BYD AUTOのディーラーにてATTO3を試乗!
2022年7月に日本上陸を発表してから、たった半年後の2023年1月31日に日本市場でATTO3の販売を開始し、同時に日本人の商習慣に合わせてディーラー網まで発表したBYD AUTO。正確にはまだその殆どがディーラー開業準備室という事で、他メーカーのディーラーを間借りして、展示車や試乗体験を行っていますが、せっかく日本の公道を乗れるという事ですから試乗してまいりました。
コンパクトSUVなのに意外と大きく見える
第一印象はコンパクトSUVなのにやや大きく見え、そのデザインは洗練されていて、どこか日本車っぽさも兼ねそなえているようなデザインだと感じます。
横から見ると風車のようなかっこいいデザインのホイールに、ボディを流れるシャープなラインと生物を感じさせるような柔らかいカーブがあるデザインのボディラインが印象的です。充電ポートは進行方向右側前(運転席側)に普通充電と急速充電の両方が格納されていて、手でプッシュすれば充電ポートが開きます。タイヤは18インチでホイールベースは2,720㎜と2,700㎜の日産リーフとほぼ一緒です。
今回は比較のために事務局の日産リーフで出かけました。BYD AUTOに到着するまでの間、日産リーフの車内の広さと大きさを体にしみこませておきました。全長は4,455㎜で、リーフは4,480㎜と実はリーフの方がちょっとだけ長いです。車幅は1,875㎜で1,790㎜のリーフより8.5cmほど広くなっています。高さもSUVだけあって1615㎜と高く、リーフの1560㎜よりも5.5cmほど高くなっています。
先進的な「クジラ」のようなインテリア
BYDは2023年度の計画として、ATTO3を皮切りに夏ごろにコンパクトタイプのDOLPHIN、ハイエンドなセダンSEALと3車種をリリースするとしています。その第1弾としてのATTO3のインテリアはとても普通の車からはかけ離れたデザインです。どことなくネイビーな部分とシワの入った白い部分の配色とその形から「ザトウクジラ」を彷彿とさせるデザインです。次に予定されているドルフィンやシールの海洋生物ですから、そのイメージに合わせたのでしょうか。未来感があってとてもいいです。
シートの座り心地が良く、普通のバケットシートよりもホールド感があり、座った時に洋服にグリップするようになるため、革やファブリックのシートのように体が滑るような事がまったく感じられません。それなのに体がひっかかるような感じもない。特に首元にフィットするヘッドレストがいい感じ。独特なエアコンの吹き出し口のデザインも何となく潜水艇をイメージさせます。
そしてシフトレバーは飛行機のように親指でホールドしながら上下に動かします。思わず「発進!」と言いたくなるようなレバー。パーキングにする場合はレバー下に光る「P」ボタンを押すだけです。他にも自動ホールドやセンサー、走行モードなどを切り替えるボタンが周りについています。
全てのドアノブにはスピーカーが内蔵されていて、車内の音響を迫力あるものにしています。ドアノブも先進的で、手になじむホールド感があり、手を乗せて手前に回すようにスライドさせてドアを開きます。とても独特。ドア下のポケットはオレンジ色のゴム張りになってるため、多少大きめのモノを入れてもしっかりホールドして、ドアの開閉時にモノが落ちにくくなっています。
注目すべきはこの12.8インチのタッチスクリーンです。既にシフトレバーやハンドル周りにも必要なボタンは装備されていますが、エンターテイメントやナビのためにこの巨大スクリーンが用意されています。ナビ画面などでは少し先などを見たいという時に、このスクリーンの縦横をハンドル左側についているボタンで切り替えることができます。
せっかくの大画面ですが、残念ながら現段階ではNETFLIXなどの動画サービスに対応していないようです。しかし、OTA(Over the Air:ネット経由でデータが送れる)アップデートに対応しているため、いつかソフトウェアのアップデートで見れるようになるのでしょう。ちなみに中国市場では、カラオケモードが搭載されていて、車内で移動中にカラオケを楽しめるようです。日本人にこそほしかったかも。これもOTAアップデートに期待しましょう。
そしてリアシートの居住性もバッチリです。足元も広くフロント同様に人の体にフィットして滑りにくくなっています。フロントシートの首元にある穴がリアに座った時の乗り降りの際に手でホールドできるので、これもかなり便利です。
そして解放感あふれるスカイルーフは屋根全体的に広く広がり、フロント側のみオープンすることができます。夏の暑い時期などは、電動シェードで、ワンタッチでルーフにシェードがかけられます。
このスカイルーフは全車標準装備となっていて、リアシートに座った人の広々とした車内空間はBYD ATTO3を購入した人は全員手に入れることができるということです。
