AudiがEV普及を目指すモデル「Q4 etron」イベント開催
すでに、e-tronシリーズとして電気自動車(EV)の販売を開始しているAudi(アウディ)が、EVの普及を目指し、多くのニーズを満たすコンパクトSUVとして納車を開始した「Q4 e-tron」の試乗イベントを東京都・豊洲にある「Shintoyosu Brillia Running Studium(新豊洲ブリリアランニングスタジアム)」にて11月18日(金)〜20日(日)の3日間開催しました。
この施設は2016年に開館したもので、普段は主にパラアスリートの育成を中心に、スポーツやアート、各種イベント会場として利用されている施設です。館長は元オリンピック陸上競技選手の為末さんです。
豊洲でAudi Q4 e-tronを試乗!
イベントでは車両の展示やインストラクターによる説明が行われたほか、事前登録にて当日Q4 e-tronの試乗も可能でした。新豊洲ブリリアランニングスタジアムは60m走の競技なども行われるだけあって非常に広い!中央にはQ4 e-tronが飾られています。
早速Q4 e-tronの試乗をさせていただくことに!首都高も走れるルートになっているため、色々試せそうです。試乗車はQ4 e-tronのSports back S-Lineモデルでした。もっとも乗りたかった車に当たりました。20インチのタイヤに、Audiらしいリアに落ちていくスポーティーなデザインがかっこいいです!
下の写真左はQ4 e-tronで、右の写真がQ4 e-tron Sports backです。リアのデザインが随分と違い、ハッチ部分が通常のQ4の方がよりSUVっぽくなっています。スポーツバックは流れるように下に落ちていくデザインですが、荷室の容量はカタログ値で通常のQ4が520L、スポーツバックは535Lとやや広いとのこと。これは不思議。理由は荷室の測定方法によるものだそうです。トノカバーより上の部分の測定値はその測り方により曖昧になってしまっているので、あくまで参考値として考えた方がいいでしょう。実際Q4の方がハッチの開き方からも最大限まで荷物を積めるように感じました。
Audiらしいデザインと先進技術への工夫
乗車してみると、キーを持ってブレーキペダルを踏んだところでシステムが自動で起動します。いちいちSTARTボタンを押さなくても出発可能な状態となります。こういうところはEVらしく設計されていてとてもいい!シートは電動設定ですが、ステアリングの位置調整はレバーで手動調整します。Q4 e-tronは普及モデルだけあって、随所にこのようなコスト削減への工夫もされています。シート電動を残しておかないとドライバーによる座席位置のメモリ機能(2人分)が使えないので、最低限そこは残したようです。
車内のアンビエントライトの配色を変更できたり、ヘッドライトのデザインを変えたりできるところなどデザイン性へのこだわりへの妥協はしていないようです。
リアシートもかなり広く、足元・頭上ともに非常に余裕があります。リアシート用のエアコン吹き出し口、充電用のUSBポート、シートヒータースイッチなどはセンターコンソールの後にまとめられています。メーカーオプションでのガラスルーフもありますが、今回はその仕様ではありませんでした。
ステアリングはボトムのデザインがAudiによくあるフラットなデザインになっていますが、Q4の場合上側もフラットにしています。これはQ4に搭載されているフロントウインドウガラス部分に表示されるARヘッドアップディスプレイが見やすくなるような配慮のようです。
各種表示パネルは情報量が多すぎて初見は見にくさを感じましたが、どこに何があるか把握してしまえば一度に色々観れるので便利になってきます。試乗車のバッテリ残量は84%で残り航続距離が403kmとなっています。カタログ値では、WLTCモードで576kmとなっています実際には450km程度というところでしょう。82kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載していますが、実際には76.6kWh分で航続距離を表示しています。この差分6kWhはバッファとして実際の走行距離とは別の用途分として計算されているようです。
快適な走りとAudiの回生ブレーキ性能
さて、早速公道に繰り出して、走りの性能を見てみます。走り出してまず気になったのが疑似エンジン音です。EVはモーターで走りますので、非常に静かです。そのため歩行者が車の接近に気付かない事があるため、わざと車外スピーカーからエンジン音のようなものを出しています。普段この音がないEV乗りにとって、これは相当違和感がありました。しかもこの音をオフにはできないとのこと。
また、個人的にはテスラやリーフのようにワンペダルドライブが好みなのですが、Q4は完全停止はせずにドライバーがブレーキを踏みます。普通のオートマチック車と全く同じような運転になります。完全停車した後は自動でホールドをかける事ができるため、一旦停止後はブレーキから足を離す事ができます。このあたりは普及を目的としたEVとして、ドライバーの混乱を避けるためその操作方法が極端に変わるのを避けたようです。
首都高に乗りペダルを踏み込んでみると、上り坂も重さを感じるような事はなくとにかく乗り心地を優先した発進を意識しているように感じます。これはドライブアシストを効かせても同じような感じを受けます。ドライブアシストでは、自動追尾とハンドル支援を行いますが、こちらでは停車も自動で行うためブレーキを使う事がありません。この機能があるのならやはりワンペダルドライブにした方がユーザーはドライブ支援を迷わずつかえるのですが・・・。3秒以上停車した場合、リスタート時には自動追尾しなくなるため、アクセルを軽く踏んで、運転支援に戻れます。
ブレーキペダルを使ってもディスクブレーキは使っていない!
