新ミッション:持続可能な豊かさ(Sustainable Abundance)の実現
テスラの創設時の目標は、持続可能なエネルギーの到来を加速することでした。しかし、AIとロボティクスを事業に組み込むことで、そのミッションは拡張され、「持続可能な豊かさ(Sustainable Abundance)の実現」へとアップデートされました。
このミッションの究極的な意味合いは、人々が商品、サービス、医療の面で望むものをすべて手に入れられると同時に、自然を破壊せず、美しい国立公園などの自然の美しさを保つことです。これは、人類が望む最高の未来を実現するための青写真であるとされています。
自動運転技術(FSD)の革新と安全性
テスラは、生産、顧客体験、所有モデル全体で自動車業界を再定義し続けています。特に自動運転(FSD: Full Self-Driving)技術は、その中核を担っています。
驚異的な安全性の向上
テスラ車は世界中で試験される際に一貫して最高の安全基準を達成しており、オートパイロット技術によってその安全性はさらに向上しています。
• 2024年、テスラの車両群は680万マイル以上の走行につき1件の衝突事故を経験しました。
• これは、米国の平均的なドライバーと比較して10倍も安全であることを示しています。
• 2018年のオートパイロット技術の安全性と比較しても、ほぼ2倍の性能向上を果たしています。
• 今後、自動運転技術により、この性能は桁違いに向上するとテスラは予測しています。
• FSDによる走行マイル数は、FSDなしの走行よりもはるかに安全であり、究極的には数百万人の命を救い、数億件の事故を防ぐことにつながると期待されています。
FSDの普及に向けた取り組み
過去数年間製造されたテスラ車はすべて、完全自動運転の能力を備えていますが、ほとんどの人がその事実に気づいていません。
• テスラは、潜在的な顧客に対してFSDの認知度を高めるための教育に注力しており、販売チームやサービスチームが顧客と座り、FSDの使用方法を試すよう促しています。
• バージョン14.3がリリースされる頃には、運転中にほぼ眠りにつき、目的地で目覚めることができるレベルに到達する自信があると述べています。また、バージョン14では、安全性を確認した上で、テキストメッセージの送信を許可する可能性についても言及されています。
規制への対応
FSDの普及には規制上の課題が残っています。
• 現在、ヨーロッパでは、通常の監視付きFSDすら許可されていません。テスラはヨーロッパの顧客に対し、FSD承認を推進するよう規制当局に働きかける支援を求めています。
• 中国では部分的な承認を得ており、来年(2026年)の2月か3月頃に完全な承認が得られることを期待しています。
次世代モビリティ:Cybercab(ロボタクシー)の衝撃
Cybercab(サイバーキャブ)は、監視なしの完全自動運転のために特別に設計された車両であり、ペダルやステアリングホイールすらありません。
• 生産開始時期: 2026年4月に生産が開始される予定です。
• 製造システム: Cybercabの製造システムは、従来の自動車製造ラインよりも、大量生産の家電製品に近いです。
• 生産速度: 最終的には、サイクルタイム(1ユニットあたりの生産時間)を10秒未満、理論上は5秒にまで短縮する可能性があり、その場合、1つの生産ラインで年間500万ユニットの生産も可能になります。
• コスト効率: この車両は、自律走行モードでのマイルあたりのコストを最小化するように最適化されています。現在のドルの価値で、マイルあたり20セント未満に抑える道筋が見えているとされています。
• 社会への影響: 自動運転車によって、アクティブな車両の総数は減少するものの、移動がより苦痛でなくなるため、走行マイルの総数は増加すると予想されています。
史上最大のプロダクト:人型ロボットOptimus
Optimusはテスラが今後展開する「新しい本」の土台となる、極めて重要な製品です。
圧倒的な規模と影響力
Optimusは史上最大の製品になる可能性があり、携帯電話よりも遥かに大きいものになるだろうと予測されています。
• 市場規模: 産業用ロボットと個人用ロボットを合わせると、数百億台のOptimusロボットが存在する可能性があります。
• 人類への貢献: Optimusは、貧困を根絶し、すべての人に素晴らしい医療を提供するための唯一の方法です。Optimusは究極的には、最高の人間外科医よりも優れた精度を持つことになります。
• 経済的影響: AIとロボティクスにより、世界の経済規模は10倍、あるいは100倍に増加する可能性があり、Optimusは「無限の資金のバグ(infinite money glitch)」のようなものだと形容されています。
テスラの強みと開発ロードマップ
テスラは、すでに世界最大のロボットメーカーです(テスラ車は4輪ロボットであるため)。Optimusの成功に必要な要素である「手のエンジニアリング」「実世界AI」「大量生産」のすべてを持つ唯一の企業であると自負しています。
• 目標コスト: 年間100万ユニットを超える持続的な生産に達した場合、生産コストは現在のドル換算で約20,000ドルになる見込みです。
• 生産計画:
◦ 来年(2026年)にOptimus バージョン3の生産を開始予定。
◦ バージョン3は非常に優れたデザインであり、「ロボットの衣装を着た人間のように見える」とされています。
