる高騰を招いています。2022年1月は価格制限が入ったとはいえ、1kWあたり80円という日が続きました。小売業者が売っている電力はおおよそ25円~30円/kWh程度ですから、契約者が多ければ多いほどその差額の赤字が発生するという事になります。1年前は価格制限がなく、250円まで行っていたわけです。この時から多くの電力小売業者が撤退、倒産に追い込まれていきました。
今後も高騰が予想される電気料金
今後も価格の高騰が予想される電気料金ですが、電気料金が決まる仕組みが分かっていれば、ピークを避けた電力の活用が重要だという事に気づきます。電気料金のプランでは、この市場に連動したプランなども用意されるようになったため、電力を上手に活用できる人などはそういったプランなどを選ぶのも良いかもしれません。
日本全体の電力問題が解決するためには、まだまだインフラ整備などに時間がかかります。私たちが電力の知識をつけて、まずは自宅でどれほどの電力を使っているのかを知り、無駄をなくし節電や省エネをこころがけ、最適な電気の使い方を身につけることが最も早い電力需給問題の改善につながることでしょう。
関連リンク
- 資源エネルギー庁「日本のエネルギー」2022年2月
- OECD(経済協力開発機構)
- 2022年3月の東日本における電力ひっ迫(資源エネルギー庁)
- 発電情報公開システム
- 2030年におけるエネルギー需給の見通し(資源エネルギー庁)
- JPEX:Japan Electric Power Exchange
※関連リンクは情報ソースでもあります。