ただ、Q4 e-tronのブレーキはドライバーがブレーキペダルを踏むも、ディスクブレーキを使ってブレーキをかけているわけでなく、ブレーキペダルの踏み方に合わせてモーターの回転数を落としてブレーキをかけています。ディスクブレーキを使うときは急ブレーキを効かせた時や、ドライバーの運転に合わせて必要であれば使うくらいで、普段はほとんどブレーキパッドを使わない状態になっています。これは機能的にはテスラや日産リーフの回生ブレーキと同じ形になっています。ようはドライバーの行動がワンペダルか、踏み変えがあるかどうかで、中でやっている事は同じようなことになります。その証拠にテストドライブ終了直後に、ホイール内のブレーキディスクを触っても、まったく熱くなっていません。そもそも写真のように新品のように綺麗です。
ブレーキペダルでの操作を残しているというのは、テスラなど自動運転を急ぐ自動車メーカーと違い、ドライバー体験への考え方の違いも大きくあるんだろうと思います。走りの楽しみの中には自分なりの「減速」というのもあるのかもしれません。しかしこれをEVの回生性能に置き換えているというのはAudiの相当な工夫だと言えます。
20インチのタイヤで走行してもロードノイズや振動は十分抑えられていて、乗り心地は非常に良いです。19インチタイヤを履いたモデルはより乗り心地が良いそうですが、今回は体験できませんでした。
日も落ちてきたため、乗車時にはわかりにくかった足元を照らすライトが鮮明に見えてきました。よく乗車するときにドアを開くと足元を照らすものはありますが、Q4 e-tronの場合、ドアを閉めた状態でもサイドミラー下についたプロジェクタで「e-tron」の文字が入ったライトで照らしてくれます。これはスゴイかっこいい!!
展示会場で見れたAudiのQ4へのこだわり
試乗から戻ると辺りは暗くなり、より幻想的な展示会場となっていました。
手前に展示されていた「Q4 e-tron」の奥には「Q4 e-tron Sportsback」が展示されています。ここでは具体的な商談や更に聞いておきたいことなどを専門スタッフに相談できました。Audiの方は他メーカーの動向もよく知っていると感心します。テスラモデルYはどうで、アリアやリーフと比較するとこんな感じでといろいろ話しができました。
Q4 e-tronはお勧めEVとなるか!?
結論から言えば今日本国内で購入できるEVのSUVの中ではかなり良いです。とにかく今回のQ4 e-tronについては、様々なニーズを満たし、広くEV化を普及させたいというものであるというのが伝わってきます。まずAudiの高級感を持たせつつも、結構大胆にコスト削減をしているところ。走りの性能としては最初に乗るEVとしては物凄いおすすめの1台になるのは間違いありません。走り方はオートマ車と全く同様ですが、その裏では先に説明したような回生ブレーキのシステムになっていて、操縦の愉しさを担保しつつ、長距離などは運転支援でカバーできます。
そして、気になる価格ですが、標準仕様ではせっかく静かなEVの中で楽しむためのインフォテイメントシステムは不十分です。またファミリーで使うなら、リアシートに乗車した人が長距離運転時の解放感を味わうためにはパノラマサンルーフは付けたいところ。すると乗り出しが700万円程度となります。Q4 e-tron Sports backでは750万円前後という感じです。価格帯としては、同セグメントのRWDモデルのSUVと比較しても大差のない価格帯になっているため、Audiにしてはかなり価格を抑えている感じが見て取れます。今後ディーラーに設置する150kW級の充電インフラ整備などにより、ディーラーサポートや長距離外出時の充電拠点として利用できるなら、他メーカーよりも良い条件になっています。
日本市場をどう考えているか?
日本市場では、AWDモデル(クワトロ)を発売しないとしていますが、今後は投入してくるのではないかともいわれています。日本国内のメーカーが日産以外EVシフトが遅れている中、海外勢についてはこの状況を見て、日本市場での販売は発表したとしても、その台数は販売数の多いヨーロッパや北米市場へと回り、日本への割り当ては少なくなっているようです。これはAudiだけでなく他のどのメーカーも同じで、日本市場は自動車が売れない市場という見方になっています。
激動のEV市場ですが、2023年も日本国内への自動車部品供給が不透明なところから、予想もつかない次の一年を注視する必要がありそうです。