◦ 2027年にバージョン4、2028年にバージョン5と、大幅な改善を伴う年次リリースサイクルを計画しています。
◦ 生産の立ち上げは、これまで製造された大規模で複雑な製品の中で、史上最速の生産ランプを計画しており、フリーモントで100万台の生産ラインから開始します。
AI時代の基盤:AIチップとエネルギーインフラ
テスラは、自律性と生産規模の拡大を支えるため、AIチップとエネルギーインフラの両方に深く投資しています。
AIチップ「AI5」の開発
機能的なロボットを持つためには、優れたAIチップが必要であり、それは安価で電力効率が良くなければなりません。テスラは、自社のAIソフトウェアスタックに最適化されたAIチップ「AI5」を開発しています。
• 性能と効率: AI5チップは、Nvidia Blackwellのような優れたチップと比較して、ほぼ同等のパフォーマンスでありながら、消費電力が約3分の1、コストは10%未満になる見込みです。
• 設計の特徴: テスラのAIシステムは、浮動小数点演算ではなく、根本的に効率的な整数ベースのシステムを採用しています。これにより、電力効率とシリコン効率が劇的に向上します。
• 製造と将来: AI5チップは、TSMC(台湾、アリゾナ、テキサス)とSamsung(韓国)の4か所で製造される予定です。テスラはすでにAI6の改善点を見込んでおり、AI5の生産開始から1年以内にAI6へ移行し、パフォーマンスを倍増させることを目指しています。
チップ生産への野心:テラファブの構想
サプライヤーからのチップ生産の最善のシナリオを見積もっても、必要な量には足りないとされています。
• このため、テスラは**「テスラ・テラファブ(Tesla Terraab)」**を建設する必要があると考えています。
• テラファブは、月あたり少なくとも10万枚のウェハーを生産する規模の、巨大なチップ工場となる可能性があります。
エネルギー事業の拡大
テスラのエネルギー事業も新たな高みに達しており、2024年には31ギガワット時(GWh)を展開し、これは2023年の2倍以上です。
• バッテリーの影響: バッテリーがなければエネルギーを効果的に緩衝する方法がないため、バッテリーの存在は、既存の発電所を増設しなくても米国のエネルギー出力を倍増させることを可能にします。
• Mega Packの進化: ユーティリティスケールのバッテリー(Mega Pack)は、より多くのコンポーネントを内部化し、展開が容易になるよう簡素化されています。将来的には、変電所なしで直接35キロボルト(kV)まで出力できるようにすることを目指しています。
主な成果と今後の生産目標
2024年の実績(一部)
• Model Yが2024年に再度、世界で最も売れた車両となりました。
• テスラ製品の使用を通じて、2024年に消費者は約3,200万メトリックトンの温室効果ガス排出を回避しました(前年比70%増)。
野心的な生産増加目標
テスラは、オートノミー(自律性)が解決されたと確信しているため、今こそ生産を劇的に増やす時だと考えています。
• 2026年末: 年率換算で約260万〜270万台の車両生産を目指し、約50%の増加を目標としています。
• 2027年末: 年率換算で400万台。
• 2028年末: 年率換算で500万台。
その他の製品計画
• Tesla Semi: 2026年にネバダ州北部の工場で量産を開始します。
• 新型Roadster: 2026年4月1日にお披露目イベントを予定しており、その後12〜18ヶ月で生産開始を目指しています。
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記事の要点まとめ
テスラが目指すのは、AIとロボティクスを核とした「持続可能な豊かさ」の世界です。
| 領域 | 取り組みの概要と詳細 |
| 新ミッション | 持続可能な豊かさの実現。自然を破壊せずに、すべての人に商品や医療を提供する。 |
| FSD(自動運転) | 米国平均ドライバーより10倍安全。v14.3で「寝て運転」が可能になるレベルを目指す。 |
| Cybercab | 2026年4月生産開始。ペダル/ハンドルなし。マイルあたり20セント未満のコストを目指す。 |
| Optimus | 史上最大のプロダクト。貧困・病気を根絶する役割。コスト2万ドル、2026年V3生産開始。 |
| AIチップ | 「AI5」を開発。電力効率はNvidia Blackwellの1/3、コストは10%未満。 |
| 生産体制 | サプライヤー不足を補うため、超巨大チップ工場「テラファブ」の建設を検討中。 |
| 目標生産台数 | 2028年末までに年率換算で500万台の生産を目指す。 |
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テスラの壮大な計画は、車の製造という範疇を遥かに超えて、AI、エネルギー、ロボティクスといった基盤技術によって、経済と社会の構造自体を塗り替える可能性を秘めています。これは、まるで古い船を新しいエンジンとナビゲーションシステムに載せ替えるように、世界が持続可能な未来へと移行するための決定的な変革期を示していると言えるでしょう。
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