そしてリアのトランク部分ですが、こちらはみかけよりもかなり狭い印象です。横幅が日産リーフよりも8㎝広いわりに、ここの開口部分は日産リーフの方が広く、中の積載容量も明らかに日産リーフにまけています。よくわからない出っ張りが非常に気になります。
リアシートを倒せば、沢山の荷物は積めますが、4人乗りで旅行に行こうとすると荷室がかなりきつい状況かもしれません。その分日常的にリアシートの広さは確保されています。
フランクについては、テスラなどのように特に収納があるわけではないですが、収納をつければよかったんじゃないか?と思わせるくらい空間が確保されています。小さい子供や使用済みおむつや犬の糞など匂いが気になるものなどはフランクがあると非常に助かります。このあたりは今後メーカーオプション品またはAliexpressなどで社外のフロント収納パーツなどが出現してきそうなほど空間があります。
走行性能は、乗り心地重視
走りの感じはどうかというと、まずEVとして加速感はかなり抑えてあり、だれが踏んでも無理な加速にならないようになっています。そのため発進や停車の時の車の挙動も安定していて、乗っている人が気持ちよくいられます。また、低速(30km/h以下)では周囲に車の存在を知らせるためにモーター音が大きくなるような設計になっているようです。車内は前席十分なスペースが確保されていて、走行中は運転手を含めすべての人が快適に過ごせます。
残念ながらワンペダルドライブにはならないようで、従来のオートマチック車を運転している感じです。それでもEVとしての静かさやギア切替の無いリニアの加速感があり、やはりEVの運転のしやすさは感じます。
ATTO3 VS 日産リーフ
さて、今回試乗するまでに乗ってきた日産リーフとATTO3を比べてどうかという事です。日産リーフは2023年夏ごろに発売が予定されるBYDのDOLPHIN(ドルフィン)と比較されることが多いですが、実はこのATTO3との比較をすべきだと思います。というのが、日産リーフは小さそうに見えて実はかなりでかいです。そのため、ドルフィンよりは全長も20㎝も長く、ドルフィンのサイズ感から察するに、車内は圧倒的にリーフの方が広く、ATTO3のトランクを見る限り、ドルフィンは軽自動車並みのトランクになるのではないかと予想されます。
日産リーフのバッテリ容量60kWhモデルは航続距離がWLTCモードで450kmとなっていますが、ATTO3は58.5kWhで485kmとなっていますが、おそらく実際の航続距離はどちらもほぼ同じくらいになるでしょう。加速感で言えば日産リーフの方が圧倒的に感じますが、一方であえて発進を滑らかにしているATTO3の方が電費性能はよくなるかもしれません。これは是非現在BYDが行っている1ヶ月試乗キャンペーンに当選して比較してみたいものです。
インテリアの先進性、車内の居住性については、圧倒的にATTO3の勝利です。シートの座り心地、広い空間と開放感あるスカイルーフは圧倒的に移動が苦にならない、EVをリリースしているメーカーが口をそろえていう「移動を楽しむ」空間がつくられています。OTAアップデートにより車内エンターテイメントは今後楽しみな所です。
そして、ATTO3は完全に電気自動車用に設計されたプラットフォームになっています。車両の底に敷き詰められた安全性の高いブレードバッテリーで、リアシート足元にはドライブシャフトを通すようなトンネルが無く、フラットな設計になっています。リーフは旧来の自動車のプラットフォームを引き継いでいるため、どうしてもリアシート足元中央が浮いてしまっています。
そして最も気になるコスト感が圧倒的
そして、最も気になるコストパフォーマンスですが、これは圧倒的にATTO3の勝利と言えます。ATTO3は定価ベースで440万円~となっていますが、実は他につけるオプションが殆ど無いと言っていいくらいつけるものがありません。ボディカラーによって多少価格が変わるだけです。あとはETCとドライブレコーダーを着ける感じです。一方日産リーフ60kWhは525万円~となっていて、ここにいろいろとオプションをつけてくる事になります。およそ100万円くらいの違いがあり、先進的なインテリアと快適な空間演出がされているATTO3は非常に魅力的です。
ATTO3がこの価格となると、日産リーフ40kWhはDOLPHINとの勝負になるわけですが、ATTO3の価格を見てしまうと、DOLPHINの予想価格はかなり低いものになってきそうです。
ATTO3は輸入車なのに、HYUNDAIのIONIQ5同様日本人の気質をよく研究してあり、日本車とそん色なく乗りこなせるように、ウインカーも日本仕様にきちんと合わせてきています。これにカラオケがついたら、日本人のおじ様・おば様たちのハートをわしづかみにしてしまうに違いありません。